腕時計のサイズで、ゴルフのスコアをカウントできるゴルフウォッチ。1980年代には存在していたが、それらすべては実用には向かないものだった。そしてこの課題に挑んだのが、2007年創業のヤーマン&ストゥービだ。カウンター操作を簡単にするだけでなく、耐衝撃性を高めることで、同社はゴルフウォッチという新しいジャンルを時計業界に定着させた。
Photographs by Katsuhiko Kobayashi
広田雅将(クロノス日本版):文
Text by Masayuki Hirota(Chronos Japan)
ヤーマン&ストゥービ TP11 & RCB1
今やさまざまなメーカーが手掛けるようになったゴルフウォッチ。このジャンルを開拓したのは、ヤーマン&ストゥービである。起業家であるウルス・ヤーマンは、ゴルフのプレー中に、ヤードをメートルに変換したり、ストローク数を数えたりすることが、集中力を削ぐと感じていた。そんな彼は、たまたま時計師のパスカル・ストゥービと出会い、ゴルフのプレー中に使える、ゴルフ専用時計の開発に取り組んだ。
ヤーマン&ストゥービならではのゴルフ・カウンターを搭載したモデル。ケースサイドのボタンを使うことで、18ホールまでのスコアを計測できる。可動部にセラミックベアリングを使うことで、耐久性も高い。自動巻き。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS(直径44mm)。50m防水。121万円(税込み)。
(右)RCB1
複雑機構を省いたベーシックモデル。しかし、スイング時のインパクトを吸収するショック・ガードを搭載する。2016年のオリンピック開催国だったブラジルの色を文字盤にあしらう。自動巻き。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS(直径44mm、厚さ11.6mm)。100m防水。57万2000円(税込み)。
完成したのが、ホールごとのストローク、総ストローク、そしてプレーしたホール数をカウントできる、全く新しい機械式のゴルフウォッチだった。確かに機能面だけを見れば、こういった類のゴルフウォッチはすでに存在していた。しかし、2007年に発表されたヤーマン&ストゥービのゴルフウォッチは、既存のものとは決定的に異なっていたのだ。
違いはふたつ。ひとつは簡単に操作できること、そしてショットのインパクトにも耐えられるよう、高い耐衝撃性を持つことだった。時計に伝わるショックに関する対策のひとつが、6つのラバーでムーブメントに伝わる衝撃を緩和するショック・ガードだ。これはかつてのIWCが「ヨットクラブ」や「インヂュニア」で採用したシステムに似ている。しかし、インパクトの強さを考慮して、ラバーの容積がそれらと比べて、かなり大きくされた。また、強いショックで表示がずれないよう、ゴルフカウンターを動かすレバー類なども太く大きくされた。
後に「ゴルフ発祥の地」であるセント・アンドリュース・リンクスの公式時計にも選ばれたヤーマン&ストゥービ。それ以前のゴルフウォッチと異なり、実際にプレー中でも使える時計であることを考えれば当然だろう。しかし、普通の機械式時計では考えられないほどの高い耐衝撃性能は、ゴルファーではない人にも大きな福音となるはずだ。
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