2021年8月30日から開催される「ジュネーブ ウォッチデイズ 2021」。H.モーザーは、新作の「ストリームライナー・パーペチュアルカレンダー」をリリースした。これは、同社のアイコンであるシンプルな永久カレンダームーブメントを、人気のストリームライナーケースに収めたものだ。
スポーティな外観と調和する永久カレンダー
H.モーザーのパーペチュアルカレンダーであるCal.HMC 341は、他社のものと異なり極めてシンプルな見た目を持つ。12ヶ月表示を文字盤の中心から出る針に置き換えたほか、あえて曜日表示を省き、うるう年表示をムーブメント側に移動させた結果、普通の日付表示の時計にほぼ変わりない見た目を持つ。基本設計を行ったのは、かのアンドレアス・ストレーラー(!)。『クロノス日本版』では、この極めてシンプルな永久カレンダーを、H.モーザーの傑作とみなしてきた。事実、操作性や視認性、使い勝手は極めて良い。
もっとも、初期のH.モーザー同様、このCal.HMC 341にはマイナートラブルがあった。対して社長に就任したエドゥアルド・メイラン氏は、まず大幅な改良を指示。今やH.モーザーのパーペチュアルカレンダーは、際立った安定性を持つに至った。
手巻き(Cal.HMC 812)。33石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約168時間。SSケース(直径42.3mm、厚さ11mm)。12気圧防水。687万5000円(税込み)。2021年秋発売予定。
今回は、このCal.HMC 341の仕上げを変え、センターセコンドに変更した上で、ブレスレットとケースを一体化したストリームライナーに搭載した。ムーブメント名はCal.HMC 812。このムーブメントの基本的な機能は、今までのCal.HMC 341に同じ。しかし、スモールセコンドからセンターセコンドに変更された。3番車を2枚重ねにして、中心の秒カナを回すという古典的な「インダイレクトセンターセコンド」方式は、もともと古典的な見た目を持つH.モーザーのパーペチュアルムーブメントに、一層クラシカルな装いを与えた。
もっとも、ただのクラシックにしなかったのは今のH.モーザーだ。受けや輪列にはアンスラサイトグレーのPVDコーティングを、地板にはマイクロブラスト加工を施した上で、アンスラサイトのロジウムメッキを施している。単一の仕上げにしなかったのは、ムーブメントに立体感を与える試みか。H.モーザーらしい大ぶりな穴石が、グレーの地板や受けによく映える。
なお、このムーブメントは手巻きである。普通、手巻きにパーペチュアルカレンダーを載せるのは禁忌とされるが、Cal.HMC 812のパワーリザーブは最低7日間、実際は約10日ほどある。これだけパワーリザーブが長ければ、ゼンマイが解けて永久カレンダーが止まる心配は少ないだろう。また、日付を逆戻しできるのも、この永久カレンダーの大きな美点だ。
ブレスレットと一体化させたストリームライナーの造形は従来に同じ。先端に発光素材のグロボライトを用いた時分針も同様である。文字盤は、グレーの「シグネチャーフュメ」。実物を見たわけではないが、インデックスや針とのコントラストは高いだろう。また、あくまで予想だが、表面にはつや消しのラッカーを軽く吹いてあるはずだ。つや消しのラッカーを吹くとわかりやすい高級感はなくなるが、H.モーザーの文字盤は、つや消しの処理もうまい。おそらくは、視認性と高級感をうまく両立させたものであるはずだ。
喜ばしいことに、このパーペチュアルは非限定だ。正直価格は安くないが、使い勝手の良いパーペチュアルに、優れた外装の仕上げなどは、かなり魅力的であるはずだ。
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