「レ・キャビノティエ・ル・タン・ディヴァン(神聖な時)」シリーズは、時の概念を探究するアート作品のようなシリーズだ。技巧的には、4つの特許で守られた瞬時ダブル・レトログラード表示と2軸アーミラリ・トゥールビヨンを搭載するCal.1990を搭載し、ヴァシュロン・コンスタンタンが誇る複雑時計としての必要条件を完璧に満たしている。美観的には、ギリシャ神話に登場する時間を司るクロノス神の彫金とギヨシェ彫りを組み合わせ装飾を施し、超一流の工芸レベルを見せつける、ふたつのモデルから構成されている。
クロノス神が体現する時
「レ・キャビノティエ・ル・タン・ディヴァン(神聖な時)」は、神話と文化的な時の知覚をテーマとし、資料に基づくアプローチにヴァシュロン・コンスタンタンの時計師と職人たちが命を吹き込む特別なモデルだ。直線的で計測できる概念である時の物理的な観念が、ローマ神話ではサターンにあたり時の分割を権化する女神たちホーライ(時)の父でもある、ギリシャ神話のクロノス神の「姿」によって表現されている。ギリシャ・ローマの伝統に由来した古代神話を想起させることは、メゾンにとって初めてではない。20世紀初頭の数々の作品に表されるように、古代ギリシャの神々や日常を表す場面とともに、ローマのコロッセオなど、これらふたつの文明の最も際立った遺跡と装飾要素は、ヴァシュロン・コンスタンタンの職人たちに頻繁に着想を与えてきた。
キャリバー 1990
クロノス神を想起させるタイムピースに搭載されるCal.1990 は、バージョンによりNACまたはPVD処理が施され、それぞれブラックまたはブルーをまとう。4つの特許で守られたこのムーブメントは、57の複雑機能を搭載し2015年の発表当時世界で最も複雑なタイムピースであった「レ・キャビノティエ」Ref.57260から派生した技術開発を取り入れている。
約60時間のパワーリザーブを備えた手巻きムーブメント、Cal.1990 は、瞬時ダブル・レトログラード時分表示と球体ひげゼンマイを搭載した2軸トゥールビヨンを備える。時計の右側にあるレトログラード表示上では、半円を描くミニッツトラックに時間はローマ数字、分はアラビア数字が添えられ、グレード5のチタン製針により時刻を読み取ることができる。ミニッツトラックは大きなインナーベゼルのみに刻まれ、ムーブメントの一部を鑑賞することができ、レギュレーター仕様の設計により際立つこのタイムピースの技術的なデザインを強調している。
Cal.1990の構造により、文字盤左側にふたつの軸を持つアーミラリ・トゥールビヨンのみ9時位置に配することができ、こちらはドーム型サファイアクリスタルで覆われている。毎時1万8000振動で鼓動するこの調速機構にはスモールセコンドが配され、どちらも60秒に一回転するふたつのアルミニウム製キャリッジを重ね合わせた構造が特徴的である。
トゥールビヨンの中心部には、外端カーブを持たない球体ひげゼンマイを備え、このひげゼンマイは同心を保ちながら完璧に展開することで最上の等時性を保証し、精度をさらに高める。加えて、調速装置の回転により地球の重力が及ぼす影響を補完される利点がある。
彫金とギヨシェ彫りの傑作
ケースの構成部品の表面は、余すことなく彫金職人によって装飾が施される。ギリシャのフリーズから着想を得た幾何学的なモチーフが、ベゼル、巻き上げリュウズ側のミドルケース、ラグとその側面、ラグ間、フォールディングクラスプを飾る。そのためには、ビュラン(彫刻刀)を傾けることで異なる深みと幅の溝を輝く光の中に創り出す、インタリオ技法のひとつタイユ・ド・ジュを用いている。この手法は、溝の幅が 0.2mm 以下の小さな表面に適しており、多様なポリッシュ仕上げ技術を駆使した表面仕上げにより一層際立ってくる。彫金職人が完全な幾何学的モチーフを施す際、時計のラグなどの不均一な表面にモチーフの比率を調整しながら均質の動作を保つことは非常に難しい。
この精密な職人作業に、バ・ルリエフ(浅浮き彫り)で施された手に砂時計を持ったクロノス神が添えられ際立っている。この現実味溢れるマイクロ彫刻はミドルケースの9時位置に配され、背景の空と雲の部分は0.5mm、神の姿とその2つの翼は1mmの深さの素材を削り取って施される。異なったサイズのビュラン(彫刻刀)で繊細に細工され、この立体感はドライポイントによりすべてのディテールを巧みに引き出し、その後表面はポリッシュとサンドブラスト仕上げを施しコントラストを強調する。彫刻職人は作業に総計約290時間以上を費やし、このタイムピースはムーブメントのメインプレートとブリッジに施された手作業によるクル・ド・パリ・パターンのギヨシェ彫りがより際立っている。またケースバックには、ローマの詩人オウィディウスの有名な言葉「Carpe Diem(今を楽しめ)」が記されている。
レ・キャビノティエ・アーミラリ・トゥールビヨン – クロノス神への賛辞 –
ジュネーブシール。レトログラードによる時、分、トゥールビヨン上のスモールセコンド、アーミラリ・トゥールビヨン。アンスラサイト/ダークグレーの表裏側のブリッジは、クルー・ド・パリ・パターン/モチーフを手作業でギヨシェ彫り。サンレイ・サテン仕上げのグレーカラー文字盤。18K(4N)円形サテン仕上げのピンクゴールドのカラーのアワーマーカーとミニッツトラック。時計裏面には« PIÈCE UNIQUE »、« LES CABINOTIERS »の文字と« AC »の紋章が刻印されている。手巻き(Cal.1990)。45石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約60時間。18KPGケース(直径45mm、厚さ20.1mm)。非防水。ユニークピース。価格は要問合せ。
レ・キャビノティエ・アーミラリ・トゥールビヨン – 無限の時への賛辞 –
ジュネーブシール。レトログラードによる時、分、トゥールビヨン上のスモールセコンド、アーミラリ・トゥールビヨン。ブルーカラーの表裏側のブリッジは、幾何学的なモチーフを手作業でギヨシェ彫り。サンレイ・サテン仕上げのブルーカラー、グレーカラーの円形サテン仕上げのアワーマーカーとアンスラサイト/ダークグレーのミニッツトラック。時計裏面には« PIÈCE UNIQUE »、« LES CABINOTIERS »の文字と« AC »紋章が刻印されている。手巻き(Cal.1990)。45石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約60時間。18KWGケース(直径45mm、厚さ20.1mm)。非防水。ユニークピース。価格は要問合せ。