エクスプローラーの選び方
優れた実用性と洗練されたデザインで高い評価を得てきたエクスプローラーには、多くの歴代モデルが存在する。
自分にマッチするモデルの選択に迷ってしまう場合のために、選び方のポイントについて解説しよう。
搭載ムーブメントから選ぶ
2021年に登場した現行モデルのRef.124270には、自動巻きのCal.3230が採用されている。耐震装置にパラフレックス ショック・アブソーバを装備することで耐久性を高め、かつ、ブルー パラクロム・ヘアスプリングを採用することで耐磁性も強化されている。
ここで、これまでエクスプローラーに搭載されてきたムーブメントの変遷について見てみよう。
1950年代に製造された初期型に搭載のCal.A296はスポーツモデルの原型とされるセミバブルバック・ムーブメントである。ゆえに、当時は厚いケースにならざるを得なかった。セカンドモデルでは全回転両方向巻き上げ式のCal.1030へと進化し、左右のいずれからでもゼンマイの巻き上げを可能にしている。
1960~80年代にはキャリバー1500系が搭載され、主流となる。実用機にふさわしい自動巻きでありながら、構造の進化によって薄型化され、精度も向上した。
1989年以降、キャリバー3000系が採用され、耐久性や精度がより向上し、2001年以降には現在のモデルの基礎となるキャリバー3100系へと発展していく。
そして、2021年からエクスプローラーRef.124270に搭載されるのがCal.3230。2020年に発表された新世代ムーブメントで、パワーリザーブが約70時間となり、使い勝手が向上している。
ケースの大きさから選ぶ
探検家を支えるプロフェッショナルモデルというポジションにあるため、小型化・薄型化は本機において重要な要素である。いかなるアクションも妨げない、手元になじむサイズでなければならないからだ。
そのため、1960年代には、すでにケース径34mmというサイズで生産されていた。その後しばらくして、ムーブメントの高精度化にともなう大型化によって、ケース径36mmモデルが登場する。
このようにエクスプローラーは、その第1世代から手首にコンパクトに収まる直径36mmケースを採用し、踏襲してきた。2010年から2021年まで製造されていたRef.214270では初めてケース径が36mmから39mmへサイズアップされたが、2021年に発表されたRef.124270において再びケース径36mmへと戻った。いずれのサイズも基本的なデザインはほぼ同じだが、サイズが異なることによって細かい見え方に違いが生じる。
ケース径39mmモデルはひと回り大きいだけに、ゆとりを持って文字盤から時刻を確認できるだろう。一方、ケース径36mmモデルは、わずかに小さい径が引き締まった印象を与え、シャープさが感じられる。
夜光塗料から選ぶ
「トリチウム」は、自発光物質という性質を持っているが、使用年数の経過とともに退色し、ひいては光を失ってしまう。
自発的に光を放たなくなったトリチウムは、暗闇で効果を発揮することはなくなる。しかし、塗布後に退色した針やインデックスには、アンティークとしての風合いが生まれ、デザイン的な魅力が増すという利点がある。
その後、「ルミノバ」「クロマライト」が使用されるモデルが登場。これらは蓄光式の塗料であり、日光や照明からの光を吸収することで半永久的に発光する夜光塗料だ。
それぞれ発する光の色が異なり、ルミノバは緑色に光り、対するクロマライトは青色に発色する。
エクスプローラー Ref.14270の特徴
レア仕様で人気の通称「ブラックアウト」は、1990年から1991年にかけて生産されたとされるRef.14270を指し、各所に独自の意匠が施された名品だ。一時代を築いた名機の魅力を探ってみたい。
完成されたデザインとレアな個体
大型のメルセデスハンドと視認性の高い3・6・9のアラビア数字インデックスは、エクスプローラーの伝統をしっかりと受け継いでいる。その点では完成されたデザインを継承するモデルと言えるだろう。
ただし、ディテールにまで目を凝らすと、独自の意匠も垣間見える。現在は3・6・9のアラビア数字インデックスのメタルフレーム内はホワイトラッカーで塗装されているが、「ブラックアウト」モデルでは各数字がブラックラッカーで塗装されているのだ。
ブラックアウトと呼ばれる本機は、スタイリッシュないでたちが人気を呼んだ。生産本数が少なく希少性が高いこともあり、時計愛好家からの熱い視線が送られるタイムピースである。
Cal.3000を搭載
Ref.14270は、自社製自動巻きムーブメントCal.3000を搭載している。歩度調整機構にはマイクロステラスクリューを、テンプの耐震装置にはキフ・ウルトラフレックスがそれぞれ選択された。
ベースとなっているのは、1970年代後半に開発されたムーブメントCal.3035である。デイト付きの同ムーブメントをノンデイトタイプに変更し、実用性をより高めた仕様となっている。
1989年のバーゼル・フェアでのデビューから2001年までの約10年と比較的短命に終わったが、巻き上げヒゲゼンマイが中心であった時代にあって、平ヒゲゼンマイを使用していることで、レア物を求める層にファンが多いムーブメントでもある。
有名芸能人が身に着けた時計
1997年に放送された、国民的男性アイドルグループSMAPの中心メンバー、木村拓哉が主演したドラマ「ラブ ジェネレーション」において、主人公が身に着けていたことで国内でも一気に人気が爆発した。
それまでの人気機種と言えば、金無垢デイデイトやコンビネーションのデイトジャストなどが定番であった。しかし、このドラマを契機に流れが大きく変わり、地味だという評価もあったエクスプローラーが俄然脚光を浴びるようになったのである。
他にも、SMAPでリーダーを務めていた中居正広やKing & Princeの平野紫耀、所ジョージが愛用していたことも注目された。
エクスプローラー Ref.114270の特徴
新世紀を迎えた2001年からの約10年間にわたって、エクスプローラーの歴史を支えた本モデルについて詳述しよう。
36mmケース径の最終型
完成されたデザインゆえ、初期型以降、各モデルチャンジでもほぼ大きな変更点は見られないエクスプローラーであるが、本機は36mmケース径の最終型(当時)となった点で特徴的な存在に位置付けられているモデルだ。
文字やインデックスがわずかに細くスリムになったことで、さらに洗練された印象を生んでいる。風防6時のポジションにレーザーで刻まれるのは、トレードマークの王冠だ。
文字盤の各パーツに塗布する夜光塗料も、先代Ref.14270の後期モデル同様、非トリチウム化へとチェンジされた。先代モデルの爆発的な人気を確実に引き継ぎ、今なお多くの愛好家に親しまれているモデルである。
Cal.3130を搭載
搭載されたムーブメントは、2001年に、Cal.3000の後継として発表されたCal.3130だ。
その他の主な変更点としては、テンプを支えるブリッジが片持ちから両持ちへと強化されたことや、歩度調整機構がマイクロステラスクリューからマイクロステラナットにチェンジされたことが挙げられる。
ヒゲゼンマイには、巻き上げヒゲゼンマイを採用している。先代の平ヒゲゼンマイに比べて、姿勢の違いが生じさせる精度への影響を抑える効果を向上させた。
ダブルロックとルミノバ夜光の組み合わせ
進化する外装にも着目してほしい。スポーツモデルでは外れにくいブレスレットの機構が求められるが、本機では顕著な変更が行われている。
それは、衝撃を受けても外れにくいようにフォールディングクラスプ(折りたたみ式留め具)を改良し、シングルロックからダブルロックとしたのである。
文字盤のインデックスなどに塗布する夜光塗料に、ルミノバを選んでいる点も、実用性の追求が感じられる。光を吸収することで半永久的に光を放つため、いつまでも安心して使用できるのだ。
エクスプローラー Ref.214270の特徴
実用性と耐久性、強靭性に磨きをかけて開発された、エクスプローラーのケース径39mmモデルだ。その神髄に触れてみよう。
力強さを感じる39mm径モデル
2001年以降、先代型が現代の時計デザインに与えた影響は、極めて大きい。薄型化・小型化に向かう命題を抱えながら、洗練されたデザイン性と直径36mmというケースサイズが相まって、スポーツモデルのひとつの完成形を作り上げたと言っても過言ではない。
また、インデックスにはロレックス独自のクロマライト夜光塗料が施される。これはブルーに発光し、視認性がしっかりと確保される。
エクスプローラーのファンであれば一目瞭然だが、3mmの大型化は力強さを感じさせ、さらに視認性を高めることに貢献している。サイズアップへのチャレンジが、新たなファンの獲得につながっているのだ。
Cal.3132を搭載
Ref.214270では、ムーブメントもCal.3132へと刷新された。Cal.3132では、テンプ保護用耐震装置に、より性能の高いパラフレックス ショック・アブソーバを搭載している。ヒゲゼンマイもブルー パラクロム・ヘアスプリングを採用することで、耐磁性が大きく向上した。
どちらの技術もロレックスが独自に開発したもので、2点の改善で衝撃および磁気からの保護能力を強化し、過酷な状況でもよりいっそう精度を確実に維持することが可能になった。
オイスター ブレスレットの採用
ブレスレットのクラスプにも、大胆な変更が施されている。先代もシングルロックからダブルロックへと変更されたが、本機ではさらなる進化を遂げ、オイスター ブレスレットを採用したのだ。
ロレックスの現行モデルでは定番となっているオイスター ブレスレットは、外れにくい堅牢さが魅力だ。平らな3連リンクによって構成され、強度としなやかな装着感を両立させている。
この変更によってクラスプのビジュアルは立体感を増し、スムーズな着脱と頑丈さ、華やかな見た目など数多くの利点を生んだのである。
新型エクスプローラー Ref.124270の特徴
2021年4月7日に発表された新型エクスプローラーがRef.124270だ。最新モデルの特徴を見てみよう。
帰ってきたケース径36mmモデル
2010年から2021年まで約10年間続いたケース径39mmのRef.214270から、現行モデルのRef.124270ではケース径36mmへとサイズダウンされた。リファレンスナンバーは1世代前のRef.214270ではなく、同じくケース径36mmだった2世代前のRef.114270を受け継ぐかたちとなっている。
Ref.114270を踏襲したフェイスデザインとなっているが、針やインデックスのバランスが調整されて若干スリムになっており、またラグ幅が20mmから19mmへと変更されていることで、よりシャープな印象を与える。
また、Ref.214270では文字盤下6時側に移動していた「EXPLORER」のロゴも、12時側のROLEXロゴの下に戻され、伝統的な意匠への回帰が見られる。
Cal.3230を搭載
2020年にモデルチェンジされたサブマリーナー(ノンデイト仕様モデル)やオイスター パーペチュアルに搭載されるCal.3230。このムーブメントをRef.124270も搭載する。安定した精度と耐衝撃性はそのままに、パワーリザーブが約70時間に延長されたことで、使い勝手が向上している。
エクスプローラー初のコンビモデルが登場
そして新型エクスプローラーの最大の特徴が、同シリーズ初となるステンレススティール×イエローゴールドのコンビモデルであるロレゾール仕様のRef.124273が登場したことだ。これらの2モデル体制となり、ロレックスファンとしてもどちらを選ぶべきか、大いに悩むところだろう。
ヴィンテージ エクスプローラーの価値
伝統を感じさせるヴィンテージモデルに魅せられる時計ファンは多い。歴史を刻み続けてきたエクスプローラーの価値を、ここで再確認してみたい。
注目したいヴィンテージモデル
初代モデルのRef.6350がデビューしたのは、1953年のことだ。エクスプローラーと同時に、名機として名を馳せるサブマリーナーも誕生したとあって、同年はロレックスにとってメモリアルな年となった。
年月を経るにつれてさまざまな改良がなされていくサブマリーナーに対し、エクスプローラーは一貫してシンプルさと強靭さを追求してきた。Ref.6350は、その礎となった貴重なモデルである。
セカンドモデルのRef.6610も、1950年代半ばの同社によく見られたミラーダイアルを特徴とする。12時位置のトライアングルインデックスやベンツ針など、エクスプローラーらしさの源と言えるモデルだ。
Ref.1016は、3代目に位置付けられるモデルである。息の長いモデルで、1960年から1989年まで販売されていた人気機種だ。搭載されていたCal.1560/1570は、ケースからムーブメントを取り出すことなくテンプの歩度調整ができる点に革新性が見られる。
ミラーダイアルを持つ個体は価値が高い
エクスプローラーは、初期から1960年代まで、いわゆるミラーダイアルを採用していた。ヴィンテージとしての質を問うならば、ミラーダイアルを有する固体が高い価値を備えていると言えるだろう。
初期のモデルであれば、ロゴが金でペイントされた「ゴールドレター」や、円周がダイアルに刻まれた「ミニッツサークル」も人気だ。
ヴィンテージならではの良さとは?
ヴィンテージモデルには、長く愛用されてきた故の熟成された良質さが漂う。経年変化によるものであるが、良好なコンディションで時を重ねた時計には、唯一無二のたたずまいが備わるものだ。
世界中から信頼を集める実用時計の王者と言えるロレックスによって、これまでエクスプローラーにおいても数多くの機種が製造されてきた点も強みである。個体の絶対数が多いため、良好な状態のヴィンテージモデルが多数存在するからだ。
刻まれたシリアルナンバーなどから、その個体が誕生した時代に思いを馳せ、歴史を感じられる点も見逃せない。いくつもの時代を経験してきた重みが、ひとつのタイムピースに詰まっているように感じる。
エクスプローラーは一生モノとして使える腕時計
名機は、生涯をともに歩める大切な存在になり得る。探検家を支えるという理念が生み出したエクスプローラーであればなおのこと、過酷な人生であっても一生モノとして身に着けられる腕時計と言えるだろう。
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