伊勢丹新宿店の本館5階 ウォッチに、H.モーザーの直営店がオープンする。年間生産本数は決して多くなく、モデルによってはなかなか実物を見ることのできない同ブランドだが、新店舗には人気モデルや限定モデルなどといった、直営店ならではのラインナップがとりそろえられており、時計愛好家にとって愉悦を覚える空間となっている。
伊勢丹新宿店 本館5階 ウォッチにH.モーザーの直営店がオープン!
マニュファクチュール体制を強みに、独創的な高級腕時計を製造するスイスのブランド、H.モーザー。ムーブメントの脱進機やヒゲゼンマイといった、時計の心臓部にあたる重要なパーツを自社製造できることに加えて、“フュメ”ダイアルやケース、ブレスレットに与えられた丁寧な仕上げなど、ハイレベルな外装の製作技術も有しており、決して知名度は高くないながらも、時計愛好家を中心に人気を集めるブランドである。
そんなH.モーザーの直営店が、2024年3月27日(水)、国内にオープンする。場所は東京都の伊勢丹新宿店 本館5階 ウォッチだ。新店舗は、H.モーザーの世界中の直営店に共通する、ブルーとスレートカラーを基調としたデザインコンセプトを取り入れている。
店舗概要
住所:東京都新宿区新宿3丁目14-1 伊勢丹新宿店 本館5階 ウォッチ
Tel:03-3352-1111(大代表)
営業時間:10時〜20時
店頭には、人気モデルや限定モデルが並ぶ
H.モーザーは“ベリーレア”を標榜するブランドだ。年間生産本数は3000本程度であり、製品が市場に豊富に出回っているわけではない。特に「ストリームライナー」などといった人気モデルや、最新モデルなどは、なかなか実機を見ることができないだろう。
今回オープンする直営店では、そんなH.モーザーの人気モデルや限定モデル、最新モデルを取り扱う。H.モーザー独自の世界観を楽しめる稀少なタイムピースを見るために、時計愛好家はこの直営店に足を運んでみてほしい。
伊勢丹新宿店で取り扱うモデルの一部を紹介しよう。
「エンデバー・チャイニーズカレンダー リミテッドエディション」
自動巻き(Cal.HMC210)。33石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。18KRGケース(直径40mm、厚さ13mm)。3気圧防水。限定100本。予価1142万9000円(税込み)。
23年11月に発表された「エンデバー・チャイニーズカレンダー リミテッドエディション」。ふたつの異なる文化と測定方法を表現した、類まれなコンプリケーションウォッチである。“チャイニーズカレンダー”をモデル名に冠するように、本作は現在一般的に用いられているグレゴリオ暦の月と日付を表示するのみならず、中国の暦である太陰太陽暦の月と日付、そして月の満ち欠けや十二支に至るまで対応し、12年間の修正を不要としたパーペチュアルカレンダーだ。
太陰太陽暦は、29.53日かけて地球を1周する月の周期に基づいており、1カ月が29日または30日となる。太陰暦の1年は平均354.36日であり、太陽暦が365.25日であることに対して、10.88日短い。このずれを解消するために、太陰太陽暦には2〜3年に一度、閏月として13番目の月が設けられるのだが、周期というものがないため、パーペチュアルカレンダーを製造することは極めて難しい。しかし、H.モーザーはパートナーシップを結んでいるムーブメント開発工房のアジェノー社に協力を得て、この複雑機構を完成させた。
非常に複雑な機構を載せているにもかかわらず、ミッドナイトブルーのフュメダイアルはスッキリとミニマルに仕上がっているところに、H.モーザーらしいコンプリケーション製造のノウハウが感じられる。
太陰太陽暦という、パーペチュアルカレンダーとしての表現は不可能だと思われていた機構を実現した自動巻きムーブメントCal.HMC210は、シースルーバックから観賞することができる。一部が肉抜きされた18Kピンクゴールド製のローターの奥からは、H.モーザーらしい手作業によって施されたモーザー・ダブルストライプ装飾が美しいブリッジやテンプがのぞいている。
本作は世界限定100本生産。少量生産されたモデルのうちの1本が伊勢丹新宿店に並ぶというわけだ。
「ストリームライナー・スモールセコンド ブルーエナメル」
手巻き(Cal.HMC 500)。26石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約3日間。SSケース(直径39mm、厚さ10.9mm)。12気圧防水。534万6000円(税込み)。
「ストリームライナー・スモールセコンド ブルーエナメル」もまた、23年11月に発表された新しいモデルだ。ケースとブレスレットが一体型となったフォルムや、スポーツウォッチでありながらもケース、ブレスレットを薄く設計し、かつハイレベルな仕上げを与えることでドレッシーな印象を与えたラグジュアリースポーツウォッチである「ストリームライナー」は、現在H.モーザーで最も注目度の高いコレクションとなっている。なお、この意匠は1920年代から30年代に登場した同名の高速鉄道から着想を得た。ただし、本作は新デザインのケースが採用され、直径39mm、厚さ10.9mmと、小型化されていることが特徴である。
ただ“ラグスポ”のテイストを備えるだけではなく、本コレクションはグラン・フー・エナメルの“フュメ”ダイアルもアイコニックだ。打痕模様を打ち出したダイアルのベースに3色の顔料を使用したこのダイアルは、H.モーザーを特徴付ける要素のひとつである。ブランドやモデル名などといったロゴを持たないミニマルなダイアルは、グラデーションがかった意匠をいっそう引き立てていることが分かる。
搭載するムーブメントは、「H.モーザーが21世紀に開発した中で、最も小さい」という自動巻きCal.HMC500だ。同ブランド初のマイクロローター搭載機であり、小さいながらも優れた巻き上げ効率や、約3日間のパワーリザーブを獲得した。シースルーバックから、アンスラサイトグレーのコーティングが施されたモダンなブリッジやブランドのロゴが施されたマイクロローターなどがのぞき、H.モーザーのムーブメントを存分に楽しむことができる。
「ストリームライナー・フライバッククロノグラフ ブティックエディション」
自動巻き(Cal.HMC907)。55石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。18KRGケース(直径42.3mm、厚さ14.2mm)。12気圧防水。1073万6000円(税込み)。
前述したパーペチュアルカレンダーモデル同様、「ストリームライナー・フライバッククロノグラフ ブティックエディション」もまた、アジェノー社の開発によって成し遂げられたコンプリケーションウォッチだ。本作は特徴的なストリームライナーの中に、フライバック式クロノグラフを搭載させている。しかし一見すると、一般的なクロノグラフとは大きく異なっている。なぜなら現在市場に流通している多くのクロノグラフと異なり、分積算計やスモールセコンドなどを表示させる「インダイアル」を持たないためだ。
一方で、センターには時分針のほか、ふたつの針が搭載されていることが分かる。赤い針がクロノグラフ秒針、そしてこのクロノグラフ秒針と同一の長さとなるシルバーの針が分積算計となっており、文字盤外周に設けられたふたつのトラックで秒、分ともに計測することができるのだ。ミニマルな意匠であるがゆえに、フュメダイアルが際立つ意匠となっているところに、H.モーザーの美学が感じられる。
搭載するムーブメントは、自動巻きCal.HMC 902。自動巻きであるにもかかわらず、シースルーバックからのぞくムーブメントからはローターが見えない。このムーブメントは、ローターがダイアル側に配されているため、まるで手巻きモデルのようにクロノグラフの機構を観賞することができるのだ。本作を所有する、大きな楽しみのひとつとなるであろう。
https://www.webchronos.net/features/105429/
https://www.webchronos.net/news/104516/
https://www.webchronos.net/ranking/90274/