タグ・ホイヤー、2025年からF1の公式タイムキーパーにカムバック!

2025.01.07

F1レースの計時で長期にわたり重要な役割を果たしたタグ・ホイヤー。近年は他ブランドが公式タイムキーパーとなっていたが、ついに2025年、その座にカムバックを果たした。タグ・ホイヤーがF1レースで生み出した、数々の「ドラマ」を、順を追って振り返ろう。

タグ・ホイヤー F1

F1で数々の伝説を打ち立てたタグ・ホイヤーが公式タイムキーパーに復帰

 F1(フォーミュラ1)が創設75周年を迎える2025年、タグ・ホイヤーがF1の公式タイムキーパーに復帰した。70年を超えるF1の長く豊かな歴史の中において、2025年は、ラグジュアリー、高精度、革新性、パフォーマンス、そしてスピードを体現する特別なパートナーシップの復活を祝う年となったのである。

タグ・ホイヤー F1

 タグ・ホイヤーは、1969年に高級時計ブランドとして初めてF1マシンにそのロゴを飾った。1971年にF1チームのスポンサーとなると、チームとの提携を通じ、今に至るまでに239勝を飾り、表彰台に上ること613回、9471ポイントを獲得した。

 ワールド・コンストラクターズ・チャンピオンシップに11回、ワールド・ドライバーズ・チャンピオンシップに15回にわたって輝くなど、F1史上最も成功したブランドのひとつに数えられている。

 タグ・ホイヤーとF1のパートナーシップは、精密工学、最先端技術、アヴァンギャルドな素材、正確さ、そして自己ベストをさらに超えていくという、揺るぎないコミットメントにひたむきに打ち込むことにより、モーターレーシングを超えてふたつのアイコニックなブランドが共有する理念を体現している。


タグ・ホイヤーとF1、計時で結びついた強い絆の歴史

 F1の計時と深く結びつき、数多くのドラマの瞬間に貢献したタグ・ホイヤー。だがブランドが創業した当初からモータースポーツと結びついていたわけではなかった。いくつかの決定的「瞬間」を通して、その結びつきは深いものへと変化していったのだ。ブランド設立当初から今にいたるまでを、その「瞬間」を通して振り返ろう。

高精度な計時機器メーカーとして名を馳せる

 1860年創業のタグ・ホイヤー(創業時の名はホイヤー)は、その歴史の早期に計時機器の製造で名声を確立し、1911年には世界初のダッシュボード搭載クロノグラフを発表。1916年に同社が1/100秒の精度を誇る初のストップウォッチ「マイクログラフ」を発表すると、この計器がスポーツでの高精度計時のスタンダードとなった。

 1950年代、F1が黎明期を迎えたころ、ホイヤーは、時間を最も重要視する人々のための時計としてクロノグラフを位置づけ、クロノグラフ機能付「腕時計」を製造することを決定した。

名ドライバーのヨッヘン・リント、タグ・ホイヤーの腕時計を愛用

 ホイヤーがモータースポーツやドライバーたちと本格的に関わるようになったのは、1960年代にF1が人気を博すようになってからだ。

 そしてタグ・ホイヤーがF1とリンクする最初の「瞬間」が訪れる。ヨッヘン・リントというF1ドライバーが、彼のキャリアを通じて「ホイヤー オータヴィア」Ref.2446を着用していたのだ。彼はドライバーズとコンストラクターズのチャンピオンに輝くという、栄光を手にした人物なのである。だが、不運なことに、1970年のイタリアグランプリの練習走行中に帰らぬ人となってしまった。

自動巻きクロノグラフをアンバサダーのジョー・シフェールが着用

タグ・ホイヤー F1

自動巻きクロノグラフCal.11を搭載した「オータヴィア」を着用したジョー・シフェール。この当時、自動巻きクロノグラフの開発をめぐって各ブランド間で熾烈な競争が行われていたのだった。

 次の重要な「瞬間」は、当時のCEO、ジャック・ホイヤーがスイス・フリーブル出身の才能豊かな若きドライバー、ジョー・シフェールに出会った時だ。現在と異なり、当時のホイヤーはファミリーカンパニーであった。

タグ・ホイヤー F1

ジョー・シフェールが運転するロータス49Bの側面には、ホイヤーのロゴが見て取れる。

 ホイヤーがシフェールと結んだ契約はこうだ。1969年のシーズン中に、彼が所属するロブ・ウォーカーチームのロータス49Bにホイヤーのロゴを入れ、レーシングスーツにホイヤーシールドをあしらうというものであった。契約はそれだけではない。当時開発をめぐってメーカー同士で鎬を削っていた自動巻きクロノグラフムーブメントを搭載する、ホワイトダイアルの腕時計、「オータヴィア」Ref.1163を着用するということも含まれていたのである。この腕時計に搭載されるムーブメントが、伝説的Cal.11である。

タグ・ホイヤー F1

(左上)当時のCEOであったジャック・ホイヤー、(左下)ジャック・ホイヤーと、フェラーリなどで活躍したF1ドライバーのクレイ・レガツォーニとジョー・シフェール。(右下)ラリー マスター、(右上)1962年発行のカタログの表紙。

 この時、ホイヤーは、自動車関連企業以外の時計や高級ブランドとして、始めてF1ドライバーのスポンサーとなり、自社のロゴをF1マシンに飾るという快挙を成し遂げたのである。だが、これはジャック・ホイヤーの描く革命的な戦略の始まりに過ぎなかったのだ。

フェラーリの計時を支え数々の勝利に導く

 1971年、フェラーリはイタリア・フィオラーノに、専用のテストコースの建設を開始。このコースのための計時システムをフェラーリは探しており、ホイヤーに白羽の矢が立ったのであった。当時、世界有数の計時機器を製造していたことから、それは当然の成り行きだったといえるだろう。

タグ・ホイヤー F1

電子駆動による計時装置「センチグラフ」。この装置のおかげでレーシングチームは1/1000秒単位で記録することができるようになった。

 そしてホイヤーは「ル・マン・センチグラフ」と呼ばれる新しい装置を開発したのだった。フェラーリチームがこの施設で、ドライバーと新しいマシンによる挑戦の計時を可能としたのである。

 ル・マン・センチグラフは優れた機能だけでホイヤーの名を馳せていたのではない。そのオペレータである、ジャン・カンピチェも有名だった。ピットウォールから独立した計時を行った彼は、モータースポーツの世界で「ピアニスト」と呼ばれる異名を持ち、フェラーリチームとともに、世界中を飛び回り活躍したのだった。

 そしてついに、1975年には伝説的なレーシングドライバー、ニキ・ラウダとともに、フェラーリがドライバーズとコンストラクターズの両方での優勝という栄光に貢献したのである。

 この成功を目の当たりにしたBRM、マクラーレン、サーティースといった他のチームも、同様の計時機器がほしいと熱望するようになったのだった。

マクラーレンと手を組み「タグ・ホイヤー」へ

 ホイヤーとフェラーリの関係は1979年まで続いた。ホイヤーはその後マクラーレンとチームパートナーシップを結び、その長さはF1史上でも有数の長さとなったのだ。その後、1985年を迎えると、ホイヤーはマクラーレンF1チームのオーナーを務めていたテクニーク・ダバンギャルド(TAG)グループの傘下に入ることとなる。こうして、タグ・ホイヤーという新しいブランドが誕生したのだった。

 1986年、マクラーレンはドライバーズでチャンピンシップを制した。この勝利をつかんだアラン・プロストが乗車したマシン、MP4/2Cのフロントガラスには「タグ・ホイヤー」という新たなロゴが輝くことになったのである。

アイルトン・セナの伝説

タグ・ホイヤー F1

数々の偉業を成し遂げたブラジル出身のドライバー、アイルトン・セナ。彼の半生を描くドラマシリーズ「アイルトン・セナ 〜音速の彼方へ」はネットフリックスで公開中だ。

 そして忘れてはいけない「瞬間」が起こったのは1988年である。若く才能にあふれるブラジル人ドライバー、アイルトン・セナがマクラーレンに移籍したのだ。彼は翌シーズンからタグ・ホイヤーの腕時計を着用しレースに参加。3度のF1ドライバーズのチャンピオンに輝いたのである。残念なことに、セナは1994年にこの世を去ることになったが、タグ・ホイヤーと彼の活躍が築いた遺産が消えることはない。

タグ・ホイヤー F1

初代「タグ・ホイヤー フォーミュラ1」の広告。ケースにグラスファイバーを採用した、カラフルで革新的な腕時計だった。

F1の公式タイムキーパーへ

 1992年、タグ・ホイヤーはF1の公式タイムキーパーとなった。その卓越したノウハウを駆使し、このスポーツにおける計時の精度と信頼性をさらに向上させたのだった。データの収集と処理を用いることで、タグ・ホイヤーの計時システムが、テレビでF1レースを視聴するファンに新たなエンターティメントを提供したのであった。レースの映像中に映るタグ・ホイヤーのロゴが、このスポーツを象徴するビジュアルとなったのである。

タグ・ホイヤーが貢献したマクラーレンの活躍

タグ・ホイヤー F1

ミカ・ハッキネンはフィンランド出身のレーシングドライバーであり、ロータスを経て1993年にマクラーレンに所属。1997年と1998年に二度の優勝を果たした人物である。

 世紀末、そして2000年代にかけての、タグ・ホイヤーがサポートしたマクラーレンの活躍を紹介しよう。21世紀直前の1997年と1998年には、ミカ・ハッキネンの活躍により2年連続してドライバーズ・チャンピオンを制覇した。

タグ・ホイヤー F1

タグ・ホイヤー「タグ・ホイヤー 6000シリーズ ミカ・ハッキネン リミテッドエディション」Ref.CH1114
ミカ・ハッキネンの2連勝を記念して製作された腕時計。写真のものはブラックダイアルだが、ホワイトダイアルのものもラインナップに加えられていた。クォーツ(ETA Cal.251.262)。SSケース(直径41mm)。

 なお、2000年代は、V10エンジンからV8エンジンへの移行、メイドライバーたちの熾烈なライバル争いなど、激動の時代を迎えていたのである。

タグ・ホイヤー F1

タグ・ホイヤー「タグ・ホイヤー フォーミュラ1 クロノグラフ」Ref.CAH1113.BT0714
第4世代の「タグ・ホイヤー フォーミュラ1」のクロノグラフモデル。デザインは2003年に発表された第3世代を進化させたものであり、クロノグラフモデルにおいては、6時位置の大型レジスターがシルバーのリングで縁取られている点が特徴的だった。クォーツ(ETA Cal.G10.711)。SSケース。

レッドブルとの共闘

タグ・ホイヤー F1

2021年優勝時の写真。写真中央のマックス・フェルスタッペンとチームメイトが優勝のよろこびを分かち合っている。

 2015年、タグ・ホイヤーは数多くの成功を収めたマクラーレンとの30年にわたる協力関係に終止符を打った。そして2016年からは短期間のうちに目覚ましい功績を残したチーム、オラクル・レッドブル・レーシングと手を組むことになったのだ。

 このチームに属するマックス・フェルスタッペンの活躍により、4度のドライバーズ・チャンピオンシップ、2年連続でのコンストラクターズ・チャンピオンシップ制覇という快挙をもたらした。なお、タグ・ホイヤーと同チームのパートナーシップは、タグ・ホイヤーがF1の公式タイムキーパーも務めつつ継続される。


2025年、F1は世界中で人気沸騰中!

 2025年現在、F1はアメリカ合衆国のメディアコングロマリットであるリバティ・メディアの傘下にあり、文化的な意義が高く、成功を収めているスポーツイベントのひとつとなったのだ。世界中に約7億5000万人のファンがおり、その支持層は多様化し、現在ではそのうちの42%が女性であり、3人にひとりが35歳以下だ。

 15億人の視聴者が釘付けとなった2024のレースではマクラーレンとフェラーリが激しいバトルを繰り広げ、コントラクターズの優勝チームは、最終戦のアブダビまで決まらなかったのだった。


関係者の声

 モーターレーシングの計時において重要な歴史を誇るタグ・ホイヤーは、2025年からふたたびF1の公式タイムキーパーとなったことに心を躍らせているのである。関係者の言葉を紹介しよう。

タグ・ホイヤーCEOアントワーヌ・パン

 タグ・ホイヤーの現CEOであるアントワーヌ・パンは、以下のように語る。

「精神的な粘り強さ、強靭な肉体、戦略、イノベーション、パフォーマンスによって特徴づけられるF1というスポーツにおいて、タグ・ホイヤーが公式タイムキーパーとしてF1の中心的役割を果たすのは当然のことです。数十年にわたりF1の歴史に深く関わり、数々の伝説のドライバーやチームと共に歩んできた私たちにとって、自分たちが『時間』によって勝者を決定づける存在であることを大変光栄に思います。F1とそこに参戦する卓越したチームが、スポーツ界で最も偉大な財産のひとつを作り上げるために行ってきた素晴らしい活躍をさらに発展させていく旅路に私たちも参加することで、タグ・ホイヤーをより豊かなものにする新たなストーリーを創造できることを楽しみにしています」

F1会長兼CEOステファノ・ドメニカリ

 そして、F1の会長でありCEOのステファノ・ドメニカリは、タグ・ホイヤーが計時に返り咲いたことに対してこのように述べたのだ。

「何十年もの間F1の代名詞であり、過去と現在の伝説を連想させる名前を持ち、モータースポーツにまつわる様々なストーリーを語り継ぎ、私たちの価値観を完全な形で受け入れてくれるブランドをパートナーに持てることは素晴らしいことです。革新性、正確性、卓越性を重視するタグ・ホイヤーは、F1の公式タイムキーパーとして理想的なパートナーです。F1が創設75周年を迎えるにあたり、私たちの交錯する伝統と歴史が、未来に向けてどのように新たなストーリーを紡いでいくのかとても楽しみです」


Contact info: LVMH ウォッチ・ジュエリー ジャパン タグ・ホイヤー Tel.03-5635-7054


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