ISHIDA表参道限定で販売されたモリッツ・グロスマン「ベヌー37 ISHIDA LIMITED」の魅力

2021.10.12

モリッツ・グロスマンとISHIDA表参道のコラボレーションモデル「ベヌー37 ISHIDA LIMITED」の魅力を探る。同作はシルバーフリクションダイアルと37mm径のSSケースを採用したモデルだ。

ベヌー37 ISHIDA LIMITED

Photographs by Takeshi Hoshi(estrellas)
モリッツ・グロスマン「ベヌー37 ISHIDA LIMITED」
3本が販売されたISHIDA限定モデル。37mm径ケースとオリジナルベヌーフォントのダイアルという、現行ラインナップには存在しない組み合わせを持つ。限定モデルのためだけにこのような文字盤を用意できるのは、文字盤を自製できるモリッツ・グロスマンならではだ。手巻き(Cal.102.1)。22石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約48時間。SS(直径37mm、厚さ9.2mm)。限定3本(すべて成約済み)。


日本人のツボを抑えたISHIDA限定

 ドイツの独立系ブランド、モリッツ・グロスマンの魅力と言えば堅牢な設計と美しい仕上げを兼ね備えたムーブメントや自社で製造する針、手の込んだダイアルなど多岐にわたる。そして日本市場の場合、これらの要素に加えて、日本人の好みに併せた“ジャパン・リミテッド”の存在も大きい。

 モリッツ・グロスマンの日本限定には、これまでもいくつかの名作が誕生しているが、特に今年「ISHIDA表参道」限定で3本が販売された「ベヌー37 ISHIDA LIMITED」は愛好家のツボを抑えたモデルだった。

 まず、ケースは日本人の腕のサイズを考慮して37mm径をチョイス。さらに素材はこのサイズでは現行モデルでラインナップのないステンレススティールだ。また、SSケースモデルには仕上げを簡素にしたムーブメントが組み合わされることもあるが、本作はハイフィニッシュ、つまり豪華な仕上げを持つ。

 更にいうと、受けの仕上げはストライプ仕上げから梨地仕上げに変更されている。ムーブメント受けの梨地仕上げは19世紀のモリッツ・グロスマン製懐中時計でよく見られた組み合わせということもあり、ISHIDAが今回の限定モデルで最も力を入れた点だ。

Cal.102.1

「ベヌー37 ISHIDA LIMITED」に搭載されるCal.102.1。本来はテフヌート用に設計されたムーブメントで、仕上げにはいわゆる“ハイフィニッシュ”が施される。手彫りによる筆記体のブランドロゴはモリッツ・グロスマン側からの提案だ。

 これだけでも特別感の強い構成だが、最大の見所はシルバーフリクションダイアルを採用している点だ。これは19世紀のコーティング技法で、銀の粒子と塩、そして水によって作られたペーストをブラシで文字盤に擦り込んでいくというもの。ダイアル表面に独特の“荒れ”を与える同手法は、モリッツ・グロスマンでは2020年末に発表された創立12周年モデルから使用されるようになったばかりだ。

 12周年モデルがSSと18KRGモデルの計12本のみであることを強調するまでもなく、手作業によってコーティングが施されるシルバーフリクションダイアルは手間とコストが掛かる手法である。そんなシルバーフリクションダイアルをたった3本というロットで、それも特定店舗の限定モデルに採用されたことは快挙と言えるだろう。ISHIDAがモリッツ・グロスマン本社から絶大な信頼を得ているのかが、よく伝わってくる。

 日本の通好みの仕様を持ったベヌー37 ISHIDA LIMITEDは既に3本が成約済みとなっているが、ISHIDAとモリッツ・グロスマンの関係性を考えれば、コラボレーション第2弾の登場も十分に期待できるはずだ。

鈴木一弘

今回の「ベヌー37 ISHIDA LIMITED」を企画したISHIDA表参道の鈴木一弘店長。今回の限定モデルでは、“不死鳥”を名前の由来に持ち、モリッツ・グロスマン復活の象徴として親しまれた初代「ベヌー」へのオマージュをコンセプトにしたと語る。


Contact info: ISHIDA表参道 Tel.03-5785-3600


ブランド創立12周年を記念したモリッツ・グロスマン「Ⅻ バースデーエディション」

https://www.webchronos.net/news/55822/
古典的なダイアルを採用したモリッツ・グロスマン「ハマティック・ヴィンテージ」の新作を発表

https://www.webchronos.net/news/68734/