シリシウム製の〝グラインダー〟を備えた自動巻きフリーク

フリーク ヴィジョン

フリーク ヴィジョン
2018年初出。イノヴィジョン2 の技術を投入した新世代フリークである。新しい自動巻きと、等時性の高いユリス アンカー脱進機を採用する。自動巻き(Cal. UN-250)。19石。1万8000振動/時 。パワーリザーブ約50時間。18KRG(直径45mm)。30m防水。1103万円。

 2017年に発表された「イノヴィジョン 」は、当時ユリス・ナルダンが持っていたシリシウムテクノロジーをすべて投入した野心作だった。シリシウムで一体成形されたデュアル・コンスタ ント脱進機に、金の錘を埋め込んだシリシウム製のテンワ、極めて巻き上げ効率の高い新しいグラインダー自動巻きなどは、01年以降、フリークの刷新に取り組んできた同社の、いわば集大成といえる。もっとも、イノヴィジョンはあくまでも、フリークとユリス・ナルダンの未来を指し示すプロトタイプでしかなかった。

(左)ファーストモデル同様、時針と一体化された輪列。写真が示すとおり、新しいボックスドーム型サファイヤ風防により、従来のフリークに比べてメカニズムがいっそう明瞭に見えるようになった。
(右)フリーク ヴィジョンで目を惹くのが、極めて大きな、安定化マイクロブレードを備えたシリシウム製のテンワ。慣性を増すために、ニッケル製の錘が固定されている。脱進機は、ユリス・ナルダンが言うところの「コンスタントフォース機能」を持つ、ユリス・ナルダン アンカー脱進機。シリシウム製のアンクルは、一体成形されたバネで保持されており、屈曲するバネの力でテンプを駆動する。

 その技術から生まれた量産品が、19年の「フリーク ヴィジョン」である。複雑なデュアル・コンスタント脱進機こそ採用されなかったが、ショックに強く、慣性の大きいシリシウム製のテンワと、爪で主ゼンマイを巻き上げるグラインダー自動巻きは、そっくり転用された。

 2001年のファーストモデル以降、フリークは主ゼンマイをムーブメントの中心に置いている。従来はムーブメントの裏側全面を主ゼンマイが覆っていたが、イノヴィジョン 2では主ゼンマイが小型化され、自動巻きを重ねることが可能になった。

ケースサイド。中心部に見えるのは、ラバー製のインサートである。工作技術の進歩を反映して、この10年で、フリークの外装は別モノと言えるほどになった。

 新しく開発されたグラインダー自動巻きは、主ゼンマイを中心に持つフリークのメリットを生かしたメカニズムである。中心を肉抜きしたペリフェラルローターの中心部に、内側に向いたシリシウム製の4つの爪を取り付け、それが直接、センターに置かれた主ゼンマイを巻き上げる。ゼンマイを巻き上げるための中間車をほぼ必要としない上、追随性の高いシリシウム製の爪が噛み合うため不動作角が小さい。そのため巻き上げ効率は、一般的な自動巻きに対して2倍も高くなった。

いわばフリークの完成形と言えるフリーク ヴィジョン。兄弟機にあたる「フリークX」同様、ナルダンの今後を担う基幹機だ。

(右)フリークの特徴である、回転ベゼルを固定するためのフラップ。ベゼルには三角形の突起が付いたため、操作性は向上した。また、回す際の感触も、旧作に比べてよりスムースである。(左)フリーク ヴィジョンは、爪で主ゼンマイを巻き上げるグラインダー自動巻きシステムを搭載する。シリコン製の4本の爪が角穴車に噛み合い、ゼンマイを巻き上げる。理論上、その巻き上げ効率は通常の自動巻きの2倍もあるという。

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