Cal.400:センターセコンドを持つ最もオーソドックスなムーブメント
ここからはCal.400および、その派生キャリバーを搭載する2021年新作モデルを紹介していく。まずは最もオーソドックスなCal.400採用モデルの最新作からだ。
オリス「アクイス デイト キャリバー400」
Cal.400搭載モデルの最新作。既存モデルと同じブルーダイアルのほか、トレンドのグリーンダイアルやアンスラサイトダイアルもラインナップされる。価格、スペックは3本とも同じ。自動巻き(Cal.400)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約120時間。SS(直径41.5mm)。300m防水。各37万4000円(税込み)。
Cal.400ローンチ時に発表された「アクイス デイト キャリバー400」には、直径が2mm小径化された41.5mm径モデルが追加された。
同モデルで特筆すべきはダイアルカラーだ。アクイス デイト キャリバー400はこれまでブルーダイアルのみだったが、41.5mmモデルではトレンドのグリーンダイアルとアンスラサイトダイアルもラインナップされた。3色とも放射線状に光が広がるサンレイ仕上げが、質実なダイバーズウォッチに色気を演出する。
もちろん、より小径になったケースによって装着感は向上している。その上、300mの防水性能といった基本スペックや価格は据え置きである。
オリス「アクイス プロ デイト キャリバー400」
また、1000m防水と飽和潜水に対応するヘリウムエスケープバルブを備えたプロフェッショナル向けダイバーズ「アクイス プロ デイト キャリバー400」もCal.400を載せた2021年新作だ。
アクイス プロ デイト キャリバー400は逆回転防止ベゼルにオリスが特許を持つ「ローテーションセーフティシステム(RSS)」が用いられている。これはベゼルリングを上に引き上げてからでないとベゼルが回転しないというものだ。
プロスペックのダイバーズウォッチ。ダイアルに施された波形模様が強い光源下でも光の反射を抑え、高い視認性を保ってくれる。チタンケースは大ぶりだが軽量のため、見た目以上に腕なじみは良い。自動巻き(Cal.400)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約120時間。Ti+DLC(直径49.5mm)。1000m防水。53万9000円(税込み)。
潜水中にベゼルが回ってしまったとしても予定時間以上の潜水を防ぐことができる逆回転防止機構に対して、RSSは不用意な回転自体を防ぐ。これらふたつを組み合わせることで、潜水中のリスクをより軽減することが可能となった。
なお、Cal.400は日差−3〜+5秒/日という高精度機でもある。主ゼンマイの残量切れや大幅な時刻の遅れが死に直結するダイバーズウォッチにとって、約120時間というロングパワーリザーブと高い精度を誇るCal.400は最適な選択だ。
アクイス プロ デイト キャリバー400は直径49.5mmという大型サイズながら、軽量なチタンケースのため腕なじみが驚くほど良い。ケース自体もDLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティングによって黒く塗装されているため、実際のサイズほど大きく見えない。さすがにシャツの袖口には引っかかるが、夏のTシャツコーデなどであれば違和感なく着けることができるだろう。
Cal.401:ノンデイト+スモールセコンドのクラシカルな構成
Cal.400の派生ムーブメントとして今年1月に登場したのが、スモールセコンドのCal.401だ。6時位置の日付表示も取り外されており、現時点で400系ムーブメントの中では最もマニア受けする構成と言えるだろう。
オリス「カール・ブラシア キャリバー401 リミテッドエディション」
このムーブメントを搭載するのが、アフリカ系アメリカ人として初めてアメリカ合衆国海軍潜水士のマスターダイバーの称号を得たカール・ブラシアに捧げる「カール・ブラシア キャリバー401 リミテッドエディション」だ。
400系ムーブメント搭載機の中で最もクラシカルな構成を持つモデル。ケースに使用されるブロンズは流行のアルミニウムを混ぜることで経年変化を抑えるタイプではなく、オーソドックスな銅とスズの合金。そのため、エイジングが楽しめる。自動巻き(Cal.401)。24石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約120時間。ブロンズ(直径40mm)。100m防水。世界限定2000本。49万5000円(税込み)。
これまでにもオリスはカール・ブラシアへのトリビュートモデルを2型出しており、そのいずれもがノンデイトにブルーダイアルとブロンズケースを組み合わせたものだった。
本作でもその伝統は受け継がれており、ノンデイトダイアルと大きく湾曲したドーム型風防がクラシカルな様相を呈している。しかし、本作を最もクラシカルウォッチらしく見せているのは、スモールセコンドの位置だろう。
ベースとなるCal.400はムーブメント直径が30mmと、シンプルな3針ウォッチとしては大きめのサイズを持つ。そのためスモールセコンド化して直径40mmのケースに収めても、インダイアルが極端に内側へ寄らないのだ。適切な位置に配されたスモールセコンドは、直径30mm台前半が当たり前だった機械式時計黄金時代のデザインを想起させる。結果として、カール・ブラシア キャリバー401 リミテッドエディションはCal.400系搭載機の中で最もクラシカルなデザインを持つに至った。
Cal.403:アイコニックなポインターデイトを搭載
例年、オリスの創業月日に本社が所在するスイスのヘルシュタインの名を冠した“誕生日プレゼント”を発表するオリス。2021年はアイコニックなポインターデイトをCal.401に追加した、Cal.403搭載モデルが発売された。
オリス「ヘルシュタイン エディション2021」
グローブを着けたままでも操作しやすい大ぶりのリュウズと文字盤の外周いっぱいまで利用した指針式のカレンダー。オリスが1930年代に発表して以来、同社のアイコンとして親しまれてきたビッグクラウン ポインターデイトを400系キャリバーでリメイクしたのが「ヘルシュタイン エディション2021」だ。
オリスのアイコン、ビッグクラウン ポインターデイトをモダンにアレンジした限定モデル。同シリーズの38mm径ケースは21世紀に入ってから初とのこと。ケースバックにはブランドのキャラクター、オリスベアがエングレービングされる。自動巻き(Cal.403)。24石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約120時間。SS(直径38mm)。5気圧防水。世界限定250本。オリスブティックまたはオリス公式eショップ限定。47万3000円(税込み)。
コブラ針にフチの細いフォントのインデックス、そしてコインエッジというクラシカルなデザインを持つ現行機に対して、世界限定250本が販売される本作はペンシルハンドにインデックスフォントは太め、ベゼルもスムーズと真逆の印象を持つ。同じスモールセコンド機ながら、古典的なスタイリングを強調するカール・ブラシア キャリバー401 リミテッドエディションとは異なった印象だ。
ところで、ケース径はなんと38mm。再三述べてきたように、400系のムーブメント直径は30mmあるため、ケースとのクリアランスはわずか。堅実な印象の強いオリスがここまで攻めた設計をするとは驚きだが、それだけ今の同社にはケースの加工精度にも自信があるということだ。
堅実で高性能、かつ戦略的な価格のCal.400はオリスらしいムーブメント
2020年10月の発表から早くもふたつのバリエーションを追加し、コレクションを拡充していく自社製自動巻きムーブメントの400系。そのいずれも堅実性とハイスペックを両立した設計を持ちながら、搭載機は非常に競争力の高い価格を実現している。そのパッケージングはまさに、オリスというブランドを体現しているかのようだ。
400系は基礎体力が高く、また直径が大きいため、拡張性も期待できるムーブメントだ。今は欠番となっているCal.402をはじめ、今後より多くの派生キャリバーが出てくることが楽しみでならない。
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