シングルバレルゆえの通な使い方
細田「同じ個体ではありませんが、クロノスドイツ版が同じモデルをテストしたところ、主ゼンマイを巻ききってから最初の1〜2日は振り当たりを起こしてしまっていて、精度が悪かったんです」
広田「テンプは左右のアンクル当たることで回転反復運動をしているわけですが、振り当たりはテンプが生き生きしすぎて進みすぎる状態を指します」
細田「シビアな調整が必要な機械なのもしれませんね」
広田「そもそも、シングルバレルの10日巻きって、トルクのばらつきがすごく出てしまうんです。ただ、見た感じでいうとバランスは取れるようになったのかな。僕が使うとしたら、パワーリザーブを2日〜8日に落ち着くようにゼンマイを巻いてコントロールすると、美味しい精度が得られるんじゃない? そういう暗い楽しみ方もあると思います(笑)
主ゼンマイの力(トルク)って、巻ききると極端に上がってすぐに落ちてからフラットに持続して、最後にガクっと落ちる。だから最初の強すぎる部分と最後の不安定な部分をスパッと切ったら良いところだけを使えるのでは、と思っています」
細田「でも10日巻きだから安定した部分だけ使ったとしても一般的にロングパワーリザーブと言われる3日巻きよりは長く安定した精度が得られるわけですよね」
広田「そう。スゲー精度が出るはず」
鈴木「ツインバレルのロングパワーリザーブなら、もう少し力がフラットになるんだけど、強くて長い主ゼンマイを使っているからある程度は仕方ないかな」
広田「ゼンマイがパンパンに入ってますからねぇ」
鈴木「それも特徴のひとつですからね。香箱までスケルトナイズされていて、リュウズを巻くとゼンマイが締まっていくのが見えます」
細田「今までの110系よりさらにムーブメントが強調されているから、Cal.115は楽しいですよね」
知るほどに、うれしい誤算と出会える
鈴木「個性をすごく出してるから、さっきハカセが言ったみたいな使い方をしたら、見た目だけでなく、ムーブメントの個性もいっそう楽しめるね」
細田「緩急針はCal.400と同様のものを使っていますね。オリスは自社製ムーブメントには結構この形を使っているようです」
広田「この緩急針は“エタクロン風・改微動”とでも言えるでしょうか(笑)。このメリットは調整がしやすいこと。怪物みたいな機械です」
細田「だから、この機械は世の中にもっと知られてもらいたいと思っています。Cal.400の前に2014年からオリスはこんな機械を作ってるんだぞ、って」
鈴木「オリスの中での高級機向けの110系と普及機向けの400系っていう個性があって、しかも手巻きは10日パワーリザーブと自動巻きの5日パワーリザーブって、うまく棲み分けを考えてやっているよね」
鈴木「それから、最後にブレスレットにも触れておこうかな」
細田「チタン製で軽くて、しかも結構しなる。コマのピンがネジ式なので高級感もありますよね」
鈴木「お高級仕様だよね。だから、軽いだけじゃなく腕なじみが良い。ガッチリしてるけど軽くて、イカツつく見えるけど腕なじみが良いって、幾重にもギャップがあってなかなか面白いよね」
広田「うん。使う楽しさ、分析する楽しさのある時計です」
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