ウォルター・ランゲ 92年の生涯を閉じる

2017.02.15
ウォルター・ランゲ(1924〜2017)
ドレスデン生まれ。故郷にて時計師としての修行を積む。第二次大戦中は戦地へ赴き、終戦が終結した1945年5月に帰還。48年に西側のフォルツハイムに亡命。90年の東西ドイツ再統一とともに再び故郷へ帰還し、A.ランゲ&ゾーネを再興。その発展に尽力する。享年92歳。

 

 SIHH会期中の1月17日に92歳で永眠したウォルター・ランゲ氏。第二次大戦後の東西冷戦の煽りを受け、1845年から続くA.ランゲ&ゾーネは長きにわたって事業の中断を余儀なくされた。しかし、冷戦の終結とともに訪れた東西ドイツ再統一という絶好の好機を得たランゲ氏が、盟友である故ギュンター・ブリュームライン氏とともに、1990年にA.ランゲ&ゾーネを再興したのである。1994年に後のブランドアイコンになる「ランゲ1」をはじめとした新作を発表。以降の同社の快進撃は周知のとおりだ。
 時計師としての教育を受けた彼は、工場の設備などが没収された後も定期的に自身の故郷であるエルツ山地を訪れ、来るべきブランド復興に向けて地域住民と親交を続けた。ブランドの始祖であり、彼の曽祖父であるフェルディナント・アドルフ・ランゲのように、彼もまた、郷里の人々の生活基盤を守りたいと考えていた。
 1990年代という時代に曽祖父だったらどのような時計を作るだろうかと思案しながら、仲間とともに新生A.ランゲ&ゾーネのあるべき姿を模索し続けたランゲ氏にとって、「伝統的な手工芸を基盤にした少量生産の嗜好品」を作るというコンセプトは、自明の理であった。
 その功績が讃えられ、1998年にドイツ・ザクセン州功労勲章、2015年にドイツ連邦共和国功労勲章を授与。経営の第一線から退いた後は、ブランド・アンバサダー、相談役としてブランドのさらなる発展に心血を注いだ。

 博愛の人と呼ばれたウォルター・ランゲ氏の葬儀は1月27日に故郷であるエルツ山地でしめやかに執り行われ、その亡骸は曽祖父たちと同じ墓地に埋葬された。

 

新生A.ランゲ&ゾーネ初の新作コレクションを発表した時の模様。ドレスデンにおける高級宝飾品・高級時計ディーラーの国際的な会合での発表となった。中央がウォルター・ランゲ氏。左は故ギュンター・ブリュームライン氏。右は新生ランゲ「最初の社員」として知られるランゲ・ウーレンGmbH_前代表取締役のハルトムート・クノーテ氏。

 


Contact info: A.ランゲ&ゾーネ Tel.03-4461-8080