ギヨシェ彫り
GUILLOCHAGE
ダイアルに施されたギヨシェ彫りは、「クラシック」コレクションの美観を代表するブレゲのデザインコード。創業者の時代からブレゲのシグネチャーとして大半の製品に用いられてきたギヨシェ彫りは、時計装飾のまさに古典中の古典にほかならない。誇り高く「GUILLOCHE MAIN(手彫りギヨシェ)」と記されたダイアルは、それ自体が一種の芸術作品だ。
創業者ブレゲの初期の傑作として名高い自動巻きクォーターリピーター懐中時計「No.5」から着想した現代の腕時計の最新バージョン。パワーリザーブ表示、ムーンフェイズ、ポインターデイトを配した独創的な文字盤を模様の異なる3種類のギヨシェ彫りが引き立てる。自動巻き(Cal.502.3DR1)。37石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約45時間。18KRG(直径39mm、厚さ8.65mm)。3気圧防水。548万9000円(税込み)。
ギヨシェ彫りは、手動制御の専用旋盤を使って精密な装飾模様を彫ることから、英語で「エンジンターン」とも呼ぶ。機械を用いるが、模様を彫るのはあくまでも専門職人の手仕事だ。この装飾技法を限りなく探求した時計史上初の人物が、高級時計ブランド、ブレゲの創業者であるアブラアン-ルイ・ブレゲだ。1786年に初めてダイアルにギヨシェ彫りを用いたが、その発想が秀逸なのは、金属ダイアルの反射を抑え、表示の区分けに応用するなど、視認性を高めるための機能を担わせた点である。もちろん機能的装飾というだけでなく、ブレゲのシグネチャーとなる美観の確立にも大いに役立ったのは言うまでもない。
現代のブレゲは、伝統的なギヨシェ彫りの継承と発展のためにジュウ渓谷の自社工場内に専用の工房を設け、広々とした室内には19世紀や20世紀初頭の機械も含む30台以上のギヨシェ彫り機が並び、専任の職人を多く抱える。これほどの規模でギヨシェ彫りに取り組むブランドはブレゲ以外にないだろう。
手動旋盤を操作しながらソリッドゴールドの盤面に直線や曲線を彫り込むブレゲのギヨシェ彫りには数多くの模様があり、1枚のダイアルに複数の模様を組み合わせることが非常に多い。例えば、初期の懐中時計を彷彿させ、最も古典的なブレゲ・スタイルが表現されたこの「クラシック 7137」では、ダイアルの主要部分にピラミッド状の「クル・ド・パリ」、パワーリザーブ表示には編み籠の模様の「パニエ」、日付表示には市松模様の「ダミエ」というように3種類が用いられている。
すでに述べたように、ブレゲ・スタイルにおけるギヨシェ彫りのセオリー通り、表示機能の領域ごとに模様を変えているが、とくに見事なのはパワーリザーブ表示とメインダイアルの境界である。クル・ド・パリとパニエが隣接して境界を成し、はっきりと見分けられるのだ。また、ギヨシェ彫りにシルバー仕上げを施したダイアルは、見栄えに加え、これもブレゲのシグネチャーであるブルースティールのブレゲ針をくっきりと際立たせることでも効果を発揮する。
さらに、絶妙なテクニックは、ローマ数字を配したチャプターリングを筆頭に、ミニッツマーカー、パワーリザーブ表示、日付や月齢表示の目盛りリングの縁に沿って施された別の装飾模様で、「縁取り」という意味がある「リズレ」にも見て取れる。
このような模様に加え、太陽光線を思わせる「ソレイユ」、麦粒の「グレンドルジュ」、波模様の「ヴァーグ」、炎の「フラメ」などもモデルによって用いられるが、どのような場合も伝統的なギヨシェ彫り機を操作しながら1本1本の線をゴールドの盤面に精密に彫り込むのは、経験豊富な熟練職人の手仕事だ。ブレゲは、その芸術性に誇りを込めてダイアルに「GUILLOCHE MAIN(手彫りギヨシェ)」と記しているほどだ。
ソリッドゴールドのみならず、繊細な貝素材のマザー・オブ・パールにもギヨシェ彫りの高度な技術を発揮。ダイアルの主要部分にはクル・ド・パリ、新たにブレゲ数字を採用したチャプターリングの縁取りにはリズレが用いられる。自動巻き(Cal.537/3)。26石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約45時間。18KWG(直径30mm、厚さ7.7mm)。ダイヤモンド65個。3気圧防水。355万3000円(税込み)。
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