悩ましいが「標準的」と評価するサイズ感
本作のインプレッションにおいて悩ましかったのがサイズ感の評価である。筆者の好みだけを言わせてもらうなら「シンプルな3針モデルにしてはやや大きい」であった。
スペック上のケース径は、現在のグランドセイコーの標準的なサイズと同等である。インフォーマルウォッチの中で支持の厚いオメガ「シーマスター アクアテラ」と比較すると、アクアテラの主軸となるケース径が41mmであって同等となる。
競合しそうな他社モデルも同様だ。よって、特別な飛び出しなどもない本作のサイズを「大きい」と評価するのは乱暴にも思える。
一方、暗所でも白さが際立つダイアルはケース端まで広く取られて主張が強く、ケース径の数値よりも大きいと感じた。これを存在感があるとしてポジティブに受け取れるかは個人の好みに大きく左右される。
なお、周長約16cmと筆者より手首の細い友人の場合はギリギリ手首に載っている状態となるが、ブレスの可動域の広さに助けられてフィットしそうにも見えた。
以上のことを総合して、本作を「標準的なサイズ感」と評価することにした。本作に興味のある方は店頭でフィット感を確認することをお勧めする。
約20万円とセイコー内にライバルが多い価格
本作のダイアルは優れているし、ムーブメントの性能も悪くない。ただ、本作が一押しモデルとなるかと問われると悩ましい。というのも、セイコー内に有力なライバルが多いためだ。
例えば、「キングセイコー SDKS001」が近いジャンルかつ同額のライバルとして挙げられる。SDKS001は本作と同じムーブメントを搭載し、外装品質が高い。ダイアルも本作のような独自性はないが仕上げは優れている。
何より、本作よりコンパクトかつ引き締まったデザインが良い。本作より5万円ほど安い“ファーストダイバー”の現代デザイン「プロスペックス SBDC101」も、ビジネス用途にも似合うスタイリッシュさがあって競合になりうるし、高い防水性能はアクティブなライフスタイルにマッチするだろう。
このようなライバルと突き合わせながら、自分の求める要素を吟味すれば、長く付き合える1本を選ぶことができるだろう。
ダイアルの質感に魅力を感じれば検討の価値がある
ベゼルが細く、特徴的な有田焼ダイアルを広く取ったデザイン。大きめのリュウズは操作感が良く、デザインのワンポイントとしても効いている。自動巻き(Cal.6R31)。24石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約70時間。SS(直径40.5mm、厚さ12.4mm)。10気圧防水。19万8000円(税込み)。
本作にはもう一歩の改善を期待したい点が残るものの、競争力を損なうレベルではない。本作のサイズ感を許容できるなら、魅力的なダイアルがあなたを待っている。
独自の有田焼ダイアルは質感が非常に高く、過去のモデルに対しても改良が進んでいる。本作のキャラクターを決定付ける要素にもなっており、通常モデルに対するアップチャージにも納得感がある。
今回のインプレッションではダイアルの質感について紙面を割いたが、それでも言葉が足りないように思う。本作に興味のある方はぜひ店頭でじっくりと観察してほしい。可能であれば、室内の光と太陽光の下での見え方の違いを感じ取ってもらえると幸いである。
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