TAG HEUER CARRERA CALIBRE HEUER 01 CHRONOGRAPH [2015]
スケルトナイズが施された新しいアイコン
良質な外装に自社製ムーブメントを組み合わせた2015年の新作。「100%マニュファクチュール製のクロノグラフが5000スイスフラン以下というのは、他に類を見ないでしょう」というセモンの説明通り、充実した内容にもかかわらずプライス設定は戦略的だ。自動巻き(Cal.ホイヤー01)。39石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。SS(直径45mm)。10気圧防水。59万5000円。
タグ・ホイヤーの開発方針は、2014年末頃から大きく様変わりした。ハイエンドのオートオルロジュリーコレクションを縮小し、コアな商品群を1500〜4500スイスフランのプライスレンジに集中させると決定したのである。
同社の変化を象徴するのが、15年発表の本機だ。ムーブメントはキャリバー1887にコスメティックチェンジを加えた〝ホイヤー01〟。ケースには、同じLVMHグループに属するウブロの「ビッグ・バン」を思わせるモジュール構造を採用する。数年前からLVMHグループは、自社内にケースメーカーを擁している。複雑な構造のケースを持つホイヤー01は、明らかにその恩恵を受けている。
開発を指揮したのはゼネラルディレクターのギィ・セモン。「2015年の1月にアイデアを思い付き、3月には発表しました」というから、その開発スピードには驚かされる。しかも興味深いことに、これはショートスパンを感じさせないほど練られた製品だった。
先述した通り、複数の部品で構成されるモジュール構造のケースは大変良質である。また見た目を変えただけのムーブメントも、それをほとんど感じさせない。針や文字盤上のインデックスも、以前のタグ・ホイヤーが使っていた〝ダイヤモンドカット風〟ではなく、正真のダイヤカット。ここ10年で、質を大きく高めたタグ・ホイヤー。現時点におけるその集大成が、ホイヤー01と言えよう。
キャリバー1887の出現で本流に立ち返ったカレラは、本作で再び姿を変えた。しかし、常に変化を求めることがカレラの歴史と考えれば、ホイヤー01の在り方も〝同社らしい〟と言えるのではないか。しかもリデザインにあたって、タグ・ホイヤーは賢明にも1970年代の失敗を繰り返さなかった。彼らは内側を大きく抉った、カレラの象徴的なラグの造形を、このモデルに残したのである。
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