パネライが新たにコラボレーションを果たしたのは、メルセデスのチューニングメーカーとして知られるブラバスだ。今回登場した新作は、真っ黒な外装に赤の差し色を加えた、なんともブラバスらしい外観を持つ。
海へ進出したブラバスとの初コラボレーション
ミリタリーの印象が強かったパネライも、最近は方向性を変えてきた。女性用の「ドゥエ」を皮切りに、エコを打ち出したり、イタリアンデザインを強調したりと、イメージの刷新に忙しい。
そんなパネライが新たにコラボレーションを組んだのは、なんとドイツのブラバスである。なぜメルセデスのチューナーと手を組むのかと思いきや、ブラバスは2017年に、プレジャーボートを製造するブラバスマリン社を設立していた。海を駆けるプレジャーボートメーカーとパネライのコラボは、なるほど納得だ。
マリンスポーツの分野に進出するパネライ。パートナーに選ばれたのは、2017年以降、プレジャーボートの世界に進出したブラバスである。コラボレーション第1作はスケルトンムーブメントを持つサブマーシブルだ。極めつけに高価な限定版「オプス」の名前を冠するあたりに、「ブラバス」の位置付けが見て取れる。偏光ガラス製のデイト表示、第2時間帯表示、午前/午後表示、パワーリザーブ表示とゼロリセットセコンドを持つ。自動巻き(Cal.P.4001/S)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。カーボテック(直径47mm)。300m防水。561万円(税込み)。
記念として発表されたのが「サブマーシブル S ブラバス オプス エディション」だ。ベースとなったのはサブマーシブル。しかし、ムーブメントにはおなじみのCal.P.900やCal.9010ではなく、マイクロローター自動巻きの4000系が採用された。理由は、薄さよりも、スケルトンにしやすいためだろう。
ローターをムーブメントの上ではなく、中に格納するマイクロローターは、スケルトンの“題材”としてはうってつけだ。もっとも、4000系のマイクロローター自動巻きは、パネライ自社製ムーブメントの常で、分厚い上(ムーブメント厚は7.36mmもある)、かなり頑強な骨格を持つ。スケルトンにしても問題ない、との判断だろう。
ブラバスと2020年から開発を進めていた、とパネライが説明するように、本作はかなりブラバス風の仕立てを持つ。ほぼ黒の外装に、差し色に赤を使うのはまさにブラバスのプレジャーボートに同じだ。また、文字盤の7時位置にはブラバスのロゴがあしらわれている。黒と赤という色を邪魔しないよう、日付表示は偏光ガラス製。視認性を損ねない程度に、存在感を消している。
もっともパネライは、このモデルを単なる「海で遊べるラグジュアリーウォッチ」にはしなかった。搭載するのは、マイクロローターの4000系の中でも複雑なP.40001をスケルトン化したもの。9時位置に備わる秒針はゼロリセット付きで、加えて第2時間帯と、午前/午後表示が備わる。
レースに使おうと思えば使えるし、国を超えたツーリングでも役立つし、悪天候のもとでも、今の時間を正確に知ることができる。また、緩急針を持たないフリースプラングテンプのため、ショックにも強いだろう。ケースはカーボテック製。耐食性が高く、極めて軽いため、ボートで使うにはうってつけだ。
なお、ブラバスのボート部門への進出は、決して付け焼き刃ではない。長年、ボートが趣味だったブラバスの創業家は、2014年に設立された、フィンランドのボートメーカー、アクソパーとコラボレーションを締結。17年からプレジャーボートの世界に進出を果たした。新興メーカーだが、高い品質と生産性、それと自在なカスタムができるアクソパーを選んだのは、ブラバスが「海」に対しても本気、ということだろう。
ブラバスマリンのボートはアクソパーの既存モデルを改良したものだが、エンジンを強化したのは、いかにもブラバスだ。ハイエンドの「ブラバス シャドウ 900XC クロスキャビン ブラック オプス」は、450馬力×2という出力で、最大55ノット(!)ものスピードを出せる。
近年パネライは、自社で所有するクラシックヨット「アイリーン」で、マリンスポーツのイメージを打ち出してきた。そこにモダンな「ブラバス オプス エディション」を加えることで、同社はその方向性をより強調しようとしている。これは、先日オンラインで行われたプレスカンファレンスで、両社SEOから聞いた話からも明らかだ。実物は未見だが、本作は納得のコラボレーションである。
サブマーシブル S ブラバス オプス エディションへの力の入れようを見れば、両社のコラボレーションは、今後うまくいくかもしれない。
ブラバスマリンのハイエンドモデル900の限定版が「ブラック オプス」だ。通常モデルとの違いは、ブラバスのシグネチャーカラーであるガンメタルと赤い内装の組み合わせ。スパイダー、サントップ、そして全天候型キャビンのクロスキャビンの3つがある。写真のモデルはクロスキャビン。ジョイスティックパイロットによりドッキングや操縦が容易である。エンジンの換装により、ベースとなったアクソパー「37 XC」に比べて、17~7ノット速くなっている。。マーキュリーマリン社製450R Verado XL 4.6リッターV8×2(450馬力×2)。最高速度55ノット以上。GRP(全長38フィート5インチ、全幅11フィート)。排水量4500キロ。燃料730リッター。限定37艘。43万8500ユーロ~。
Contact info: オフィチーネ パネライ Tel.0120-18-7110
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