2020年の新作のハイライトとして、ブレゲは新しい「クラシック ダブルトゥールビヨン 5345 “ケ・ド・ロルロージュ”」を発表した。中央のディファレンシャルギアを通じてダイヤル・プレート自体を回転させるというダブルトゥールビヨンのムーブメント機構が完全に露わになり、複雑な機構と絶妙なアートワークが見事に融合されている。部品はすべて手作業で仕上げが施され、ケースバックから見えるムーブメントには、アブラアン-ルイ・ブレゲが生涯を過ごしたパリの建物 “ケ・ド・ロルロージュ”のメゾンがエングレービングされている。
ゴールド製のムーブメント
繊細に構築された彫刻作品を思わせるムーブメントは、全体を露に見せながら、軸の回りを12時間で1回転する。ムーブメントには、それぞれ1分で1回転する二つの独立したトゥールビヨンが搭載されている。こうした仕組みで調速装置が相互に連動する二重の回転を成し、トゥールビヨンのブリッジ自体が時針の役割を果たしている。ムーブメントを構成する部品が、かつてのグランド・コンプリケーションのようにゴールドで作られているのも特色である。今ではすっかり失われた伝統だが、ブレゲはメゾンに今後も継承されるように努めている。なぜならゴールドの部品を作るのは、まさしく時計職人の高度な技術の証明だからだ。
手巻き(Cal.588N)。81石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約50時間。Ptケース(直径46mm、厚さ16.8mm)。3気圧防水。6880万円(税別)。※2020年10月現在の価格です。
何世紀もの時を永らえた発明=トゥールビヨン
19世紀の懐中時計は、縦の姿勢、すなわち垂直の状態でベストのポケットに収めて携行されていたが、ブレゲが発明に努めたていたのは、時計の等時性を乱す地球の重力の影響を排除する装置だった。そこで彼がたどりついたのは、ひげゼンマイ付きテンプと脱進機(レバーとガンギ車)の一式を可動式の枠に格納し、それを回転させるという考えだった。アブラアン-ルイ・ブレゲは、このキャリッジと脱進機の二つが回転する仕組みに対し、天体系の概念を結びつけて「トゥールビヨン」の名を与えたのは、1801年のことだ。原理は天才的でその働きも魅力的なこの発明は、特別なオリジナリティを付与されながら、メゾン・ブレゲに大切に受け継がれている。
巧妙なメカニズム
二つのトゥールビヨンは、それぞれの香箱から動力を得て互いに独立して稼動するが、二つのテンプは、中央の差動装置の中で回転するペアになった第二の歯車に連結されている。この複式の機構はまた、各トゥールビヨンの歩度の平均を決定することができ、トゥールビヨンを載せたプレートが12 時間毎に1 周するように設計されている。分針は、中央に軸を置くクラシカルな表示スタイルだ。時刻表示が完璧に正しく行われるように、この装置全体には歯車の遊びを最小限に抑えるシステムが備わっている。
芸術的な職人技
それにも増してこのモデルのユニークな特徴は、ケースバックに表れている。この時計の美的な感動を完成させたのは、ブレゲ・マニュファクチュールの職人によって施された非常に細やかなエングレービングで、アブラアン-ルイ・ブレゲが1775年から居を構えたパリのケ・ド・ロルロージュ39番地の建物のファサードが描かれている。ゴールドの上に彫られたモチーフは、建物の窓ガラス越しにムーブメントの歯車が垣間見られるようにするなど、凝ったディテールが豊富に盛り込まれている。
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