航空機のコックピットから、スタイルセッターの腕元へ
ステップベゼルや角型のプッシュボタンが印象的な直径42mmケースにマニュファクチュールキャリバー01を搭載し、トーン・オン・トーンのブラック文字盤を与えた新作プレミエ。同色ステッチが施された光沢のあるアリゲーターストラップを合わせ、モダンレトロに仕上げた。自動巻き(Cal.01)。41石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径42mm、厚さ13.6mm)。10気圧防水。110万円(税込み)。
最近の時計業界でクロノグラフのトレンドといえば“パンダ顔”だ。インダイアルを反転色としたデザインは視認性に優れ、一般的にはスポーティーで引き締まった表情になる。2018年のプレミエ復刻第1弾にもトゥートーンが用意され、多くのファンに支持された。
だが、たとえ人気モデルでも市場に媚びることなく、大胆に変革するのがブライトリング流だ。新プレミエは全モデルが単色ダイアルとなった。というのも、もともとパンダダイアルはレーシングウォッチが流行した1960〜70年代にメジャーになったデザイン。1940年代のプレミエには、少しなじみが薄い。
かくしてブラック、ブルー、グリーン、サーモンピンク、クリームの文字盤カラーが揃い、クリームダイアルにはSSのほかに18Kレッドゴールド仕様もラインナップ。新プレミエにふさわしい個性的な顔ぶれと言える。その6型すべてが、クラシックにしてエレガントなトーン・オン・トーンの積算計を採用した。
実際に新プレミエを手に取って最初に感じたのは“機能的な主張が控えめ”であること。筆者が日頃愛用しているナビタイマーはパンダダイアルや回転計算尺が、ここぞとばかりに“男らしさ”や“機能美”を主張している。だが、新プレミエは明らかに表情が優しい。アラビア数字とふたつ目フェイスの柔和な組み合わせは、特にスーツスタイルと相性がよく、それでいてクロノグラフだからモードすぎず、カジュアルすぎず、こなれた感じの洒落感を演出できる。“これは使い勝手がよさそうだ”と、まず感心した。
植字のアラビア数字インデックスは巧みにインダイアルを避けており、その調和の取れたフェイスにデイト表示がうまく溶け込んでいる。ブラックダイアルはカレンダーディスクが黒地&白数字のため、より表情がスマートな印象だ。
コマが斜めにカットされた7連ブレスは質感も高級感もたっぷりとあり、フィット感は良好。これに使いやすいバタフライクラスプが付く。プレミエはストラップスタイルもよく似合うが、標準のセミシャイニーアリゲーターにも、折り畳み式の着脱しやすいバックルが装着される。
サファイアクリスタルバックからは、2022年にリデザインされたキャリバー01の丁寧な仕上げと精緻な鼓動が鑑賞できる。2009年に初出以来、合理的な設計と実用性、C.O.S.C.認定の高精度が時計界でも高く評価された自社開発・製造ムーブメントだ。
試しにプッシュボタンを押してみると、しっかりした押し心地に安心感がある。これはキャリバー01がコラムホイールを引くのではなく、押して動かす構造のため。グローブを着けたまま押した際にパイロットが確かな操作感を得られるよう、クロノグラフ操作の重さを数値化してコントロールしているのだ。
かつてウィリー・ブライトリングは「人が時計を身に着けるとき、それは紛れもなく非の打ち所のないセンスの証しとなる」と語った。腕時計が上流階級の装飾品や戦場の装備品といった限られた用途から脱却し、世の中に広く普及していった時代に、彼はプレミエが、オーナーのライフスタイルやパーソナリティを象徴する存在になることを見抜いていた。それから約80年、現代の新しいプレミエは、スタイルセッターの腕元で本来の輝きを取り戻すに違いない。
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