セイコー アストロンが生んだ“新生”「ネクスター」
時間と社会の関係の中で、時代が求める高精度時計を作ってきたセイコーが、「セイコー アスロトン」の10周年を節目に、次なる進化を遂げた。新シリーズである「セイコー アストロン ネクスター」は、継承してきた高精度技術はそのままに、デザイン面を強化した。
洗練されたシャープなルックスを際立たせているのは、平面と斜面を巧みに取り入れたケースにある。
これはスポーティさとラグジュアリー感を両立させるテクニックであり、ケースとブレスレットを巧みに連続させたのも同様の効果を狙ってのこと。
またベゼルはメタルリングの上にサファイアクリスタルを合わせることで繊細な表現を引き出しているのも見事である。これはキャリバー5Xがパッチアンテナを採用しているから可能になったディテールである。
これまでのセイコー アストロンは、原点でもあるクオーツ アストロン 35SQのDNAを継承したデザインを好んできたが、そこから脱却し都会的な空気をまとったのだ。
ではなぜ、「ネクスター」は、この時代に生まれたのだろうか?
エレガントとスポーティ ふたつの“ネクスター”
初代がデビューした2012年は、スマートフォンはあるものの、まだデジタルとアナログが混在していた過渡期であり、スマートウォッチの存在感も今ほどなかった。しかし今やデジタルファーストがかなり進行しており、アナログウォッチの存在意義が少々揺らいでいるとも言えるだろう。
その一方で、長く続いた新型コロナウィルスによるパンデミックの影響もあってオンとオフの境目が曖昧になり、ビジネスファッションにかなり自由度が増している。そのため、腕時計を自己主張やファッション的に楽しむ人も増えている。
これまでの高精度ウォッチは、正確な時間を示すことが重視されてきたが、今の時代はそこにライフスタイルツールとしての要素も求められるようになった。だからこそセイコー アストロンも進化する。
正確な時間を武器に社会を動かしていくだけでなく、時代の変化を機敏に感じ取り、リードしていく……。セイコー アストロン ネクスターは、そんな「次世代のリーダー」に似合う時計となっている。
GPSソーラー(Cal.5X53)。Ti+ダイヤシールド(直径43.1mm、厚さ12.2mm)。10気圧防水。25万3000円(税込み)。
(中)セイコー「アストロン ネクスター SBXC121」
GPSソーラー(Cal.5X53)。Ti+スーパーブラックダイヤシールド(直径43.1mm、厚さ12.2mm)。10気圧防水。27万5000円(税込み)。
(右)セイコー「アストロン ネクスター SBXC111」
GPSソーラー(Cal.5X53)。Ti+ダイヤシールド(直径42.7mm、厚さ12.2mm)。10気圧防水。28万6000円(税込み)。
「セイコー アストロン ネクスター」は2022年の5月に登場し、同年10月に異なるデザインを持つ新コレクションが加わった。両コレクションの機能面に違いはないが、デザインはかなり個性が異なる。ここでは便宜上、前者を1stコレクション、後者を2ndコレクションと記載したい。
1stコレクションはダイヤルの表情やケースの斜面のデザインをかなりソリッドにすることで、”高級時計としてのまとまりのよさ“を実感できる時計になっている。
逆に2ndコレクションは、所有する喜びを喚起させるようなディテールを詰め込んだ。ASTRO=宇宙や星というネーミングを再び想起させるように、デザインのテーマは「NOVA(新星)」。
GPSソーラー(Cal.5X53)。Ti+ダイヤシールド(直径43.1mm、厚さ12.2mm)。10気圧防水。25万3000円(税込み)。
(右)セイコー「アストロン ネクスター SBXC109」
GPSソーラー(Cal.5X53)。Ti+ダイヤシールド(直径42.7mm、厚さ12.2mm)。10気圧防水。28万6000円(税込み)。
ダイアルは中央から放射状に広がるように型打ち加工で刻みを入れ、ケースはきりっと斜面を効かせるデザインにすることで、よりアクティブな印象を作り上げている。
さらに初代モデルと同様に、セラミックベゼルを採用した。ただしこれはリングアンテナを使っているからではなく、硬質な輝きによって高級感を引き出すためである。
超新星爆発をテーマにした新色登場
さらに2023年は、「セイコー アストロン ネクスター」の限定モデルがリリースされる。
星が爆破し、銀河の中で明るく輝く「超新星爆発(スーパーノヴァ)」をイメージし、ケースやブレスレット、ベゼルは漆黒の宇宙空間を思わせるブラックでまとめ、放射状パターンのダイヤルはグリーンのグラデーションカラーを採用。
さらに針やインデックスには、レギュラーと異なるブルーのルミブライトを使うことで、爆発の圧倒的なエネルギーを表現した。
超新星爆発をテーマにした限定モデルは、グリーンのグラデーション文字盤やブルーに光るルミブライトなど、レギュラーモデルと色使いで差別化を図る。GPSソーラー(Cal.5X53)。Ti+スーパーブラックダイヤシールド(直径43.1mm、厚さ12.2mm)。10気圧防水。27万5000円(税込み)。
このグリーンやグラデーション仕上げ、あるいはブラックケースなどは、ラグジュアリーなスポーツウォッチのトレンドであり、これを実用的な超高精度ウォッチにファッションを取り入れ、オンもオフも似合うフレキシブルなスタイルにまとめている。これなら所有する喜びや着用する楽しさもあるだろう。
セイコーはいつの時代も高精度ウォッチに力を入れ、しかも社会の変化やユーザーのニーズも読み取りながら進化してきた。
それは優れた技術のたまものであるが、それ以上に正確な時計は社会の公器であるという意識があるからだろう。正確な時で社会を円滑に動かす基礎を作ってきたセイコーの理念は、高精度時計にも息づいているのだ。
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