グラスヒュッテ・オリジナルが時計愛好家を引きつける理由を、時計ハカセこと広田雅将が解説!

2024.12.06

グラスヒュッテ・オリジナル ブティック 銀座において、時計専門誌『クロノス日本版』編集長の広田雅将によるトークイベントが開催された。これを機にグラスヒュッテ・オリジナルの魅力を振り返るとともに、イベントでもお披露目された、新作「パノルナ・インバース」にも注目する。


グラスヒュッテ・オリジナル ブティック 銀座でトークイベントを開催!

 去る2024年11月16日、グラスヒュッテ・オリジナル ブティック 銀座において、時計専門誌『クロノス日本版』編集長の広田雅将によるトークイベントが開催された。銀座のランドマークであるニコラス・G・ハイエックセンターの4階に店舗を構える同ブティックは、グラスヒュッテ・オリジナルの世界観を存分に堪能できる、まさに聖地と呼べる場所だ。

 同社の創業地はドイツ・グラスヒュッテ。この地は1845年、フェルディナント・アドルフ・ランゲが時計工房を設立し、時計産業が根付いた土地として知られている。その後のグラスヒュッテには数々の時計関連企業が誕生したが、第2次世界大戦後の1951年にはそれらが国営企業として統合され、GUB(グラスヒュッテ・ウーレンベトリーブ)となる。グラスヒュッテ・オリジナルがブランドとして確立したのは、東西ドイツが統一し、GUBが民営化された1990年からのことだ。

 波乱万丈な歴史をたどったグラスヒュッテ・オリジナルは現在、スウォッチ グループの一員として、ネジ留めのゴールドシャトンやグラスヒュッテストライプ、3/4プレートなど、グラスヒュッテ様式の伝統を守りつつ、創造性に富んだ時計作りを行うブランドとして、コアな時計愛好家から支持を集める存在となっている。

 そんなグラスヒュッテ・オリジナルを、時計ハカセの愛称でも親しまれる広田がマニアックに解説するとあり、イベント会場にはたくさんの時計愛好家が集まった。


グラスヒュッテ・オリジナルって何がすごいの?

Photograph by Shungo Tanaka
イベント会場には、2024年の最新モデルを含む、さまざまなグラスヒュッテ・オリジナルの製品が展示された。また、イベント参加者はタッチ&フィールを楽しむこともできた。

 伝統と革新を体現するグラスヒュッテ・オリジナル。では、同社の魅力は具体的にどのようなところにあるのだろうか。今回広田は、生産体制、機構、外装の3つの面から、この魅力に迫った。

 同社は現代の時計ブランドの中でも、特に純度の高い自社一貫生産を行うマニュファクトリー(マニュファクチュール)である。時計の設計から製造、厳しい最終検査までの一連の工程のほぼすべてを、グラスヒュッテの中心にある工房で完結させることができる。

 マニュファクトリーによって実現したのが、独創性にあふれた設計と、一貫した品質コントロールだ。同社を代表する「パノ」コレクションは、アシンメトリックなレイアウトを基本とし、ムーンフェイズやクロノグラフ、パワーリザーブインジケーターなどの複雑機構、さらにはムーブメントの表裏を反転させたアップサイドダウン構造など、ユニークなデザインを与えられている。この独創的な機構を開発し、なおかつスムーズに動くよう製造し組み立てるには、緻密な連携が可能な自社一貫生産が不可欠だ。また、同社のムーブメントの完成度をさらに一段引き上げているのが、スウォッチ グループ内の技術力だ。特にシリコン製ヒゲゼンマイの採用は、現代の生活における身近な脅威、磁気帯びのリスクを大幅に低減してくれる。

グラスヒュッテ・オリジナルの自動巻きムーブメントCal.90-02。グラスヒュッテストライプや手彫りエングレービングが施されたバランスブリッジ、ダブルスワンネック緩急微調整装置などから、グラスヒュッテ・オリジナルのマニュファクトリーの実力がうかがい知れるだろう。

 優れた外装も同社の魅力のひとつ。中でも注目すべきは、職人の手作業によって完成されるダイアルだろう。同社は、デザインはもちろん、ブランクからの削り出し、そして表面加工を行い、ガルバニックやラッカーなどの仕上げとプリント、最後にインデックスや宝石を取り付けるまでの工程を、自社内で完結させることができる。繊細なサンレイ仕上げや輝く月をたたえたムーンフェイズディスク、安定した発色のひとつひとつからは、まるで職人の息遣いが聞こえてくるかのようだ。


2024年新作「パノルナ・インバース」にも要注目!

グラスヒュッテ・オリジナル パノルナ・インバース 1-91-04-01-03-62

グラスヒュッテ・オリジナル「パノルナ・インバース」Ref.1-91-04-01-03-62
世界限定200本の希少モデル、「パノルナ・インバース」オフセットされたダイアルの中央には、幻想的なムーンフェイズが搭載されている。自動巻き(Cal.91-04)。53石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。Ptケース(直径42mm、厚さ12.46mm)。5気圧防水。世界限定200本。617万1000円(税込み)。

 同社のラインナップは、先述したパノのほか、「セネタ」「スペシャリスト」「ビンテージ」「レディース」と、全5つのコレクションから構成される。今年も同社からは多くの新作が発表され、スペシャリストコレクションの「Sea Q」やビンテージコレクションの「セブンティーズ・クロノグラフ・パノラマデイト」には新色モデル、レディースコレクション「セレナーデ・ルナ」には新ムーブメント搭載モデルが追加されるなど、魅力的な新作が加わった。しかし、中でも注目すべきは、10月に発表されたばかりの「パノルナ・インバース」だ。

 パノコレクションに属する本作は、“ルナ(月)”と“インバース(反対)”の名が示す通り、ムーンフェイズ機構とアップサイドダウン構造を備え、宇宙の無限の広がりを表現している。ギヨシェ装飾とブラックロジウムメッキで仕上げられたプレート上には、オフセットされたダイアルとパノラマデイトが配され、本来はムーブメントの裏側に配されるダブルスワンネック緩急針とチラネジ付きのテンプを鑑賞することができる。

 特筆すべきは、ダイアルの中央に配されたムーンフェイズだろう。濃紺の空を表現したアベンチュリンのディスクに、3Dレーザーエングレービングによって立体的に仕上げられた月が浮かび、幻想的な情景を映し出している。

 プラチナ製のラウンド型ケースは、パノコレクションに共通するクラシカルなデザインだ。上品で柔らかな印象を備えつつ、ラグやベゼルをシャープに仕上げることによって、程よい緊張感を添えている。ケースバックはシースルー仕様。月をあしらったローターと、繊細なギヨシェ装飾が、見る者に至福の時を与えてくれる。

 現在日本にわずか1本しか入荷していない、貴重なこの最新作の実機を、イベント会場で来場客はタッチ&フィールを楽しんだ。

グラスヒュッテ・オリジナル パノルナ・インバース 1-91-04-01-03-62

ダイアルに目を奪われがちだが、ケースバックも必見。歯車は受けによって覆われ、一面に広がるギヨシェ装飾を堪能することができる。



Contact info: グラスヒュッテ・オリジナル ブティック銀座 Tel.03-6254-7266


グラスヒュッテ・オリジナル/パノ Part.1


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