TAMBOUR MOON
ケース側面のボリューム感を反転させたニューフォルム
薄型ケースの新定番モデル。立体的な造形を持つが、ケース厚は9.93mmに留まった。そのため取り回しは非常に良好である。自動巻き。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS(直径41.5mm)。50m防水。予価59万8000円。
2017年に新しく加わったのが、ケース側面を大きくえぐった「タンブール ムーン」である。「新しいケースを考えた際に参考にしたのは、車のデザインだった。たとえば今のBMWは、ボディの側面が大きくえぐれている。触発されてケースのプロトタイプを作ったところ、遠目で見たら、ケースが膨らんでいるのか、凹んでいるのか分からなかった。この形ならタンブールの新しいバリエーションになると思った」(シャティ)。まったく違うフォルムながら、タンブールのDNAを色濃く残したタンブール ムーン。ケースが薄くなった結果、装着感も改善された。加えてルイ・ヴィトンはケースの仕上げも改めた。従来はサテンとポリッシュを併用していたが、男性用がサテン、女性用がポリッシュと仕上げの質を別種のものとした。そのために、ケースサプライヤーはまったく新しいツールを開発したという。シャティが胸を張るだけあって、磨きの水準は、既存のタンブールよりもう一段優れている。また、自社工房であるラ ファブリク デュタン ルイ・ヴィトン(LFTLV)で製造されるブラック文字盤も、極めてクォリティが高い。普通、ブラックは塗装で仕上げるが、塗膜の厚みを嫌ったルイ・ヴィトンは、技術的に難しいメッキ仕上げに取り組んできた。メッキだと鮮やかな黒色は出しにくいとされるが、その豊かな色味は、各社が取り組むブラック文字盤の中でも今やトップクラスだろう。しかも膜が薄いため、文字盤の下地に施された繊細な仕上げも良くニュアンスを残している。
2002年以降、着実に進化してきたタンブール。その現時点における完成形が、新ケースのタンブール ムーンとなる。質感やまとまりの良さ、そして他にはないユニークなデザインは、ルイ・ヴィトンという名前がなくとも、手に取るだけの価値を持っている。