最高額は11億円越え。オンリーウォッチ 2021で驚きの結果を残したユニークピースとは？

世界が注目するチャリティーオークション「オンリーウォッチ 2021」が、2021年11月6日（土）にジュネーブで開催された。例年にも増して高額の入札が相次ぎ、1億円をはるかに超える多くの落札結果が見られた。今回は、特に注目したい11本を紹介する。

落札予想価格を大幅に超えるユニークピースの数々

　隔年開催のチャリティーオークション「オンリーウォッチ」。50を超える時計ブランドが、指定難病のひとつであるデュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療研究に賛同し、世界に1本しか存在しないユニークピースを製作する。名だたる有名ブランドから独立系メゾンまでが手掛ける、極めて稀少なモデルが手に入る機会とだけあって、回を重ねるごとに世界中の時計愛好家やコレクターからの目線は熱くなる一方だ。

　2021年は11月6日（土）に開催され、数々の驚くべき結果を残した。事前に公表される落札予想価格をはるかに上回る、1億円オーバーの高額落札が相次いだことからも、オンリーウォッチの注目度の高さがうかがえる。ここからは、計53の出品モデルの中でも特に注目すべき11本のユニークピースを紹介する。

LOT41／パテック フィリップ「コンプリケーテッド・デスククロック」

　1923年、パテック フィリップがアメリカの自動車王ジェームズ・ウォード・パッカードに収めたとされる、歴史的に希少なデスククロックをモチーフにした「コンプリケーテッド・デスククロック」。950万スイスフラン（約11億7725万円）という、オンリーウォッチ 2021に出品された53モデルの中で最高落札額を叩き出したのだ。

　前回のオンリーウォッチ2019で、3100万スイスフラン（当時のレートで約34億円）という記録的な結果を残した「グランドマスター・チャイム Ref.6300A」には及ばずとも、今回の結果が驚異的であることは間違いない。日差±1秒の精度を誇る新型ムーブメントを搭載し、永久カレンダーや週表示、ムーンフェイズを備えたコンプリケーションクロックである。

LOT22／F.P.ジュルヌ「FFC ブルー」

　パテック フィリップと並んで注目を集めたのが、かの有名なフランソワ・ポール・ジュルヌが作り上げた「FFC ブルー」だ。落札価格は450万スイスフラン（約5億6764万円）で、F.P.ジュルヌのモデルでこれまでにない結果を記録した。

　ダイアル側の中心に青い手を配した特徴的な外観は、映画監督として名を馳せるフランシス・フォード・コッポラのアイデアによって生み出され、5本の指を出すパターンで“時”を、ダイアルを周回する三角形の印で分を表示する。

LOT6／オーデマ ピゲ「ロイヤル オーク 15202“ジャンボ”エクストラシン オンリーウォッチ」

　チタンとバルク金属ガラスを組み合わせた、独特な質感を持つ外装が目を引く本作は、310万スイスフラン（約3億8415万円）で落札された。落札予想価格の10倍近くにも跳ね上がり、ロイヤル オークという世界的にファンが多い人気モデルのユニークピースであることも、落札者の闘志を燃やしたのだろう。

　また本作は、1972年のロイヤル オークで初採用されたムーブメントであるCal.2121が搭載される最後のRef.15202であり、次回作からは新型ムーブメントに置き換わるとされている。

LOT45／リシャール・ミル「RM-67-02 シャルル・ルクレーク プロトタイプ」

　人気と高騰が続くリシャール・ミルのユニークピースともなれば、かなりの高額でも納得してしまいそうだ。モナコ出身の若手レーシングドライバーであるシャルル・ルクレークとともに製作されたプロトタイプは、210万スイスフラン（約2億602万円）で落札された。

　ケースやムーブメントに配されたレッドやホワイトは、彼が所属するレーシングチームに合わせたカラーだ。設計は既存のRM 67-02と同じだが、独自の色合いがユニークピースであることを証明する。

LOT21／ヴティライネン×ドゥ・ベトゥーン「カインド オブ マジック」

　前衛的なスモールブランドのドゥ・ベトゥーンと、著名な時計師であるヴティライネンがタッグを組んで完成した本作は、両者を知る時計愛好家にとって夢のような作品ではないだろうか。結果130万スイスフラン（約1億6109万円）という驚異的な落札結果を生んだ。

　独自の反転ケースを採用しており、片面には機構を露出させたドゥ・ベトゥーンらしい顔を、もう片面はヴティライネンの作品だとひと目で分かる顔を配し、それぞれが持つ個性をうまく取り入れている点が見どころの1本だ。

LOT1／アクリヴィア「クロノメーター コンテンポラン Ⅱ」RRCCⅡ

　時計師のレジェップ・レジェピ氏が手掛けるスモールブランド、アクリヴィアの時計が記録的な結果を残した。レジェピ氏銘のクラシカルで独特な風合いを持つ文字盤が特徴の本作は、80万スイスフラン（約9903万円）で落札された。

　一見これまでのクロノメーター コンテンポランの色違いのようだが、本作は新開発のムーブメント、Cal.RRCCⅡを搭載している。脱進機周りのパーツを大きく改良しているため、スモールセコンドでありながらステップ運針を行うのだ。

LOT26／H.モーザー「ストリームライナー・シリンドリカルトゥールビヨン オンリーウォッチ」

75万スイスフラン（約9284万円）で落札された本作は、大きく膨らんだドーム風防が目を引く「ストリームライナー」の最新作。サファイアクリスタル製のインダイアルは6時位置で傾斜し、また12時位置のフライングトゥールビヨンには、円筒形のヒゲゼンマイが採用されている。

　漆黒のダイアルには、同ブランドの「ベンチャー コンセプト」にも使用された素材「ベンタブラック」が塗布されており、99.965%の光を吸収してしまう。

LOT50／チューダー「ブラックベイ GMT ワン」

　エイジング加工が施されたガンメタルカラーのパーツで身を包む、世界に1本しか存在しないブラックベイの落札価格は、65万スイスフラン（約8046万円）。再大落札予想価格の80倍以上という驚異的な高騰を見せ、今回のオンリーウォッチで最も価格の跳ね上がったロットとなった。

　ケースやブレスレットのみならず、搭載するムーブメントCal.MT5652-1Uの受けやローターにまで、同様の加工が施されている。しかしながらスペックは通常のブラックベイ GMTと同様で、200mの防水性能や、C.O.S.C.の認定も受けている。6時位置に配されたマスター クロノメーターの文字が、その証だ。

LOT38／MB&F「パンダ HM10 オンリーウォッチ」

「オロロジカル マシーン」と称される、独特な外観や機構を持つ作品を数多く手掛けるMB&F。2020年に発表された「ブルドッグ HM10」の一部デザインやカラーリングを変更し、パンダの姿にした本作は、62万スイスフラン（約7675万円）で落札された。

　大きなテンプをドーム状の風防の中心部に配し、そのダイナミックな動きは生き物を連想させる。ユニークで可愛らしい見た目をしているが、プライスはいたって凶暴である。

LOT53／ゼニス「デファイ ダブルトゥールビヨン フェリペ・パントン」

　ゼニスが現代アーティストのフェリペ・パントンとのコラボ作「デファイ 21 フェリペ・パントン」を発表したことは記憶に新しいが、本作は同様のコンセプトで、デファイ ダブルトゥールビヨンに独自のデザインを落とし込んだ。

　直径46mmのケースはサファイアクリスタル製で、オープンワーク施されたムーブメントとの相性も良く、鮮やかなレインボーカラーのパーツがより映える仕様である。

シャネル「J12 パラドックス Only 2」

　今回28万スイスフランで落札された特別なシャネルのJ12は、2020年に発表された「J12 パラドックス」がベースとなっている。ブラックとホワイトの高耐性セラミック製ケースをカットしたものを組み合わせており、色違いの2本がセットだ。

　ケースやブレスレットに艶のあるベースモデルに対し、本作はマットな質感である。またJ12の特徴のひとつであるベゼルにはアラビア数字やバーの表示がなく、バゲットカットの貴石を敷き詰めたようなカットが施され、細かな部分で特別感を味わえる2本だ。