ユニバーサル・ジュネーブが「ポールルーター」を発表。うち1点をフィリップスオークションに出品

2024.11.15

ユニバーサル・ジュネーブは、1954年にSAS(スカンジナビア航空システム)が北極上空を経由してコペンハーゲンからロサンゼルスまで初飛行してから、今年で70周年になるのを記念し、3つの特別なトリビュート「ポールルーター SAS モデル」を発表した。2026年の、この名門ブランドの復活に先駆けて発表された、3つの特別モデルとは?

ユニバーサル・ジュネーブ ポールルーター

かつてSASは、北極上空を飛ぶパイロットをサポートする正確な腕時計の製作をユニバーサル・ジュネーブに依頼した。1954年11月15日にSASが初飛行したこのフライトは、北極を横断することで、コペンハーゲン-ロサンゼルス間の移動時間を大幅に短縮し、2600kmもの移動距離を削減したのだ。こうして誕生したのが、スタイルと安全性を両立させた象徴的な腕時計「ポールルーター」であった。


若かりし日のジェラルド・ジェンタがデザインした「ポールルーター」

 ユニバーサル・ジュネーブから、3種の「ポールルーター」が発表されている。このモデルは、1954年にSAS(スカンジナビア航空システム)が北極上空を経由してコペンハーゲンからロサンゼルスまでの初飛行を成功させてから、2024年で70周年を迎えたことを記念する、特別な腕時計と言える。

オリジナル ポールルーター

 ポールルーターは、誕生当時はポーラルーターと呼ばれており、若干23歳のジェラルド・ジェンタによってデザインが手掛けられた。なお、本作は彼の名を世に知らしめたデザインである。

 ガラスに固定されたアワーマーカー付きのテンションリングと、ムーブメントを固定するための湾曲した文字盤という、ふたつのパーツからなるデザインによって実現されたその立体的な構成が、ポールルーターの際立った特徴だ。この配置により、1953年にユニバーサル・ジュネーブは特許を取得しただけではなく、技術的にも視覚的にも優れた成果であるとみなされた。

SAS ポールルーター

 170本が生産され、現代のコレクターの間では非常に人気が高いこのコレクション。これらの初期のタイムピースの多くは、SASのパイロットに贈られた。1956年には、ポールルーターは独自の名声を築き、もはやSAS向けに限らず、その名前で広く販売されるようになったのだ。

SAS ポ-ルルーター

 アイコニックなポールルーターの革新的な2分割のダイアル構造は、衝撃、磁気、湿気に強く、極点から赤道までのあらゆる気候に対応するように設計されていた。機能的であるだけでなく、シンプルさのなかに美しさも兼ね備えたこの時計は、前述の通り、ジェラルド・ジェンタによって生み出されている。その後、彼は市場で最も重要な時計デザイナーとなったことは、周知の事実である。


1950年代最薄の“マイクローター”自動巻きムーブメント

 1950年代後半にユニバーサル・ジュネーブは、世界最薄のムーブメント、わずか 4.1mm の「マイクローター」自動巻きキャリバーをポールルーターに搭載させ、いっそうの進化を果たした。一般的な自動巻き時計では、ローターをムーブメントの上に配置したが、このモデルではプレートとブリッジの間にローターを配置することで、薄型であることと、革新的な2日間というパワーリザーブの両立を実現。当時としては独創的かつ画期的なアイデアであったこの改良により、さらなる革新と創造性が促進されたのだった。


類を見ない 3つのトリビュートウォッチの発表へ

 1954年11月15日に達成された歴史的な北極横断フライトから70周年を迎え、航空史とユニバーサル・ジュネーブとの重要な節目を記念して、コペンハーゲンで3つの特別なトリビュートピースがデビューを飾った。このトリビュート作品は、新たにデザインされたケースとオリジナルの「マイクローター」ムーブメントを組み合わせたもので、ユニバーサル・ジュネーブの魅力的な歴史と未来をつなぐ架け橋を表している。

ポールルーター SAS トリビュート

ユニバーサル・ジュネーブ ポールルーター SAS トリビュート

ユニバーサル・ジュネーブ「ポールルーター SAS トリビュート」Ref.JU6910
自動巻き(Cal.1-69/1960年代のオリジナルマイクローター)。1万8000振動/時。パワーリザーブ約57時間。18KWGケース(直径35mm、厚さ9.95mm)。5気圧防水。なお、18KWG製ブレスレット、ローラン・ジョリエ手製フォールディングクラスプ付き。

 3つのトリビュートタイムピースの第1弾は、スカンジナビア航空の鮮やかなシグネチャーブルーの文字盤に、新しいユニバーサル・ジュネーブのロゴと新旧のSASのロゴがあしらわれ、かつ特注デザインのホワイトゴールドのブレスレットを備えたモデルである。この作品は、2025年5月にBacs & Russoと共同でフィリップスのオークションにかけられ、ジュネーブのCFP Artsに寄付される。なお、CFP Artsは応用芸術教育を行っており、時計製造のノウハウに関する重要な知識を後世に伝えることを存在意義としている団体だ。

スイス最後のチェーン職人が作ったブレスレット

ユニバーサル・ジュネーブ ポールルーター SAS トリビュート

 ポールルーターのホワイトゴールド製ケースは、ひねりを加えたラグとケースデザインが象徴的で、独創的であり、タイムレスと言うべき外観を持つ。ユニバーサル・ジュネーブの歴史的なデザインから着想を得たブレスレットは、スイス最後のチェーン職人であるローラン・ジョリエが製作した。

アーカイブになる2作品

 トリビュートコレクションを完結させる残りの2作品は、オリジナルのデザインからインスピレーションを得ており、オートクチュール作品と言えるムーブメントが使われている。フィリップスのオークションに出品される予定の「ポールルーター SAS トリビュート」とは異なり、このふたつのトリビュート ポールルーターは、ユニバーサル・ジュネーブのアーカイブの一部となる。

ユニバーサル・ジュネーブ ポールルーター SAS トリビュート

ユニバーサル・ジュネーブ「ポールルーター SAS トリビュート」Ref.RU6910
自動巻き(Cal.1960年代のオリジナル マイクローター キャリバー 1-69)。1万8000振動/時。パワーリザーブ約57時間。18KRGケース(直径35mm、厚さ9.95mm)。5気圧防水。

 ポールルーター SAS トリビュートウォッチのひとつは、18Kレッドゴールドのケース、同色のインナーベゼル、針をブラックの文字盤を組み合わせたものになる。もうひとつは、ステンレススティール製のケース、シルバーのインナーベゼルと文字盤に、ゴールドプレーテッドの針で構成されている。ブランドロゴの入ったこの文字盤には、ユニバーサル・ジュネーブのロゴと伝統的な SAS のロゴが、印象的なレッドゴールドで配されている。

ユニバーサル・ジュネーブ ポールルーター SAS トリビュート

ユニバーサル・ジュネーブ「ポールルーター SAS トリビュート」Ref.AU6910
自動巻き(Cal.1960年代のオリジナル マイクローター キャリバー 1-69)。1万8000振動/時。パワーリザーブ約57時間。SSケース(直径35mm、厚さ9.95mm)。5気圧防水。


1954年:SASの北極横断初飛行とポールルーター

 そもそも、この1954年のSASの飛行とは、どのような意味があったのだろうか?

スカンジナビア航空(SAS)の北極横断初飛行

 1954年11月15日、SASポールルーターの初飛行では、2機の「ダグラス DC-6B」が、地球の反対側からほぼ同時に離陸している。ポヴル・イェンセン機長率いる「ヘルゲ・バイキング機(SK931)」は、午後7時18分にコペンハーゲンを出発し、スヴェン・ギブソン機長率いる「レイフ・バイキング機(SK932)」はロサンゼルスを離陸した。この旅は、グリーンランドのセンドレ・ストレム・フィヨルドと、カナダのウィニペグというふたつの重要な乗り継ぎの中継地を必要とした。この旅では、デンマーク、スウェーデン、ノルウェーの首相と著名なジャーナリストがロサンゼルス行きの便に搭乗し、外交的にも航空的にも画期的な出来事となったのだ。このような飛行の成功を受けて、SASは1957年に東京、1967年にシンガポールへと北極航路を拡大する。


ポールルーターの、ドレッシーな着用イメージを写真で紹介!

 最後に、着用イメージを含む写真を紹介しよう。シンプルだが存在感がある造形を堪能できるはずだ。

  • ユニバーサル・ジュネーブ ポールルーター SAS トリビュート

  • ユニバーサル・ジュネーブ ポールルーター SAS トリビュート

  • ユニバーサル・ジュネーブ ポールルーター SAS トリビュート

  • ユニバーサル・ジュネーブ ポールルーター SAS トリビュート

  • ユニバーサル・ジュネーブ ポールルーター SAS トリビュート

  • ユニバーサル・ジュネーブ ポールルーター SAS トリビュート

  • ユニバーサル・ジュネーブ ポールルーター SAS トリビュート

  • ユニバーサル・ジュネーブ ポールルーター SAS トリビュート

  • ユニバーサル・ジュネーブ ポールルーター SAS トリビュート

/


ユニバーサル・ジュネーブとは?

ユニバーサル・ジュネーブ

 1894年、ヌーマ=エミーユ・デコームとユリス=ジョルジュ・ペレによって創業されたユニバーサル・ジュネーブは、輝かしい歴史を持つ名高い時計ブランドだ。伝説の時計ニーナ・リントを含め、ポールルーター、コンパックス、トリコンパックスシリーズ、カブリオレといった象徴的なモデルで知られており、その斬新なデザイン、申し分ない職人技術、そして1960年代の広告で「Couturier de la Montre(時計の仕立職人)」と称されたように、その由緒ある伝統の代名詞となっている。

 数十年にわたる休眠期間を経て、ユニバーサル・ジュネーブは、2023年、プライベート・インベストメント・ファームのパートナーズ・グループと CVC キャピタル・パートナーズに買収されたことで、新たな幕開けを迎え、ブランドの復活を遂げた。この再始動により、ユニバーサル・ジュネーブの伝統が守られつつ、新しいマニュファクチュールムーブメント、ブティック、そして印象的な時計デザインを取り入れることになる。ブランドの再起は、コレクターコミュニティとの緊密な連携によって達成された。ユニバーサル・ジュネーブの歩みについて詳しくは、ホームぺージ経由で UG マガジンを購読されたし。


Contact info: https://www.universalgeneve.com/


来たぞ続報! ユニバーサル・ジュネーブが公式WEBサイト公開&新作モデルの情報も?

NEWS

ブライトリングがユニバーサル・ジュネーブを買収! 伝説の名機復活なるか

NEWS

自動巻き機構、何が正解なのか? ブルガリ「オクト フィニッシモ」からマイクロローターとペリフェラルローターを知る

FEATURES