TYPE XXII [Ref.3880] 6th Generation Model
積算計の高速運針を盛り込んだ最新現行機
タイプⅩⅩⅠを高振動化したモデル。センターのクロノグラフ秒針は、60秒ではなく30秒で1回転する。この写真の場合、積算時間は21分49秒。7万2000振動/時という超高振動は、精密な積算と、それ以上に機械式クロノグラフらしからぬ超高精度を実現した。従来のモデル同様、すべての積算表示はフライバックが可能だ。自動巻き(Cal.589F)。28石。7万2000振動/時。パワーリザーブ約40時間。SS(直径44mm)。100m防水。218万円。
変則的な30分積算計を持つアエロナバルと、デイト表示を加えたトランスアトランティック。好きな人にとっては個性だろうが、その弱点はブレゲも理解していたようで、2003年にはセンター60分積算計を備えたタイプXXⅠをリリース。ブレゲはこのモデルをさらに改良し、10年には、7万2000振動/時という超高振動を持つ、タイプXXⅡを発表した。これは初代のタイプⅩⅩから数えると、六代目にあたる。
現在、タイプⅩⅩやⅩⅪといった軍用規格は公式には存在しない。そのため各社はタイプⅩⅩやⅩⅪ風のクロノグラフを作るようになった。しかし、その中でタイプⅩⅩに最も忠実なモデルが、ブレゲのタイプXXⅡではないだろうか。
このモデルに関しては、7万2000振動/時という超高振動ばかりが注目される。しかしブレゲは、このモデルでオリジナルへの回帰を目指したのではないか。まず、タイプXXⅡが採用したシリコン製の脱進機と7万2000振動/時。精度向上というアプローチは、タイプⅩⅩが目指した方向性そのままだ。加えて文字盤に刻まれた「レトゥール・アン・ヴォール」(フライバック)の文字と、赤線が加えられた4時位置のプッシュボタンは、この時計の祖がフライバックであったことを強調する。指がかりを良くしたリュウズと、長く伸ばしたファイブミニッツインデックスも、やはりオリジナルを思わせる造形だ。
これはタイプⅩⅩとは似て非なる時計である。機能面とその性能、また時計としての在り方も別物と言ってよい。しかし、この新しいクロノグラフは、そういって差し支えなければタイプⅩⅩの完成形だろう。フライバックであること。そして高精度であること。半世紀前にタイプⅩⅩ規格が目指した理想は、ドダネでもアウリコストでもヴィクサでもなく、結局のところ、ブレゲが実現することになったのである。