セイコー国産ダイバーズ55年のヘリテージ 継承と進化のトリロジー(後編)

2020.04.08

1975 Professional Diver’s

セイコーダイバーズウォッチの完成形にして、近代的なダイバーズウォッチに決定的な影響を与えたのが、1975年発表の通称「600mダイバー」であった。チタン製のワンピースケースに、セラミックス処理したチタン製の外胴の組み合わせは、プロユースに耐え得るだけの頑強さをもたらした。その復刻版にして、最新のスペックを備えたのが、2020年の「1000mダイバー」だ。

1975メカニカルダイバーズ 復刻デザイン SBDX035

1975メカニカルダイバーズ 復刻デザイン SBDX035
ハイスペックダイバーの復刻版。プロユースを前提に、質感の向上だけでなく、耐磁性能も大幅に改善された。自動巻き(Cal.8L35)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。エバーブリリアントスチール×Ti(プロテクター部はセラミックス)(直径52.4mm、厚さ17.2mm)。1000m飽和潜水用防水。世界限定1100本。セイコーウオッチサロン、セイコーグローバルブランドコアショップ限定モデル。45万円。8月8日発売予定。

 今やセイコー製ダイバーズウォッチのアイコンとなった外胴。それを初めて採用したのが1975年の600mダイバーだった。以降、セイコーはこのモデルを進化させ続けたが今年、オリジナルの復刻版を追加した。それが「1975メカニカルダイバーズ復刻デザイン」モデルである。防水性能が1000mに向上したほか、4万A/mという高い耐磁性能を持つのが特徴だ。

 200mダイバーおよび300mダイバーとは異なり、本作はベゼルにエバーブリリアントスチールを採用する。ケース素材は従来に同じチタン製。プロフェッショナル向けのツールとして作られた1000mダイバーは、何にもまして信頼性が重要だ。そのためセイコーは、あえて基本構成を変えなかったのである。

600mダイバー

セイコーがリリースした純然たるプロフェッショナル向けのダイバーズウォッチが「600mダイバー」である。発売は1975年の6月。78年までの3年間に約7500本が生産された。その基本設計は、今なおセイコーのプロフェッショナルダイバーに踏襲されている。

 もっとも、ケースが軽いため、ムーブメントの外周には軟鉄製のインナーケースが加えられたほか、それ自体をラバーのOリングで支えて衝撃を吸収している。こういうプロ向けの配慮は、裏蓋の刻印にも見て取れる。200mダイバーはレーザー、300mダイバーと1000mダイバーはケースに負荷のかからないプレスで刻印が施されている。また、エバーブリリアントスチール製の回転ベゼルは、凝った一体成形だ。黒い部分は、切削した後IP処理を施し、印字を加工して抜いている。

 他の復刻版と異なり、オリジナルの目指したハイスペックにさらに磨きをかけた1975メカニカルダイバーズ復刻デザインモデル。細部の作りは言うまでもなく高級時計のそれだ。しかし、スペックを一切妥協しないのもまた、セイコーダイバーズウォッチの伝統なのである。

1975メカニカルダイバーズ 復刻デザイン SBDX035

(左)耐磁性能を与えるため、文字盤には真鍮ではなく軟鉄が採用される。結果、文字盤に筋目加工を施せないため、磨き上げたラッカー仕上げが採用された。写真が示す通り、印字の質はかつての復刻版よりも優れている。(右)このモデルの大きな特徴は、4万A/mという高い耐磁性能にある。それを示す表記が文字盤に加えられた。その表記にあえて赤を選んだのは深海で色が消えるため。鮮やかな発色を得るため、赤ではなく朱色が選ばれた。

1975メカニカルダイバーズ 復刻デザイン SBDX035

(左)暗所においても極めて視認性に優れた文字盤。ダイバーからの「潜水中は時刻ではなく、経過時間を計る」というアドバイスに従い、分針の視認性を大きく高めていることが見て取れる。(右)セラミックス製の外胴と、軽いチタン製ケースの組み合わせ。1000mの深海でも変形しないよう、刻印は切削ではなくプレスで与えられている。


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