マニアが歓喜するツボを押さえた自社製ムーブメント
土井リュウズガードがしっかり主張しているところもチュチマらしいです。このデザインはあまりないですね。
細田リュウズガードは巻きやすさに影響はありましたか?
鈴木特に問題はなかったです。時計好きにとっては、手で巻くのも楽しみのひとつだし。
土井リュウズ自体が結構大きいから巻きやすくて、時刻合わせの時も引きやすかった。リュウズを戻した時の針飛びもなかったです。
細田ハカセはよく、リュウズを回した際に針がどれだけ進むか、という話をしますけど、パトリアはその点、よく調整されていましたよね。
広田僕らがやるテストのひとつで、リュウズを引っ張って、ぐるーっと1回転させるんです。パトリアは(リュウズ1周で針の進みが)25分ぐらいだった。進むものでは1回転で40分とか60分も進むんですけど、針がゆっくり動くものは厳密な針合わせができます。安定もしますし。ユニタスの場合は、1回転でもっと進んでいたはず。ユニタスベースとは明らかに違う”お上品”な印象かなと。
細田確かに、自社製と言いながら実はユニタスベースでプレートだけ変えてみたいな、ありがちなやつではなかったですね。
広田もちろんユニタスも良いんですけど、パトリアが載せているものはちゃんと高級なムーブメントになってる。元々、発表時点ではゴールドケースだったから200万円台と高かった。当時、(世界的な腕時計ジャーナリスト、ギズベルト・L・)ブルーナー先生からパトリアが面白いから見てみろと言われた時とムーブメントが同じというのは素晴らしいなと。で、ゴールドケースとSSケースで仕上げを全く変えてません。
細田ムーブメントでほかに特筆すべきポイントはありました?
広田アンダー100万円で、チラネジ付きのフリースプラングテンプ、巻き上げヒゲで、手作業でブリッジに面取りを施したものって、なかなかないでしょう。
細田そうか、この価格帯の自社製ムーブメントでスモセコ手巻きってそもそも選択肢としてほぼないですよね。すごくニッチなところを突いてきてます。
鈴木マニアが喜ぶ要素が入ってるよね。
土井個人的には退却型のコハゼが好きです。このおかげで巻き心地も音も良くて。
鈴木コハゼは基本的に、ゼンマイが解けないストッパーとして機能するんだけど、これは巻く時にバネが上がっていい感じの巻き心地を生んでるよね。
広田あと、ネジ! ネジがすごく良い。
細田そうですね。ネジ頭もちゃんとポリッシュされてますし。
鈴木あと、ネジ留めだけどシャトンも付いていて(笑)。なくても大丈夫なんだろうけど、飾りとして頑張った。
広田ネジは本当に良いですね。頭をフラットにするだけじゃなくてすり割りの部分に斜めの面取りも入ってるし、何気にお金がかかってる。
鈴木それを考えると、やっぱりまだアンダー100万円に収まっているのは喜びがありますね。
広田5気圧防水だから普通に使えるし。
細田そうですね。この見た目で5気圧はうれしいですね。
鈴木それから、着用時の精度を測ってみたところ、T24過ぎて大体+11秒くらい、T48でも+14秒でした。
細田僕は同じ個体で試しましたが、T24で+7秒、T48で+11秒でしたね。
鈴木その辺に収まるんだね。
土井グレーの方はT24で+6秒、T48で+10.5ぐらいでした。
細田なかなか優秀ですね。日較差で+5秒以内くらいで推移してる。
鈴木マイナスに振れないのもちゃんとしてますね。
『ゴールデンカムイ』の土方歳三のような時計?
細田ケースサイズはどうでした? 個人的には、このややドレスな雰囲気の見た目で43mmだと、腕に載せたバランスがちょっとミスマッチな感じは否めなかったんですけど……。デザイン自体や着け心地は問題ないのですが。
鈴木このラグ形状だと全長が短くて、結構日本人の腕でも全然フィットするし、着け心地は全然悪くないけどね。
細田この見た目だったらもう2〜3mm小さくてもいいかなと。
広田ムーブメントの直径が31mmだから、確かにケースはまだ縮められるな。
細田パトリアって、ドレッシーな要素もありつつ、ツールウォッチらしさもあって、デザインで分類するのが絶妙なモデルだと思うんですけど、人に例えたらどんな時計って言えるんでしょう?
広田擬人化ね……うーん……。
鈴木インテリな感じもあるよね、あとちょっとお洒落。
広田なんだろう……『ゴールデンカムイ』の土方歳三みたいな。(画像検索して)これ。
一同(笑)
鈴木おー、思ったよりダンディですね。
広田昔っぽいけど、“昔の名前で出ています”ではないところが近しい。ちょっとアップデートされてるし。
鈴木(検索して)「この時代に老いぼれを見たら『生き残り』と思え」って、メチャカッコいいじゃん!(笑)
細田僕、読んでないから分からないんですけど、伝わる人には伝わってます?(笑)
広田3針・スモセコ・手巻きで仕上げが良いってなると、普通なら全部クラシックにまとめちゃうけど、それを今の時計としたアップデートは良いって思いました。ドイツのメーカーっぽい気がする。
鈴木うん、ドイツっぽさは確かに分かります。
広田仮にクラシックに全振りしてドーム風防を採用すると、ちょっと違う時計になっちゃうでしょう。実用時計を作り続けてきたチュチマの趣味時計だけあって、これはベースをちゃんと作り込んで、今の時計としてパッケージも考えられてる。
土井使うことをちゃんと考えられていますよね。
鈴木やっぱり、チュチマはミリタリーのノウハウがちゃんと活かされてる。安心感・安定感があります。
広田オタク向けだけど、実はちゃんと使えて安定感があるので、さすがチュチマだなと。
高級時計の仕上げの教材として申し分なし
細田まぁ、これ買うのはオタクしかいないでしょうね。
土井IWCの「ポルトギーゼ・オートマティック 40」とかで悩まれている方の選択肢にはなると思います。
鈴木そうだよね。あえてこっちを選んで、人と違う感を出すのもアリ。
広田個人的には今後、バリエーションが増えてくるなとうれしいなと。でもやっぱり、値付けが間違ってるぐらいお得感があるなと。 確かに95万円は高いですけど、内容を考えるとまだ、アリですよ。高級時計の仕上げとは何か? を知りたい人たちにとってはすごく良いサンプルになるんじゃないかなあ。アンダー100万円で仕上げを語れるブランドって今なかなかないですから。ツァイトヴィンケルも同じぐらい素晴らしいけど、100万円超えちゃったし。
鈴木100万円を超えるか否かは、やっぱり、高級時計のひとつの基準値としてはありますね。
広田「雲上持ってます!」って自慢する人は時々見かけるけど、値段の一因である仕上げのクオリティをちゃんと理解している人は多くないでしょう。そういう人たちにはこれを買って、イチから学ぼう、と言いたい笑
鈴木うん、ディテールを見る教材としてもオススメですね。
細田あと問題を挙げるなら、流通かもしれませんね。国内でチュチマを扱っているところが少ないし、パトリアを置いている店舗は更に限られる。扱っているのは、名古屋の時計・宝飾 ヒラノさんくらいしかパッとは思い浮かばないです。
広田ヒラノさんは、機会があればのぞいて欲しいですね。
鈴木こういう通好みな時計が買えるお店ですからね。
細田手に取れない人が本当に多いので、まずは実際に見て良さを感じていただきたいです。
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