オンリー・ファンデーションが主催するオークションは数々のウォッチブランドからユニークモデルが集まる時計界におけるスペシャルイベントだ。今年の11月にジュネーブのパレクスポで開催される本イベントに、ブレゲ・マニュファクチュールはワンクリックでタイムゾーンを変更できる特許を取得した「マリーン オーラ・ムンディ オンリーウォッチ2023」を出品する。
ローズゴールドケースに収められた革新的なマルチタイムゾーン機構
自動巻き(Cal.77F1)。40石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55時間。18KRGケース(直径43.9mm)。10気圧防水。
ブレゲ「マリーン オーラ・ムンディ オンリーウォッチ2023」は2022年3月に発表されたユニークピースである。プッシュボタンとリュウズ操作による仕組みでワンクリックでタイムゾーンを変更する機構「インスタント・ジャンプ・タイムゾーン」を持つ。
使用方法としては、まずプッシュボタンで最初の都市を表示して、リュウズで時刻と日付を設定する。あとは第2の都市を午前と午後に注意しながら調整するだけである。すると、カムやハンマー、差動装置からなる巧みなシステムにより時刻と日付を計算する。セレクトした都市のホームタイムやローカルタイムを計算する必要はなく、相対的な関係となっているため、時計の正確な動作を妨げることなく、地球の隅から隅までをストレスなく移動することができる。
ダイアルはさまざまな素材やプレートのレイヤーによって、素晴らしい眺めを表現した。まず、基盤となるゴールド製のプレートには、大陸の岸に打ち寄せる波模様が手作業のギョーシェ彫りで施され、ブルーで彩られたサンバースト仕上げのダイアル基部も同じく波模様のモチーフで装飾されている。
さらに重なるサファイアクリスタルのプレートは蛍光塗料が塗布されたゴールド製インデックスとマリンブルーのエナメルをまとう大陸の彫刻を併せ持つ。本作では多数のローズゴールドカラーのドットが地上で輝き、地球は決して眠らないことを表現している。また、ダイアル上に存在する多くの要素を支える外周のフランジ部分が全体に立体感を与えている点にも着目したい。各パーツが数週間を要する処理によって仕上げられ、存在感を放っている。
各所に見られるラグジュアリーな要素
ブレゲにとって、ラグジュアリーはディティールに宿るものである。この考えから夜間でも時刻が読み取れるように、時針や分針、インデックスに蛍光塗料が施された。これらの赤い蛍光塗料が塗布されたブレゲ針はオンリーウォッチ 2023のテーマカラーを彷彿とさせる。
同様に、トラペーズ型インデックスや、基準都市を示す6時位置の錨のモチーフにもあしらわれている。オンリー・ファンデーションに敬意を表して、パリの代わりにモナコ公国が赤色で配されているところも本作の特徴のうちのひとつである。
4時位置のサン/ ムーン表示のモチーフは、手作業によるハンマー打ちで加工され、非常にリアルに仕上げられている。ローズゴールドの明るい太陽に対し、ロジウムメッキの月はグレーの色調でミステリアスな表情を浮かべる。
12時位置の窓で表示される日付には、ダイアルの日付窓の下にレトログラード針が巧妙に組み込まれ、繊細な丸みを帯びたU字の先端が日付を囲んで示す。ブルイヤージュ(青焼き処理)と呼ばれる繊細な仕上げは、時計製造では古くからの装飾ではあるが、改良が重ねられ、マットでありながら光沢感を出す仕上げとなっている。そのため、控えめながらも視認性が高められている。
独創的なムーブメント
直径43.9mmのローズゴールド製ケースに搭載されるムーブメントはCal.77F1である。この機械式自動巻ムーブメントには、腐食や摩耗への耐性に優れる性質を持つシリコン素材で作られた脱進機が装備されている。シリコン素材は磁場の影響を受けない利点もある。Cal.77F1の独自の特徴は、特許取得のモジュールにある。
デュアルタイムゾーン機構や第2タイムゾーン表示をはじめ、プログラムと再プログラムが可能な機械的メモリーの歯車、指針式デイ/ ナイト表示などが含まれる。この傑出した機構は、コート・ド・ジュネーブやギョーシェ彫り、スネイル模様の仕上げでエレガントに装飾され、その一部をサファイアクリスタル製ケースバックから眺めることができる。
船の舵をモチーフにした独特なフォルムのゴールド製ローターにはブラックの仕上げが施され、そして「Pièce Unique 」(ユニークピース)および、「Only Watch 2023」のエングレービングがそれぞれ12時と6時位置に刻まれている。
エレガントでスポーティなブレゲ「マリーン」コレクション
時計の歴史を200年早めたといわれるブレゲの創設者アブラアン-ルイ・ブレゲは傑出した科学者や技術者としても認められていた。1814年、ルイ18世により経度委員会のメンバーに選ばれ、フランス海軍と運命を共にすることとなった。この委員会の任務のひとつは、海上での経度決定に関する天文学的な問題を解決することであり、約20名の学者、専門家で構成されていた。
この委員会の一員としてブレゲの時計は海上での経度計算の基準となり、王室からの信頼を重ねていったのである。翌年1815年10月27日、勅令によりフランス海軍省御用達時計師の称号を授けられ、その後フランス科学アカデミーへの入会も果たすという時計師にとっては最高の栄誉を得ている。
本作が属する「マリーン」コレクションは、このフランス海軍省御用達時計師に任命されたことに由来する。海軍のクロノメーターを手掛けるという名誉とフランス海軍との深い関係は現在でもブレゲの中で重要な事項として位置付けられており、1820年当時のフランス海軍からのマリンクロノメーター発注書も保管されている。
そんな王室とフランス海軍に縁のあるマリーンコレクションであるからこそエレガンスとスポーティなテイストを併せ持っていることは想像に容易い。
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