LANGE 1 DAYMATIC
左右のエレメントの反転と素晴らしい自動巻き
ランゲ1・デイマティック
Ref.320.025。ランゲ1初の自動巻きムーブメント搭載機。左右の表示を反転させただけでなく、9時位置にレトログラード式の週表示を備える。時計全体の完成度は非常に高く、腕馴染みも良好。個人的には、ランゲ1で最良のモデルのひとつだ。Cal.L021.1。67石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。Pt(直径39.5mm)。30m防水。575万円。
Ref.320.025。ランゲ1初の自動巻きムーブメント搭載機。左右の表示を反転させただけでなく、9時位置にレトログラード式の週表示を備える。時計全体の完成度は非常に高く、腕馴染みも良好。個人的には、ランゲ1で最良のモデルのひとつだ。Cal.L021.1。67石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。Pt(直径39.5mm)。30m防水。575万円。
文字盤の左側に時分表示を持つランゲ1。これとちょうど線対称のデザインを持つのが、2010年発表の「ランゲ1・デイマティック」である。この時計で一番のトピックは、新型自動巻きの採用だろう。センターローターによる片方向巻き上げを持つキャリバーL021.1は、理論上優れた精度を持つだけでなく、手巻きとほぼ同じ、厚さ6.1㎜に留まった。薄型化に成功した理由は、部品を各部に散らしたためである。文字盤側から見ると、香箱は11時位置にあり、3時位置の時分針を直接駆動している。輪列は7時方向に伸び、中間車を介してスモールセコンドを駆動。アウトサイズデイトの真下には、コンパクトな自動巻き機構が収まっている。大きなサイズを生かした無駄のない設計が、L021.1の特徴と言えそうだ。
併せて意匠にも手が加えられた。最大の違いは直径で、従来のランゲ1に比べて1㎜大きい39.5㎜である。また仔細に見ると、ディテールも異なる。アウトサイズデイトとスモールセコンドは時分表示からわずかに遠ざけられ、相対的に時分表示用のダイアルが小さくなった。グランド・ランゲ1同様、ベゼルも細くなり、薄さを強調するためか、ラグもボクシーで直線を強調したものへと改められた。近年のランゲに共通する、より〝チュートニック〟な意匠。デイマティックの魅力は、ムーブメントはもちろんだが、意匠にこそある。
オリジナルのランゲ1は極めてバランスの取れた意匠を持っている。しかし個人的な意見を言うと、デザインチーフのマルティン・シェッターは、オリジナルの形を生かしつつも、よりメリハリの効いた意匠を与えることに成功したのではないか。あくまで筆者自身の私見と但し書きをした上で述べたい。これこそがランゲ1の完成形である、と。
(左上)ランゲ1に準じた造形の文字盤。しかしインダイアルが若干奥まったほか、ブラックラッカーでプリントされた分インデックスも、より適切な位置に置かれている。既存のランゲ1は、ローマンインデックスと分インデックスの間がややつまり気味だが、このモデルは適正である。(右上)近年のランゲらしく、「直線」を誇張したラグ。しかしサイドの裁ち落とし部を少し太らせることで、立体感を持たせている。細く絞り、同時に立ち上がりの角度を強めたベゼルは、グランド・ランゲ1に同じである。ごくわずかな違いだが、よりクリーンな印象を与えている。(中)ケースサイド。10.4mmと、オリジナルのランゲ1よりわずかに厚い。裏蓋側にローターを持つためか、リュウズの位置が若干上がり、併せてリュウズも大きくなった。比重の重いローターを持つためか、時計全体の重心はランゲ1より低く、装着感はより快適である。(左下)左右が反転した文字盤。アウトサイズデイトと、スモールセコンドが、文字盤外周に移動した結果、相対的に時分表示が小さくなった。より“チュートニック”になったケースに合わせてか、針の形も若干絞られた。ランゲ1との違いはごくわずかだが、与える印象はかなり異なる。(右下)新型自動巻きのCal.L021.1。ローターのアームは弾性のあるベリリウム銅、外周には比重の重いゴールドとプラチナを併用する。緩急針を持たないフリースプラングにより、優れた等時性が期待できよう。テンワの慣性モーメントは17mg・cm2。直径31.6mm、厚さ6.1mm。