技術の集大成としての現代インヂュニア総覧
2013年以降の新生インヂュニアを総括するなら、IWCの持つあらゆる技術を見せるニューステージと言えるだろう。「エンジニアのための耐磁時計」から「エンジニアリングを駆使したスポーツウォッチ」への転換。より普遍的なスポーツウォッチ像を模索する、コレクションの全貌を検証する。
右モデルのカラーバリエーション。前作に比べてラグ上面のエッジを落とし、適度な丸みを加えたことで、実際ほどの厚さ(16mm)を感じさせない。自動巻き(Cal.79420)。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約44時間。Ti(直径45mm)。136万円。
レーシング・コレクションに分類されるスプリットセコンド・クロノグラフ。ボリューム感をやや抑えた、新しいケースデザインを採用する。自動巻き(Cal.79420)。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約44時間。Ti(直径45mm)。136万円。
ここで2013年のS.I.H.H.で公開された、新生インヂュニアの概要をまとめておこう。従来の高耐磁時計というプロダクトコンセプトから脱却し、より一般的なスポーツウォッチとしての性格を強めたニューコレクションのイメージを牽引するのが「レーシング・コレクション」。スプリットセコンドを含むクロノグラフ系に加え、IWC初のセンター副時針を備えたGMTモデル、そして4万A/mの耐磁機能を備えたオートマティックモデルがこのラインに含まれる。これらがメルセデスAMGペトロナス フォーミュラ・ワン チームとのオフィシャルパートナーシップに基づく、新生インヂュニアのベーシックラインにあたる。
カーボンケースのカラーバリエーション。こちらはインナーベゼルのミニッツカウンターと、ラバーストラップのステッチが赤。自動巻き(Cal.80110)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約44時間。直径46mm。各色世界限定100本。212万5000円。
1秒脱進式のコンスタントフォース。振り角が維持される約48時間はステップ運針に。ムーンフェイズは“フォト・リアリスティック加工”。手巻き(Cal.94800)。43石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約96時間。Pt×セラミックス(直径46mm)。2969万5000円。
この上位に位置する「パフォーマンス・エンジニアリング・コレクション」は、複雑機構と新素材の、いわば〝実験場〟にあたる。インディペンデントのウォッチメーカーであるジャン-フランソワ・モジョンらが開発に携わった1秒脱進式のコンスタントフォースや、デジタル表示式の永久カレンダーなども、一部にアレンジが加えられて搭載され、また前述したポリッシュド・セラミックスや、超難切削材であるチタンアルミナイド、まったく新しい製法によるカーボンなどのニューケースも、すべてこのラインに含まれる。
新しい耐磁モデルには3カラーが用意される。これはシルバーダイアルに、同じくシルバーのバーインデックスを載せたバリエーション。立体感も良好だ。自動巻き(Cal.30110)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS(直径40mm)。63万5000円。
ケースサイズと厚みを抑えた新しい耐磁モデル。インヂュニアらしい軟鉄製インナーケースを備え、耐磁性能は4万A/m。新たにリュウズガードも追加された。自動巻き(Cal.30110)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS(直径40mm)。63万5000円。
最後はリミテッドエディションとなる「ヘリテイジ・コレクション」。現時点ではクロノグラフ・レーサーのデザインバリエーションのみだが、オールド・レーシングカーのダッシュボードをイメージした、ダイアルのペルラージュ仕上げなどが盛り込まれ、他のコレクションとは異なった雰囲気を楽しめる。
クロノグラフ・レーサーベースの限定コレクション。モデル名はメルセデスのレーシングマシンを呼び習わす“シルバーアロー”の意。自動巻き(Cal.89361)。38石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約68時間。SS(直径45mm)。世界限定1000本。122万円。
セラミックスケースのダイアルバリエーション。ブラックダイアルでは、白い蓄光インデックスを採用する。このモデルもバックケースの一部にチタンを使用。自動巻き(Cal.80110)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約44時間。直径46mm。125万5000円。
IWCが持つ耐磁機構、複雑機構、ケース素材(特に切削技術)に対するアドバンテージを網羅し、過不足なくまとめ上げた新生インヂュニア。それは同社技術の集大成であり、新しいスポーツウォッチの基本形でもある。