ブレゲの技術を結集した「クラシック ダブルトゥールビヨン 5345 “ケ・ド・ロルロージュ”」。今回、18Kローズゴールド製のモデルが発表された。12時間で1回転する「ダブルトゥールビヨン」はもちろんのこと、18Kローズゴールドモデルのために新たにデザインされたギヨシェ彫りやエングレービングも大きな見どころとなっている。
アブラアン-ルイ・ブレゲの偉大な発明に敬意を表して
1801年6月26日は、アブラアン-ルイ・ブレゲがトゥールビヨンの10年間の特許権を取得した日だ。重力と姿勢差が精度に及ぼす影響を克服するために開発されたこの調整機構は、当時画期的なものであったが、その複雑さから、製造には極めて高度な技術が求められた。アブラアン-ルイ・ブレゲが生前に販売したトゥールビヨン搭載機はわずかに35個であることからも、トゥールビヨン製造の困難さがうかがえるだろう。発明者の死後、トゥールビヨンは長らく幻の存在であったが、1983年に時計ブランドとしてのブレゲがトゥールビヨンを腕時計に復活させると、この複雑機構は瞬く間にオート・オルロジュリーの代名詞となっていった。同ブランドにとってトゥールビヨンは天才時計師のスピリットを象徴するテクノロジーであり、マニュファクチュールの職人たちはトゥールビヨンの製造を通して、偉大な先人に敬意を表している。
とりわけ2020年に発表された「クラシック ダブルトゥールビヨン 5345 “ケ・ド・ロルロージュ”」は、ブレゲの時計製造の技術とノウハウを総結集した究極のタイムピースである。今回発表された18Kローズゴールドのモデルは、その最新作となる。
手巻き(Cal.588N2)。81石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約60時間。18KRGケース(直径46mm、厚さ16.8mm)。1億1106万7000円(税込)。
直径46mm、厚さ16.8mmの18Kローズゴールド製ケースに収められた手巻きムーブメントCal.588N2は、740個ものパーツで構成される。このパーツはゴールド製で、目に見えない部分も含めてすべて手作業で研磨され、面取りが施されている。文字盤からはこの時計の魂ともいえる、ふたつのトゥールビヨンの精緻な動きを見ることができる。ふたつのトゥールビヨンを結ぶブリッジは、中央の地板に固定されており、12時間で1回転する。ブリッジの半分はブルースチールで、時針としての役割を担うのだ。
歩度を調整するふたつのトゥールビヨンはそれぞれ独立した香箱と輪列を備え、3つ目の輪列を通して時計全体の回転を司る中央の差動装置に連結されている。ふたつの香箱はブレゲの頭文字のBをかたどったブリッジで覆われており、ここに施されたサテン仕上げの細やかさには目を奪われる。なお、パワーリザーブは約60時間だ。
サファイアクリスタル製の文字盤は、エングレービングされたブルーのローマ数字と分目盛りがまるで宙に浮いているかのような視覚効果をもたらしている。透明のチャプターリンクの下に見える地板には、本作のために新たに生み出された、放射状のギヨシェ彫りが施されている。このフランケは規則的な音波をイメージしてデザインされたという。
この時計の見どころは文字盤側だけではない。時計を裏返すと、ムーブメントのケースバック側に施されたエングレービングの精密さに思わず息を呑む。職人の手作業で、100時間以上もの時間を費やして彫り上げられるデッサンは、パリのシテ島、ケ・ド・ロルロージュ39番(39 Quai de l’Horloge)に位置したアブラアン-ルイ・ブレゲのアトリエを鳥瞰したものである。2020年発売のプラチナ製のモデルにエングレービングされていた、アトリエを正面から捉えたデッサンも魅力的であったが、本作のモデルのエングレービングではさらに、トゥールビヨンが発明された19世紀初頭のパリの空気までをも捉えている。
ストラップには「Breguet」の文字が刻印されたミッドナイトブルーのラバーストラップが採用されている。
時計をアートの領域にまで高めた本作の価格は、税込111,067,000円(2024年6月発表当時)。宝くじの1等でも当てない限り、気軽に手に入れることは難しい金額だが、ムーブメントやエングレービングの複雑さや仕上げの細やかさを考えれば、納得のプライシングと言えるだろう。
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