ヴァシュロン・コンスタンタンは、1970年代に誕生したモデル「222“ジャンボ”」を現代にアレンジした新作「ヒストリーク 222」を発表した。直線と曲線が同居する美しいケースはブレスレットと一体になっており、そのスポーティーな外観は健在である。
オリジナルを見事に継ぐ、現代の「222」
1970年代のスポーティーシックを象徴するモデル、37mm径の「222“ジャンボ”」は伝説的タイムピースである。ベースがフラットなトノー型のモノグロック・ケースに溝付きのベゼルがあしらわれており、ストラップが一体化しているため、すっきりとした直線と曲線が同居する。堅牢性、機能性に加え、エレガントな雰囲気を備えた姿は、典型的なスポーツウォッチ然としていない。
自動巻き(Cal.2455/2)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。18KYG(直径37mm、厚さ7.95mm)。50m防水。ブティック限定販売。743万6000円(税込み)。
新たな「222」は、1977年に発表されたモデルの復刻版としてコレクションに加わる。222のさまざまなモデルの中から、伝説の復活を記念して選ばれたのはケース直径37mmで18Kイエローゴールド製のRef.44018だった。ヒストリークコレクションの精神を受け継ぎ、ブランドの豊かな美的感覚を文化遺産として現代的に再解釈した。
ヴァシュロン・コンスタンタンのCEO、ルイ・フェルラはこう語る。「この222はアイコンというステータスに加え、私たちのデザイナーやエンジニアの業績に素晴らしい讃辞を送る時計です。さらにメゾンに息づくアヴァンギャルドな精神を永続させる彼らの能力を示しています。」
ブランドの創業から222年を経て、今から45年前に記念モデルとしてスポーツウォッチを発表した。それ以前の数十年間は、スポーツウォッチは真にアクティブな人々のためにデザインされ、パイロットやダイバーといったプロフェッショナル向けの時計と、高級時計はドレスウォッチ、と二分されていた。
スポーツウォッチの製造技術とラグジュアリーを融合したモデルが登場したのは、クォーツ時計が登場し競争が激化した1970年代である。ヴァシュロン・コンスタンタンはこの222によって、機械式時計に対する新しいアプローチに貢献し、新しい発想を受け入れる道を切り開いた。スポーティーな要素を盛り込みながらも、エレガントな表情を保つこのモデルは、ブランドのデザインの進化に一石を投じるものだったといえる。
1975年に発表された「クロノメーター・ロワイヤル」Ref.42001は、特殊な形状のケースに丸みを帯びた8角形ベゼルを組み合わせた、ヴァシュロン・コンスタンタン初となるブレスレット一体型のモデルだった。この2年後に時計デザイナーであるヨルグ・イゼックが222をデザインした。「ヴァシュロン・コンスタンタンのクラシカルで洗練された世界観に合うように、エレガントでスポーティーでありながらバランスの取れた時計をデザインしたいと思いました」とヨルグ・イゼックは語る。
1977年に発表された222は、切り込みの入ったベゼルをフラットなケースの上に高く載せた機能的構造が採用されていた。ムーブメントをケースの表側から組み込む必要があるモノブロック構造のケースは、ねじ込み式のベゼルによって120mの防水性を備えていた。ケース厚は7mmと非常に薄く、搭載されていたムーブメントの厚さは3.05mmであった。
「ジャンボ」の愛称で親しまれた最初に発表された37mmモデルをはじめ、34mmと24mmのステンレススティール製モデル、イエローゴールドやコンビモデル、ポリッシュ仕上げやジェムセット仕上げのモデルはいずれも、ケース右下の隅、5時位置に象徴的なマルタ十字があしらわれていた。222は1985年まで限定生産され、時計製造の歴史において最初の“スポーティーシック”な時計として知られている。
ケースにはオリジナルと同じく、5時位置にマルタ十字が配され、サファイアクリスタルのケースバックからはこのモデルのために新しくデザインされたローターを装備する自社製ムーブメント、キャリバー2455/2を鑑賞することができる。
本作ではどこが変更されたのか。まず、オリジナルモデルの振動数が2.75Hzに対し、本作では振動数が4Hz(=28800振動/時)となり、精度が向上している。このムーブメントにはオリジナルの222ロゴが刻まれたローターが装備されている。
ケースバックはトランスパレント仕様となり、搭載するムーブメントを鑑賞できるようになった。細部まで施された仕上げは質感が高まり、バーティカルサテンブラッシュ仕上げのリュウズとブレスレット、サーキュラーサテン仕上げのベゼル、ポリッシュ仕上げのインデックス、手作業で面取りした輪列、コート・ド・ジュネーブの装飾を施したブリッジ、ペルラージュ模様を施した地板など、鑑賞したいポイントが多く盛り込まれている。
ダイアルにはヴィンテージのフォントによる“AUTOMATIC”の文字が刻印され、日付表示の窓は視認性を高めるためにダイアルの外縁から大幅にオフセットされている。針とインデックスはスーパールミノバのコーティングが施され、視認性を改善している。また、以前は2枚ブレードだったクラスプを3枚ブレードに変更し、これまで見えていたリンクの連結ピンを隠し、手首への装着感を向上させた。
本年のヴァシュロン・コンスタンタンが掲げるテーマである“The Anatomy of Beauty”(美への構造)は、見えない部分や細部まで美しさを追求するこだわり、作業の完成度を表現している。組み上がってから見えなくなる部分であっても、細やかな配慮が行き渡っている。新しい222は、あらゆる特徴を尊重した上で継承し、現代的に生まれ変わっている。
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