ルイ·ヴィトンは「エスカル オトマティック プラチナ ブルーエナメル」を発表した。このモデルは文字盤にギヨシェ彫りの施したグラン・フー エナメルを採用した、非常に高度で繊細な技法によって作り上げられた腕時計なのである。
自動巻き(Cal. LFT023)。32石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。Ptケース(直径39mm、厚さ8.97mm)。50m防水。世界限定50本。1072万5000円
アルチザンの持ちうる技術の粋を注ぎ込まれたグラン・フー エナメル文字盤
ルイ·ヴィトンは、ウォッチコレクション「エスカル」から新作の限定モデルを発表した。ルイ·ヴィトンの祖業であるトランクに敬意を捧げるコレクション、エスカルにグラン・フー エナメルとギヨシェ彫りを施した「エスカル オトマティック プラチナ ブルーエナメル」だ。伝統技術を誇る職人技の粋が注ぎ込まれた腕時計だ。
なお、この腕時計の文字盤に用いられているグラン·フーエナメルは、シャンルベとフランケの2種類の技法が採用されている。それぞれ異なる分野を専門とする、4人のアルチザンの技が集結したものがこの文字盤だ。なお、製作は複雑で難しいため、この新作のエスカルはわずか50本のみの限定モデルだ。
高度な技法が用いられたギヨシェ彫り
採用された文字盤は金を用いており、装飾技法だけでなく、素材という観点から見ても一級品なのである。その製作は、流し込むエナメルを閉じ込めるための盛り上がった縁を作ることから始まる。その後に手動のローズエンジンを用いてエングレービングを施し、放射状のギヨシェを掘り込むのである。18世紀から受け継がれている技法をふんだんに活用している。
盛り上がった縁とギヨシェの境界は、刻み込むためのローズエンジンが、その縁すぐ近くまで達するようにしなくてはいけないため、特に難しい作業だ。よほどの経験を積んだアルチザンでなくては成し得ない偉業なのである。
表だけでなく裏にも塗布されるエナメル
ギヨシェ装飾が完成した後には、エナメルでの絵付けとなる。エナメルのアルチザンは、まずエナメル顔料の製作から始める。色ガラスを細かく粉砕したものに、水や油を調合して作り上げるのだ。本作のきらめく文字盤を特徴づける、光沢のある透明感と、豊で鮮やかな色合いを実現するためには、顔料は完璧な割合で調合しなくてはならない。そのため、この作業は非常に気を使うものなのである。
調合が済んだのち、文字盤のギヨシェ彫りが施された部分にエナメルを塗りこんでいく。この技法をシャンルべと呼ぶ。なお、目にすることができる文字盤表面だけではなく、裏側にも実はこの技法が用いられている。その理由は焼成時の文字盤の変形を防ぐためだ。これをカウンター エナメルと呼ぶ。カウンターエナメルは淡い色合いのもので、そこには「Guilloché Main, Émail Grand Feu」とエングレービングされている。時計を修理する際に、この文字盤がどのような技法で製作されているのかを伝えるためのものだ。
その後オーブンにて摂氏800度以上にて焼成。エナメルを融解させ、純金製の文字盤ベースと融合する。この焼成による絵付けの過程は文字盤の色味と仕上げが望ましくなるまで、何度も繰り返される。そうしてギヨシェ彫りが半透明のエナメルから透けて見る美しい文字盤が完成する。この手法をフランケエナメルと呼び、19世紀交換から20世紀初頭のヨーロッパでは特に流行した技法だった。
最新技術を用いて文字盤に穴を開ける
文字盤を完璧な鏡面に仕上げるために、ダイヤモンドのペーストを優しく重ねて研磨する。そうしてほぼ完成まで持ち込むのだ。ただし、この後の工程では最新のハイテク技術を採用する必要がある。伝統技法を駆使したこの文字盤に、最先端技術を持ち込むということは、矛盾している印象を与えるだろう。
その理由は、3、6、9、12時位置のアワーインデックスは、このエナメルを用いた文字盤にひとつひとつリベットで留められているからだ。これは実は、時計製作のうえでは前代未聞の偉業なのである。エナメルは、穴を開けるにはあまりにも繊細すぎる素材だからなのである。
ルイ·ヴィトンはその問題解決のために、精密なレーザーを用いて文字盤を焼き切りることで穴を開ける方法を考案した。ひとつのインデックスにつき3つ、合計12もの穴がレーザーで開けられた。こうして、焼成エナメル文字盤の上に、リベット留めされたアワーマーカーを備えた文字盤が完成したのだ。このような文字盤はとても珍しいのである。
針およびケースも一級品
文字盤以外も一級品である。まずは4つのアワーインデックス。その質は手間の掛かった文字盤と十分に釣り合うものだ。インデックスはニードルシェイプの時・分針と同様に、18Kホワイトゴールド製だ。ただし、秒針のみは比較的速く進むという、技術的な観点から軽量なチタンを採用している。また、ケースはトランクのリベットを彷彿とさせるディティールもふくめて、すべてプラチナ製だ。
オリジナルムーブメントCal.LFT023を搭載
サファイアクリスタルを採用したケースバックからは、自動巻きムーブメントCal.LFT023を鑑賞することができる。これは、スイス・ジュネーブのウォッチメイキングアトリエ、ラ·ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトンが、ル・セルクル・デ・オルロジェと協力して開発した、オリジナルのムーブメントだ。なお、ローズゴールド製のプレートには、シリアルナンバーが刻印されている。