H.モーザーは、2020年の新作として「ベンチャー・コンセプト ベンタブラック® ブラックハンズ」2種と「エンデバー・トゥールビヨン ベンタブラック® ブラックハンズ」を発売する。“世界で最高クラスに黒い物質”であるVantablack®をダイアルに使用し、さらにブラックの針を採用したこれらのモデルは、昨年のエイプリルフールのジョークを実現化させたものである。
H.モーザーが“嘘”を誠に変える
2019年のエイプリルフール、H.モーザーはSNSにとある時計の画像を投稿した。漆黒のダイアルに同色の針を組み合わせたそれは、もはや時刻を確認することなど困難なものであった。しかしこれは、ジョークであったにもかかわらず大きな反響を呼び、ファンからの要望が殺到することとなる。
手巻き(Cal.HMC 327)。29石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約72時間。18KWG(直径39.0mm、厚さ 11.9mm)。295万円(税別)。
それに応えるかたちで誕生したのが、ふたつのサイズが用意された「ベンチャー・コンセプト ベンタブラック® ブラックハンズ」と「エンデバー・トゥールビヨン ベンタブラック® ブラックハンズ」である。現在経営を担う名門時計一族メイラン家のひとり、ジョージ・ヘンリー・メイランは、「あなたが単に時刻を知るためのものを買いたいとしたら、私たちの顧客ではないということになります」と語っている。同社は自社の顧客がどのような趣向を持つか、正確に把握していたのだろう。そしてファンの声に真摯に耳を傾け、その要望を現実のものとしてしまった。
手巻き(Cal.HMC 327)。29石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約72時間。SS(直径43.0mm、厚さ 11.9mm)。290万円(税別)。
これらのモデルに採用されているVantablack®とは、世界で最高クラスに黒いと言われている物質であり、主に天文物理学や軍事の分野で使われている。人間の髪の毛の1万分の1という極めて微細なカーボンナノチューブ(筒状炭素分子)で構成されたVantablack®は、衝撃や振動への耐性はあるものの非常にデリケートなため、ダイアルに使用するためには特殊な加工を開発する必要があった。ブラックの針は普段ダイアルのブラックに隠され、遠目から視認することは難しいが、ユーザーが手首を傾けたその一瞬だけ、囁くように時を告げる。その真の魅力は、実際に所有した者でなければ味わうことができないだろう。
H.モーザーによるユーザーの要望に根差した製品開発は、同社のファンに寄り添う姿勢が実現させたものであるといえるだろう。
6時位置のトゥールビヨンが虚空に浮かんでいるように見える。ダイアルと針は共にブラックであるが、並外れた黒さのVantablack®に針が埋没し、まったく見えなくなってしまうということはない。自動巻き(Cal.HMC 804)。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。SS+ブラックDLC(直径42.0mm、厚さ 11.6mm)。世界限定50本。840万円(税別)。
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