グランドセイコーがジュネーブの時計フェア WATCHES & WONDERS GENEVA 2022に初出展!

時計フェアは、ジュネーブの一極体制へ

 またこのニュースは、1990年代初めから続いてきた時計業界におけるジュネーブとバーゼルという二極体制が事実上、ジュネーブの一極体制に集約されることを決定的にするだろう。1995年から一貫してこの二極体制のフェアを取材してきた筆者はそう考える。

信用失墜から捲土重来を期すバーゼルワールドのオフィシャルサイト。100年を超える歴史や、フィジカル&デジタルでのハイブリッド開催をアピールするが……。

 リシュモン(旧ヴァンドーム)グループが、1991年からスイス時計発祥の地・ジュネーブで開催してきたSIHH(Salon International de la Haute Horlogerie、通称ジュネーブ・サロン)。そして1917年にスイス第2の都市バーゼルで、スイス産業見本市の時計部門として始まり、1972年から世界最大の時計宝飾見本市となったバーゼル・フェア(後のバーゼルワールド)。時計業界は2019年まで、新作時計を発表するこのふたつのビッグイベントを中心に、つまり二極体制で動いてきた。

 だが2020年春、新型コロナウイルス危機により、どちらのフェアも実際に人が集うフィジカル、つまりリアルなカタチでの開催を中止。ここからふたつのフェアの運命は、明暗が大きく分かれることになる。

 SIHHから名称を一新した「WATCHES & WONDERS(ウォッチズ・アンド・ワンダーズ)2020」は、開催の2カ月前にフィジカルな開催を断念。開催予定日からデジタルなバーチャルイベントとして開催された。さらに今年2021年の春も開催を断念したものの、同様のバーチャルイベントとして、さらに進化した双方向性を高めたカタチで開催され、昨年を超える高い評価を受けている。

2021年4月にデジタル開催されたWATCHES & WONDERS GENEVA 2021のオフィシャルサイトのトップページ。

 これとは対照的に、2020年2月末にやはりフィジカルな開催を断念した「バーゼルワールド(旧称バーゼル・フェア)」は2020年3月、中止による出展費用の返還問題、事務局の独断先行による延期開催の発表問題、このふたつをめぐるトラブルから5つのビッグブランドとLVMHグループ傘下の人気ブランドが離脱して事実上崩壊した。そして本コラムでも過去に報じたように、迷走の果てに来年2022年にWWG2022と重なるという“挑戦的な日程”で、再びバーゼルでのフィジカルなフェアの開催を発表している。

 だが、これはあくまで筆者の推測だと断っての話だが、バーゼルワールド崩壊のきっかけを作ったパテック フィリップ、ショパール、シャネル、ロレックス、チューダーという5つのビッグブランド、そしてLVMHグループ傘下のウブロ、ゼニス、タグ・ホイヤー、さらにグランドセイコー、加えて中堅ブランドから成長著しいオリスのWWG2022への参加・出展で、時計フェアはおそらくかつての二極体制からジュネーブのWWGへの一極体制になる可能性が一気に高まったと思う。


鍵を握るスウォッチ グループの動向

 ただ、100年以上の歴史を持つバーゼルワールドが、何とか二極体制に踏み留まる可能性はゼロではない。それは、現時点ではどちらのフェアへの参加も表明していないビッグブランドもあるからだ。

 中でも注目を集めるが、ブレゲやブランパン、グラスヒュッテ・オリジナル、オメガ、ロンジン、ティソ、ハミルトンなど、19もの時計ブランドを傘下に擁する世界最大の時計企業体スウォッチ グループの動向だ。さらにクロノグラフの名門ブライトリング、そしてLVMHグループのブルガリの動向次第では、存続できる可能性はまだある。

 ただし、たとえこうしたブランドをバーゼルに呼び戻すことに成功したとしても、WWG2022と重なるフェアの開催日程は、共存のためにも変更せざるを得ないはずだ。

 ただ、スイス2大フェアのサバイバルバトルはともかく、今は何よりも日本発の高級時計ブランド「グランドセイコー」のプレミアムな時計フェアへの参加・出展を喜びたい。



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