ムーンディスク
MOON-PHASE DISK
ブレゲ「クラシック」に見られる数々の歴史的なディテールは、時計愛好家にとって常に興味が尽きない。ムーンフェイズ表示もそのひとつ。人間の顔をした、さまざまな表情の月を描いたムーンフェイズが初期の懐中時計からブレゲの特徴になった。ヘリテージを継承する現代のモデルにおいても、彫金職人によって刻まれた月がムーンフェイズを強く印象付ける。
ブレゲ懐中時計の特徴的なエレメントを現代の腕時計にアレンジしたこのモデルは、グラン・フー・エナメルダイアル、12時位置の典型的なムーンフェイズ表示、3時から6時位置の長い針によるパワーリザーブ表示など、歴史に由来するシグネチャーを満載する。自動巻き(Cal.591DRL)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。18KWG(直径39mm、厚さ10.2mm)。3気圧防水。415万8000円(税込み)。
ブレゲの「クラシック」コレクションには、グランドコンプリケーションからレディスウォッチに至るまで、ムーンフェイズ表示を搭載するモデルが幅広く存在する。窓に表示される月が実際と同じように満ち欠けする仕組みを懐中時計に初めて搭載したのもアブラアン-ルイ・ブレゲとされ、実際に初期の懐中時計からキャリッジクロックにまで各種の時計にムーンフェイズが取り入れられた。そのため、ムーンフェイズもブレゲのシグネチャーになり、現代に受け継がれるヘリテージの一部を成している。
この「クラシック ムーンフェイズ 7787」の12時位置に置かれたムーンフェイズも極めてブレゲらしい。歴史的な懐中時計と同様に、比較的大きな月を配し、月に人間の顔と同様の表情を演出しているのが特徴だ。単に丸い月のモチーフを配置するムーンフェイズが大半を占める中で、このような「人面」を用いる例は非常に少ないが、創業者のアブラアン-ルイ・ブレゲへの賛辞を込めて、当時に由来する伝統的なデザインを守り続けているのがブレゲである。
そしてこの月の顔は、ゴールドのムーンディスクに施された繊細な彫金によって表現されている。満月の位置で顔全体をあらわにし、こちらとまっすぐ向き合う月は、ロマンティックであり、ユーモラスでもある。ブレゲの「月の顔」には笑顔や憂鬱な顔、瞑想する顔など、いろいろなタイプがあるが、「クラシック ムーンフェイズ 7787」のそれは、1787年に製作され、1794年に販売された有名な「No.5」のイメージに近い。そして、このムーンフェイズの表示に月相と合わせて半円形の月齢を示す日数の目盛りが用いられている点も伝統を踏襲している。
グラン・フー・エナメルダイアルは、先の超薄型トゥールビヨン「5367」と同様に、ブレゲ数字のアワーマーカー、星とダイヤモンド、百合のモチーフを組み合わせたミニッツマーカー、ブルースティールのブレゲ針などのシグネチャーが満載だが、もうひとつの歴史的ディテールは、パワーリザーブ表示の目盛りに見られる小さな矢印のモチーフである。これは1780年代に製作が始められた懐中時計「No.92」のダブルレトログラード表示を模したものだ。これまたブレゲの絶妙な再解釈の例である。
女性用にデザインされたこのモデルは、グラン・フー・エナメルダイアルの6時位置にムーンフェイズ表示を配置。ムーンディスクを覆う部分をハート形にデザインしたり、ブレゲ針を優美な形状にアレンジしたり、フェミニンな味わいを高める。自動巻き(Cal.537L)。26石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約45時間。18KRG(直径30mm、厚さ9.8mm)。ダイヤモンド66個。3気圧防水。387万2000円(税込み)。
複雑機構
COMPLICATION
ブレゲのコレクションにおいて幅広いモデルを展開する「クラシック」。最高峰のグランドコンプリケーションには伝統に忠実な複雑時計もあれば、ダブルトゥールビヨンや超薄型スケルトントゥールビヨンのように先端技術のショーケースも存在する。過去の再現や刷新にとどまらず、革新によって未来のクラシックを築くこともブレゲが目指す「クラシック」なのだ。
素材の約50%を大胆に削減した18Kゴールド製のスケルトンムーブメントは、表と裏の双方から機構のすべてが見渡せるだけでなく、地板や受けの面取り、香箱周辺部のギヨシェ彫りによるクル・ド・パリ模様など、細部に施された手仕事も見どころだ。自動巻き(Cal.581SQ)。33石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約80時間。18KRG(直径41mm、厚さ7.7mm)。3気圧防水。3095万4000円(税込み)。
「クラシック」コレクションの醍醐味といえば、トゥールビヨンに代表される高度な複雑機構だろう。しかし、そのトゥールビヨンにも新しい時代が到来した。ブレゲが21世紀の新世代トゥールビヨンムーブメントとして開発したキャリバー581である。開発はおよそ10年前にさかのぼるが、このムーブメントには注目すべき多数の革新がある。
ペリフェラルローターを採用する自動巻きで厚さ3mmの超薄型、チタン製キャリッジ、シリコン製のヒゲゼンマイと脱進機、2万8800振動/時の高振動、新開発の長尺ゼンマイによるハイエナジー香箱、約80時間のパワーリザーブ、そして従来の構造とは異なり、キャリッジ外周からトゥールビヨンの動力を得る設計などである。ムーブメント単体ではブレゲの先端技術の集大成のように思える。
これをベースにした「クラシック」のモデルにはギヨシェ彫りダイアルにパワーリザーブ表示を配した「5377」、2針でグラン・フー・エナメル文字盤を用いた「5367」などがあるが、これらに続く究極のモデルが、2019年に発表された「5395」である。18Kゴールドで作られたキャリバー581SQは、3mmの超薄型をキープしながら、素材の約50%を削減したブレゲ史上類のない革新的なスケルトンムーブメントである。左側の大半が抜かれ、地板や受けも極限まで削られているため、個々の部品や輪列構造、駆動の仕組みまでも見ることができる。
「クラシック」コレクションのモデルには、インスピレーション源となった歴史的な懐中時計が存在する場合が少なくないが、このモデルに関しては、それに相当するものはない。「クラシック」ファミリーに共通するデザインコードは、縦溝模様を刻んだケースバンドや、ロウ付けされた細いラグ、ブルースティールのブレゲ針、サファイアクリスタルで作られたチャプターリング上のローマ数字だろうか。そのローマ数字やミニッツトラックにしても、レーザーで彫り込んでからブルーの塗料を充填するという極めて現代的な手法が用いられている。まさに現代に誕生した“シン・クラシック”とも呼ぶのがふさわしい進化モデルだが、それでいて逸脱感はなく、紛れもなくブレゲ「クラシック」のテイストが息づいているところが実に素晴らしい。
トゥールビヨンとパーペチュアルカレンダーというふたつのコンプリケーションを組み合わせ、スケルトンのデザインに仕立てた複雑時計。従来のダイアルを用いず、重なり合う複数のサークルによる斬新な立体デザインを採用した進化形「クラシック」である。手巻き(Cal.558QP2)。21石。1万8000振動/ 時。パワーリザーブ約50時間。Pt( 直径41mm、厚さ11.6mm)。3気圧防水。3502万4000円(税込み)。
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