「陸」と関わりの深い時計ブランド4社とその代表作5本を紹介

FEATUREその他
2022.07.04

モータースポーツの歴史と共に歩んできたタグ・ホイヤー「タグ・ホイヤー モナコ キャリバー ホイヤー02 クロノグラフ」

タグ・ホイヤー モナコ キャリバー ホイヤー02 クロノグラフ

タグ・ホイヤー「タグ・ホイヤー モナコ キャリバー ホイヤー02 クロノグラフ」
モナコが映画中で使用された経緯は諸説あるようだ。有力なのは、マックイーンが役作りとして友人のジョー・シフェールを参考にした際に、ホイヤーのロゴ入りのレーシングスーツと共に腕時計もホイヤーから選ぶこととなった。結果、当時のラインナップの中でマックイーンがモナコに決めたというストーリーだ。自動車やファッションに造詣が深かったマックイーンが、斬新なスクエアケースの自動巻きクロノグラフをアイコンとして選んだとするストーリーは説得力のあるものだろう。自動巻き(Cal.ホイヤー02)。33石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約80時間。SS(縦39mm、横39mm、厚さ15.2mm)。100m防水。80万3000円(税込み)。

 速さを追求するスポーツでは、そのタイムを測定する時計との関連性が深い。その中でモータースポーツはクロノグラフとのつながりが深い。これは、モータースポーツの現場でストップウォッチが用いられてきたことや、ドライバーが運転しながら使用できる腕時計タイプのクロノグラフが好まれたことが起因している。また、車に熱中する層と、腕時計のメカニカルな面白さに注目する層に共通点があることも要因のひとつであると筆者は考えている。

 モータースポーツとの関係性が深いのがタグ・ホイヤーだ。1860年にエドワード・ホイヤーが時計工房を開設したことを起源とするタグ・ホイヤーは、科学技術の進歩により必要とされるようになった精密な計時を担うクロノグラフの技術向上に努めてきた。1914年には腕時計タイプのクロノグラフを発表しており、これは時期から考えてかなり早い。63年には、コレクション名をロードレースの「カレラ パンアメリカーナ」から取った「カレラ」を発表しており、現在も主力のコレクションだ。

 転機となったのが69年である。スイス人のF1ドライバー、ジョー・シフェールのスポンサーシップを通じて、ホイヤーは自動車関係以外のブランドで初めてF1カーにロゴを掲示し、ドライバースーツにも大きくロゴが描かれた。

 また、69年には、本来は競合であるブライトリングとハミルトン-ビューレン、ムーブメントメーカーのデュボア・デプラと連携して自動巻きクロノグラフのCal.11を開発し、アイコニックなスクエアケースの「モナコ」に搭載した。このモナコは、有名なモナコGPを想起させる名称であるほか、71年発表の映画「栄光のル・マン」(マン島で行われる伝統的な24時間レースを主題とした映画)にて、主役のスティーブ・マックイーンが着用したことで注目を集めた。

 その後、ラップタイムを正確に測る装置を開発して多くのレーシングチームに採用されるなどモータースポーツに貢献してきた同社は、現在でもさまざまなチームや自動車メーカーとパートナーシップを結んでいる。2016年以来、タグ・ホイヤーはレッドブル レーシングF1チームの公式パートナー兼タイムキーバーを務めているほか、1980年代から密接な関係を築いてきたポルシェとのパートナーシップを2021年に結んでいる。


轟音とスピードと刺激的なエクステリアの高揚感。ロジェ・デュブイ「エクスカリバー スパイダー ウラカン EVO2」&「エクスカリバー スパイダー ピレリ」

エクスカリバー スパイダー ウラカン EVO2

ロジェ・デュブイ「エクスカリバー スパイダー ウラカン EVO2」
自動巻き(Cal.RD630)。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ 約60時間。CCF(直径45mm、厚さ14.1mm)。50m防水。世界限定88本。770万円(税込み)。

 ロジェ・デュブイは、2017年からランボルギーニのモータースポーツ部門であるランボルギーニ・スクアドラ・コルセ(以下、ランボルギーニSC)と提携している。ランボルギーニをはじめとしたスーパーカーは、意欲的なアイディアと新技術が投入され、見る人を興奮させるべく創造性が発揮されて作られるものだ。

 そして、そのスーパーカーのモータースポーツ部門であるランボルギーニSCにとっての命題は、スピードに関わる技術の追求であると言える。ロジェ・デュブイとの提携は、このようなスーパーカーの世界観と共鳴したものだ。近年のロジェ・デュブイは、素材への探求、ムーブメントの実直への改善、卓越した仕上げ技術を独創的なデザインでまとめ上げた刺激的なモデルをリリースしている。ここに、ランボルギーニのエッセンスが加えられる。

「エクスカリバー スパイダー ウラカンEVO2」は、ランボルギーニSCによるレーシングモデル「ウラカン スーパートロフェオ EVO2」のリリースに合わせて製作されたモデルで、随所にディティールが取り込まれている。アイコニックなハニカム(蜂の巣)モチーフや、強度確保に必要なリブを残して肉抜きが施されたスパルタンなルックスがそれである。ケース素材はロジェ・デュブイが開発した合成素材SMCカーボンで、これはランボルギーニ ウラカンのモノコックシャシーやボディパネルに使用されている素材とほぼ同一である。

 またロジェ・デュブイは、モータースポーツでも活躍するタイヤメーカーのピレリとも独占契約を結んでいる。その関係性から生まれたのが「エクスカリバー スパイダー ピレリ」である。このシリーズのストラップには、実際のモータースポーツ競技で勝利を収めたタイヤのラバーが使用されている。

エクスカリバー スパイダー ピレリ ブラックDLC チタニウム

ロジェ・デュブイ「エクスカリバー スパイダー ピレリ ブラックDLC チタニウム」
自動巻き(Cal.RD820SQ)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。Ti(直径45mm)。50m防水。973万5000円(税込み)。

 通常、モータースポーツに用いられるタイヤのコンパウンド配合は機密情報であり、社外に持ち出されることが少ないことを考えると、このパートナーシップが如何に強固であるかが想像できる。また、モータースポーツのピットストップで行われるスピーディーなタイヤ交換から着想を得た機構も取り入れられ、ストラップ、リュウズ、ベゼルまでがワンクリックでスピーディーに交換可能である。


ルーツを知れば新たな魅力に気付く

 筆者は上記のようなルーツを暗記している訳ではないので、各メーカーが公表する資料や公式サイトの情報を元に調査しながらこの記事を執筆している。そうやって改めて各モデルの由来を知ることで、筆者はそれぞれの魅力を再認識して欲しくなった。使用して、その世界観を自分の中に取り込みたいと感じている。

 筆者は、幼い頃のF1への憧れとタグ・ホイヤーがモータースポーツと歩んできた歴史が重なり合って、タグ・ホイヤーは憧れを覚えるブランドのひとつである。また、ミリタリーテイストのファッションを好むので、カーキ フィールド メカを選んで仕事の相棒とするのも面白そうだ。

 このようにさまざまなルーツを知ることで、自分が最も共感できる、あるいは興味深いと思えるブランドやモデルを見つけ、長く付き合える1本と出会えることができれば幸いである。


「海」と関わりの深いブランドの時計5選

https://www.webchronos.net/features/77853/
【82点】タグ・ホイヤー/タグ・ホイヤー モナコ キャリバー ホイヤー02 クロノグラフ

https://www.webchronos.net/specification/48673/
ランボルギーニ ウラカンとカウンタックの名を冠したロジェ・デュブイの新作を披露

https://www.webchronos.net/news/72583/