東京・上野の国立科学博物館では現在「時の記念日100周年企画展『時』展覧会2020」が開催中だ。これに連動して兵庫県明石市立天文科学館でも7月12日(日)まで「時の記念日100周年『時』展覧会2020 in 明石」が行われている。国立科学博物館と同一のパネル展示を行い、「1920年の『時』展覧会と『時の記念日』の誕生」、日本の時計メーカーの始まりから現在までを伝える「日本における時計100年の技術の進歩」、情報通信研究機構(NICT)や山口大学時間学研究所などの監修による「日本標準時や時間に関する最先端研究」といった構成を展開する。「時間」を軸に連携を取る事業は「時の記念日100周年」という節目ならではの機会だ。東京まで足を運ぶことが難しい方も多い時期であり、関西圏などの方はこちらへ出掛けてみてはいかがだろうか。
「『時』展覧会2020」、構想のはじまりは明石で行われた「時の展覧会2010」
時の記念日100周年事業として行われている「『時』展覧会2020」、そのはじまりは明石市立天文科学館で10年前に行われた「時の展覧会2010」に遡ることができる。この事業を機に同館館長の井上毅氏は大正期の「時」展覧会の資料調査を始めた。展覧会終了終も井上氏は調査を継続し、のちに国立科学博物館名誉研究員の佐々木勝浩氏と協力体制をとることになる。佐々木氏もかねてより大正期の「時」展覧会の資料を収集し、科学技術発達史、博物館学の視点から論考を行っていた。ふたりは調査の成果として2015年に論文を書き、大正期の「時」展覧会の出品物や、展覧会開催がもたらした社会的影響について発表した。またそれまでの調査で見つかった資料数は実際の約10分の1であるとして、調査継続への意思を述べるとともに、史料保存の重要性を伝えた。
大正時代の「時」展覧会を伝えるパネル展示の一例
大正期の「時」展覧会は約22万人が訪れるほどの盛況ぶりであり、会期の延長や臨時の駅停車場設置といった措置が取られるほどであった。のちに重要文化財指定を受けることになる田中久重の「万年時計」や渋川春海の「天球儀」といった科学技術に関する実物資料をはじめ、社会生活上の時間割りや時と自然など、一般の人々にとって身近で興味をひきやすい話題のパネルも多く展示に含まれたことが成功の呼び水となった。これらの着眼点は100年後の現在でも興味深いものである。
日本標準時子午線上に建つ明石市立天文科学館
1960年6月10日に開館した明石市立天文科学館は、開館当時に日本でまだ珍しいものだったドイツ民主共和国(東ドイツ)のカールツァイス・イエナ社製のプラネタリウムを開館時より導入するなど、早期より宇宙や天文学の魅力を市民向けに伝えてきた科学館のひとつだ。また東経135度の日本標準時子午線上に建つ科学館として「時と宇宙」をテーマに多くの展開を行ってきた。時計関連資料としても、日時計、砂時計、ロウソク時計といった機械時計誕生以前の時計や和時計といった古い史料のほか、時計原理模型や原子時計などを常設展示している。
また、館のシンボルでもある塔頂54mの高度にある時計塔は、開館当時より服部時計店(現セイコー)から水晶式親時計などの寄贈を受けているものだ。阪神淡路大震災などを経て、現在は3代目である。
明石市立天文科学館は時計ファンも楽しむことができる天文科学館だ。
「時の記念日100周年『時』展覧会2020 in 明石」
日程/2020年6月2日(火)~7月12日(日) ※月曜日、第2火曜日、年末年始は休館
時間/午前9時30分~午後5時(入館できるのは午後4時30分まで)
住所/兵庫県明石市人丸町2-6
入場料/常設展示入館料に含まれる(一般・大学生700円、高校生以下無料)
主催/国立科学博物館、明石市立天文科学館、日本時計協会
協力/情報通信研究機構、カシオ計算機、シチズン時計、セイコーウオッチ、セイコーエプソン、セイコークロック、セイコーミュージアム、リズム時計、日本時間学会、山口大学時間学研究所
資料協力/海上保安庁、国立天文台、郵政博物館
後援/神戸新聞社
明石市立天文科学館 公式ウェブサイト http://www.am12.jp/index.html
https://www.webchronos.net/news/47269/
https://www.webchronos.net/features/47368/
https://www.webchronos.net/features/47542/
https://www.webchronos.net/features/47568/