2018年発表の「オーヴァーシーズ・エクストラフラット・パーペチュアルカレンダー」が時計関係者に驚かれた理由は、長らくドレスウォッチ用と見なされてきたCal.1120 QPを、同社が言う「スポーティーウォッチ」に搭載したためだった。ケースの直径は41.5mm、厚さはわずか8.10mm。ケースはドレスウォッチと見まがうほどスリークだが、5気圧の防水性能を持っている。ケース素材が18K金で、また側面に永久カレンダー調整用のプッシュボタンを設けてあることを考えれば、十分すぎるほどの数値だ。レギュラーモデルの15気圧には及ばないが、5気圧あれば、日常生活で困ることはないだろう。
加えてこのモデルは、ヴァシュロン・コンスタンタン製永久カレンダーの伝統をよく受け継いでいる。1980年代に発表された同社の永久カレンダーは、機構だけでなく、凝ったムーンディスクで評価された。本作も例外ではなく、ラッカー塗装された夜空には、金のドットで星座が描かれる。多くのムーンディスクがアベンチュリンを採用することを考えると、ヴァシュロン・コンスタンタンらしい凝りようではないか。もちろん月は高級時計に相応しく、金製だ。針も同じく金製で、月・曜日・日付を示す3本の針は、抜けにくいよう、袴にスチールのスリーブを埋め込んでいる。些細なディテールだが、これまた高級な永久カレンダーに相応しい。
既存のオーヴァーシーズに同じく、本作には優れたインターチェンジャブルストラップが備わっている。バックルの取り付けにはややコツを要するが、剛性があり、薄手のバックルはスポーティーにも使えるし、デスクワークの邪魔にもならない。
傑作中の傑作であるCal.1120 QPを搭載し、しかも、普段使いできるパッケージングを盛り込んだオーヴァーシーズ・エクストラフラット・パーペチュアルカレンダー。ムーブメント好きはもちろんのこと、普段使える複雑時計を探している人には、おあつらえ向けの1本だろう。