1968 Professional Diver’s
セイコーのダイバーズウォッチは年を追うごとに飛躍的に進化した。その先駆けとなったのが、1967年のRef.6215-010と翌年の後継機Ref.6159-010だ。300mの防水性能に加えて、より改善された視認性は「プロフェッショナル」の名に相応しい。2020年の再復刻に際して、そのディテールはさらに熟成した。
質感を大きく高めた2020年モデル。300mの防水性能はオリジナルに同じだが、飽和潜水仕様となった。自動巻き(Cal.8L55)。37石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約55時間。エバーブリリアントスチール(直径44.8mm、厚さ15.7mm)。300m飽和潜水用防水。世界限定1100本。セイコーウオッチサロン、セイコーグローバルブランドコアショップ限定モデル。70万円。7月10日発売予定。
セイコー初のプロフェッショナルダイバーズウォッチが通称「300mダイバー」である。ケースはワンピースに、風防の固定方式はバヨネット式に、そして頑強なねじ込み式のリュウズを持つことで、防水性能は300mに高まった。発表は1967年のこと。翌年に高振動の自動巻きを載せて完成を見た。
2020年モデルのベースとなったのは18年の復刻版である。素材と文字盤の色を変更したのは1965年モデルの復刻版に同じだが、そのディテールは非常に凝っている。例えば、夜光塗料を盛ったエンボスインデックス。1965年の150mダイバーは鏡面仕上げだったが、300mダイバーでは挽き目仕上げとなった。プレスで打ったインデックスに、ひとつひとつ挽き目を付ける作業は、オリジナルそのままに再現された。また、時分針もグランドセイコーよろしく、周囲をダイヤモンドカット処理することで立体感を増している。こういった手法は、そもそも視認性を高めるためのものだった。しかし、加工精度が上がったことで、最新版は、そういったディテールを高級時計らしさに置き換えられるようになった。
細部の詰め方は逆回転防止ベゼルの感触にも明らかだ。メンテナンスをしやすくするため、セイコーは逆回転防止ベゼルの構造に従来からの板ばねを採用した。しかし、部品の精度が上がったため、感触は実に密である。また、リュウズのガタのなさも、今の高級時計風である。
プロユースに耐え得る高性能と時計好きに訴求する質感を巧みに両立させた300mダイバー。復刻版というエクスキューズを抜きにしても、大変に魅力的なモデルだ。