ジャケ・ドローCEO アラン・デラムラは「ジャケ・ドロー8.0、ディスラプティブ・レガシー」という衝撃的な新戦略を打ち出した。エントリークラスをやめて、15万スイスフラン以上のユニークピースを主とするのだという。彼は言う。
[クロノス日本版 2023年3月号掲載記事]
エントリークラスを廃し、現代の“キング”に活路を求める
ジャケ・ドローCEO。1964年、スイス生まれ。12年間、スイスを中心に英国やエクアドル、ボーリヴァージュ・パレス ローザンヌでジェネラルマネージャーとして、ホテル業界で国際的に活躍。1997年、ニコラス・G・ハイエック、ジャン-クロード・ビバーと共に最初はオメガ、次にマーク・A・ハイエックと共にブランパンに携わる。15年以上、ブランパンの経営委員会のメンバーとして、モノブランドブティックのコンセプト構築などのマーケティング戦略や新作の成功によって、売上高を15倍に増やすことに貢献した。その後、ブランパンを離れるが、2021年、ジャケ・ドローCEOとしてスウォッチ グループに帰還し、富裕層をターゲットとした新戦略を打ち出す。
「ジャケ・ドロー自体は、長い歴史や堅固な遺産、技術もあり、とても良いブランドですが、これまではちょっと大人しく、静かな印象でした。そのまま何もせずにいて悪くなってから、慌てて何かをするのではなく、動ける時に動いておくことが必要だと考え、新戦略に舵を切りました」
そもそも創業者のピエール- ジャケ・ドローは18世紀、ヨーロッパをはじめ、中国も含めた王侯貴族に直接、自身が創った最高級の作品を販売していた。これを現代のジャケ・ドローにおいても復活させ、一層の高級化を果たすということだろうか。
「100万円台の商品を購入する顧客層と、オートマタのようなハイエンドな高額品を買う層はまったく違います。現代において、ジャケ・ドローが探すべき“王”は誰か?と考えたときに、高額な商品を買える経済的能力がある方々だと考えるに至りました。100万円台の商品を買う層とオートマタを買える層は消費行動も異なれば、求められるサービスも異なります。ブランドとして、後者の層にふさわしいサービスとホスピタリティを提供するためには中途半端なことはせずに、それに見合った体制をもって応えていかなければなりません」
具体的にはどうしていくのか?
「今後は1000万円以上の商品を提供し、それを購入できる顧客をターゲットとする予定です。こうした富裕層には、店舗に来てもらうのではなく、ブランド側の人間が顧客にアプローチして商品を紹介することが大事です。したがって、従来の販売拠点というシステムを廃し、世界中に156あった正規販売店をクローズします。例外として、スイスの本社内に新しくジャケ・ドロー ブティックというスペースを作り、そこで顧客を迎えていきます。また、日本の銀座ブティックはショールームとして残します。今後は、本社工房と顧客をダイレクトに結ぶ直販というシステムに切り替えてます。顧客には自分ひとりのための世界限定1本の時計をカスタマイズしながら提供できる体制を構築していきます」
世界の顧客とマニュファクチュールのデザイナーや職人とは“フィジタル”を活用してつないでいく。パーソナライゼーションという、古くも新しい高付加価値化にデジタル技術を駆使することで乗り出したジャケ・ドロー。その挑戦に、世界の時計業界関係者の熱い視線が注がれている。
エントリークラスを廃し、各顧客向けにカスタマイズされたユニークピースを提供する新戦略を打ち出したジャケ・ドロー。12時位置にトゥールビヨンを備え、スケルトナイズしたムーブメントをサファイアクリスタル文字盤によって一層際立たせたこのモデルも世界にたった1本のみ。自動巻き(Cal.Jaquet Droz 2625SQ)。30石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約7日間。サファイアクリスタル(直径42mm、厚さ13.76mm)。3気圧防水。世界限定1本。時価。
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