デイトジャストとパーペチュアルは大金星だろ
2020年、ロレックスの「オイスター パーペチュアル デイトジャスト」(と日付なしの「オイスター パーペチュアル」)は26mmと39mmをディスコンにし、代わりに28mmと41mmを加えた。現在のラインナップは、28mm、31mm、34mm、36mm、41mmの5種類だ。加えて文字盤の色が増え、最大9色から選べるようになった。どんな色があるのかは、皆さんネットですでにご存じの通り。
ちなみに、9色の文字盤のうち6色は、ロレックスおなじみのラッカー文字盤である。ラッカーを厚塗りして研ぎ上げるこの文字盤は、今や多くのメーカーが採用するものだ。ただ筆者の見た限りで言うと、際だって良いラッカー文字盤を作っているのは、パテック フィリップ傘下のフルッキガー、セイコーエプソンと、セイコーに文字盤を提供する昭光舎、F.P.ジュルヌの文字盤屋であるカドラニエ・ジュネーブとロレックスだろうか。最近はブルガリも加えていいかもしれない。
今回ロレックスが採用したのは、慣れ親しんだ黒でも白でもなく、ポケモンみたいにビビッドな色ばかりである。作るのは簡単そうに見えるが、実はそうでない。他のメーカーは真似するのが難しいのではないか。
ラッカー文字盤の製法はごくシンプルだ。ラッカーを厚く重ね、十分に乾燥させて研ぎ上げるのみ。ただし簡単でないのは、色合わせが極端に難しいためだ。同じ塗料で仕上げても、ラッカー文字盤の色味はわずかに変わる。そこで上手いと言われる文字盤屋は、ロットごとに微調整を加えて、色のばらつきを完全になくしている。ばらつきをなくすには、色を加えるほかなく、結果として、ビビッドな色を出すのは難しくなる。ロレックスが非常に鮮やかなラッカー文字盤を採用したというのは、均一に色を出せますという自信の表れだろう。他社も真似できるだろうが、ロレックスの規模で、均一に色をそろえられるとは思えない。
ロレックスといえばダイヤモンドでしょ
それとデイトジャストで感銘を受けたのは、ダイヤモンドのセッティングだ。正直筆者はダイヤモンドの品質は分からないが、ロレックスは石の止め方が上手い。きちんと爪を立てて外れにくくしているのは、時計メーカー風。しかし、ダイヤモンドを密に並べているため、見た目が華やかなのだ。それと強い光源下にさらして、ブラックアウトする石がないのは、歪みなく取り付けられているため。また、ダイヤモンドを留める内側もポリッシュしてあるため、石もいっそうキラキラ光る。昔は当たり前だったが、現在やっているメーカーは多くない。この規模でやれてるのは、さすがにロレックスと言うほかない。
ただし残念な点もある。オイスター パーペチュアルの34mmサイズは、搭載するムーブメントが31系から22系に変わった。32系を載せるのは難しくなさそうだが、36mmサイズとの差別化は図れない。もっとも、女性用の22系は、パワーリザーブが約55時間に伸びた上、ヒゲゼンマイにもシリコン製のシロキシヘアスプリングを採用する。耐磁性能を考えたら、22系のほうがいいだろう。ただ、完全なマニア的な目線で言うと32系であって欲しかった。なお、34mmサイズが日付表示を載せなかったのは、ムーブメントが小さいためだろう。
さて結論である。筆者はロレックスをそんなに見てきたわけではないが、どのモデルも、相変わらずこの価格帯の規範と呼べる出来を持っている。とりわけ、ベーシックなオイスター パーペチュアルは本当に素晴らしい。50万円でこの完成度は、ちょっとどころかかなり驚異的だ。みんな、サブマリーナーに騒いでいるが、個人的にはオイスター パーペチュアル推し。時計に限らず、ベーシックなモデルをきっちり作り込むのが一流メーカーの証です。
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