ブライトリング「プレミエ」にまつわる名前の秘密を探り、その逸話とともに紹介

ウィリー・ブライトリング

ブライトリング創業家3代目のウィリー・ブライトリング。ブランド創業者、レオン・ブライトリングの孫にあたる。1934年に世界初のツープッシャー式腕時計クロノグラフの特許を申請。ふたつのプッシャーで操作する現在のクロノグラフの原型を作った。1938年にはユイット・アビエーション部門を設立。他社に先駆けて航空産業に注目し、ブライトリングと航空界、そしてパイロットとの強固な絆の礎を築いた。そうしたプロフェッショナルのための腕時計とは趣を異にするエレガントな「プレミエ」を第2次世界大戦中の1943年に生み出していたことも特筆すべき業績だ。

 当時、ブランドを引き継いでいた創業家3代目のウィリー・ブライトリングは、軍用計器や軍用時計の優れた作り手である一方、たとえ厳しい戦争の最中でも、必ず人々は優雅で魅力的な時計を求めているはずである、と確信。機能に特化した軍用計器や軍用時計とは異なる、エレガントなスタイルを追求し、そうして生み出したのが「プレミエ」であったのだ。

 つまり「プレミエ」は、ブライトリングが機能最優先の「腕に着ける計器」だけではなく、エレガントなスタイルの時計も得意としていたという、その証しのもの。しかも、第2次世界大戦の最中にそれを生み出したという、そのエピソードもことさら特別なことだ。

 そして、それだから「プレミエ」の復刻には大きな意味がある。

 それは、ブライトリングがエレガントなスタイルを手掛けさせても超一流のブランドであったという、すなわちブライトリングの別の魅力を示すこと。まさにブライトリングの歴史の再編纂になるのである。

 さて、「プレミエ」=「Premier」とはフランス語で「最初」の意味。

 ウィリー・ブライトリングがそう名付けたのは、これが戦時中につくられた最初のエレガントな時計、ということだろうか。あるいは、悲惨な戦争が1日も早く終結し、これが新しく訪れる平和な時代の最初の時計になってほしい、という願いだろうか。

 ともあれ、ジョージ・カーンが探し出し見つけたブライトリングの別の魅力の最初のものであったことは間違いない。そして、ブランドの歴史の再編纂で加えられた最初のものであったこともだ。だから「プレミエ ヘリテージ」コレクションは、きっと今後もさらに発展するのだろう。

 ちなみに今回のコレクションでラインナップに加えられた、ラトラパンテ=スプリットセコンドクロノグラフの「デュオグラフ」と、月・日・曜日のフルカレンダー表示とムーンフェイズを搭載した「ダトラ」は、もともとは「プレミエ」とは別のモデル。やはり1940年代にウィリー・ブライトリングにより生み出されたエレガントなスタイルのクロノグラフだ。

プレミエ B15 デュオグラフ 42

プレミエ B15 デュオグラフ 42
自社開発クロノグラフムーブメントCal.01をベースに、60秒までふたつの時間を計測できるスプリットセコンドクロノグラフ機構を文字盤側に追加したCal.B03。この3カウンター自動巻きのCal.B03を手巻きのツーカウンター化したCal.B15を搭載。リュウズと同軸上に設けられたプッシュボタンによってスプリットセコンドを操作する。手巻き(Cal.B15)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径42.0mm、厚さ15.3mm)。100m防水。116万6000円(税込み)。

プレミエ B25 ダトラ 42
自社製の月・日・曜日・ムーンフェイズ表示モジュールを備えた自動巻きのCal.B25を搭載。月と曜日は12時下の小窓で、日付とムーンフェイズは6時位置のスモールダイアルで表示する。自動巻き(Cal.B25)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約48時間。18KRGケース(直径42.0mm、厚さ15.3mm)。100m防水。276万1000円(税込み)。

「デュオグラフ」=「DUOGRAPH」はクロノグラフをデュオ=ふたつ搭載という意味。「ダトラ」=「DATORA」はDATE=日付から名前が採られているのだという。

Contact info: ブライトリング・ジャパン Tel.0120-105-707


福田 豊/ふくだ・ゆたか
ライター、編集者。『LEON』『MADURO』などで男のライフスタイル全般について執筆。webマガジン『FORZA STYLE』にて時計連載や動画出演など多数。


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