カルティエ「タンク」の外装技術の変遷に軸足を置きながら、その歴史を辿る

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タンク フランセーズ LM
1996年発表のタンク フランセーズは、タンク ノーマルを、モダンに改めたモデル。その意匠は、タンクが持つデザインの拡張性を見事に生かし切っている。今なおタンクを代表する傑作だ。自動巻き(Cal.120MC)。SS(縦36.5×横28.15mm)。日常生活防水。65万5000円

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タンク アメリカン LM
カルティエ ニューヨーク製のタンクは、縦長のケースに特徴があった。その意匠を模したのが、タンク アメリカンである。自動巻き(Cal.120MC)。20石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。18KPG(縦45.1×横26.6mm)。日常生活防水。180万円。


 意匠もやはり、かつてのカルティエ ロンドン製のタンクを思わせる。特徴的なのは、フランセーズに比べてやや丸みを帯びたケース。これは60年代にカルティエ ロンドンで製作された時計のデザインに、丸みを帯びたなめらかなものが多かったことから、このフォルムが生まれたといわれている。とはいえ、アングレーズの造形から受ける印象は、31年にカルティエが製作した防水時計「タンク エタンシェ」にも近い。ロレックス「オイスター」に触発されたであろう同モデルは、タンクとしては例外的に、気品がありながらもマッシブなモデルであり、奇しくもその立ち位置は、強靱な自社製ムーブメントを搭載したアングレーズに被っている。イギリス風で、かつ現代の人々が求めるであろうタンク像を、カルティエはデザインとして表現することに成功したといえるだろう。

 もっともカルティエは、現代のデザインソースが何であるかを明示しようとはしないし、今や神話的な存在となったタンクに対しては、それこそがふさわしい態度のように思えてならない。筆者は冒頭で、タンクとは「テクスト」である、と述べた。多様なデザイン要素で構成されたタンクとは、そもそもどのようにも解釈でき、どのような可能性も持てる存在であった。こういった特徴は、新作でも変わらないどころか、いっそう強調されるに至ったのではないか。「伝説の時計 タンク」(フランコ・コローニ)。これほど多彩さに満ちた時計を形容するに、筆者もやはり伝説という言葉しか思いつかない。

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タンク ルイ カルティエ LM
インデックスの形状以外、オリジナルの造形を比較的忠実に受け継いだのが、現行のタンク ルイ カルティエである。LMサイズとしてはかなり小ぶりだが、日本人の腕には馴染むだろう。クォーツ。18KYG(縦33.7×横25.5mm)。日常生活防水。113万円。

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タンク ルイ カルティエ XL
デイト&パワーリザーブ

かつてのコレクション プリヴェ カルティエ パリを思わせるモデル。文字盤にはパワーリザーブとデイト表示を備える。 手巻き(Cal.9753MC)。20石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約40時間。18KPG(縦39.2×横30mm)。日常生活防水。246万円。


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