全長60mmのエナメル仕上げのゴールドで作られ、真珠とルビーで飾られたかえるは、まるで本物のような造形だ。数回飛び跳ねた後に止まって鳴き、また再び何度か飛び跳ねてみせる。
古い時計の修復師からキャリアをスタートさせたミシェル・パルミジャーニは、1996年にパルミジャーニ・フルリエを創業。その際、同ブランドは歴史的なタイムピースのレストアを行う修復部門を核として構築されている。そして今回、そんなブランドの神髄とも言える、モーリス・イブ=サンドコレクションの小さな3体のオートマタ(機械人形)の修復が、ミシェル・パルミジャーニによって行われた。
レストア作業において、パルミジャーニと修復のチームが重視するのは、徹底した調査を行って作品やそれが作られた時代について、よく理解すること。その上で作品の保存状態と機能を確実に保つことだ。修復対象である過去の傑作を研究し尽くすことで、あらゆる時代の時計師が取り組んできた機械的、技術的な課題を再確認し、独自の解決策を導き出す。そして修復の過程で得られた知見は、同ブランドのモデルに使用される機構や素材のインスピレーションの源となっている。
扱うほとんどがユニークピースである修復師の作業は、詳細が明らかになっていない作品を、数日かけてじっくりと観察し、作品を分解する前に、関連する文献や、類似の作品から情報を収集することから始まる。
また、内部機構についてだけでなく、貴金属の細工、エナメル仕上げ、彫金、箔置き、ガラス細工など多くの技術に精通している必要がある。
加えて、時間と根気のいる汚れを取り除く作業も欠かせない。その結果、今まで隠れていた文字などの新たな秘密が明らかになることもあるためだ。修復対象の組み立ての際は、今後も修復が可能になる手法を採用し、なおかつ元の状態を変えないことが前提となる。
19世紀初めにかえるを模してつくられたこのオートマトンは、モーリス・イブ=サンドコレクションのひとつで、同コレクションに含まれるほかふたつの動物型オートマタ(かいこ、白ねずみ)も、同じ手順でミシェル・パルミジャーニによって修復された。これらは、金に真珠や宝石を使って装飾され、動物の動作を忠実に再現している。
モーリス・イブ=サンドコレクション3体の動画
モーリス・イブ=サンドコレクション「かえる」
モーリス・イブ=サンドコレクション「かいこ」
モーリス・イブ=サンドコレクション「白ねずみ」