そして、自社製の自動巻きムーブメント、キャリバー3135は、ベースキャリバーとしてたいていのロレックスのモデルに使用され、ダイバーウォッチでは日付表示機構付きで搭載されている。しかしムーブメントは、いつものことながらスクリューバックのケースの内部に潜んでいて、姿は見えない。対面できるのは時計師のみにもかかわらず、装飾が施されている。部分的にくり抜かれたローターと自動巻き機構のブリッジにはサンレイ装飾が入れられ、ペルラージュで飾られたブリッジも目に入る。細やかなストライプが付けられたブリッジはエッジが面取りされ、ネジ頭は鏡面に磨かれている。自動巻き機構に組み込まれた磨耗の少ないアルミニウム製の歯車のアルマイト加工の赤い色と、パラクロム・ヘアスプリングの青い色は目にも楽しい。酸化被膜を発生させることで青く発色するこのヘアスプリングには、磁界の影響をまったく受けないニオブとジルコニウムから成る合金が使われている。
このキャリバーは自動巻きとして最高のもののひとつとして挙げられよう。何よりも頑丈で耐久性があり、考え抜かれた構造で非常に精密な調整ができる。テンプ受けはよくある片持ちではなく、しっかりした両持ち。これにより、テンワは受けの両端にあるふたつのネジで位置決めされる。ブレゲエンドカーブを持つヘアスプリングを均等な動きに整えるのは、テンワの内側にセットされたマイクロステラスクリューだ。ロレックスの腕時計が精密に調整可能なのは、このシステムのおかげである。
着用テストを行うと、1週間に2秒の進みという、新記録に迫るようなデータが出た。しかし、電動式歩度測定機クロノスコープX1に掛けると、結果は必ずしもパーフェクトとは言えないものであった。最大姿勢差が12秒というのは、いささか開き過ぎの感がある。ところが、全姿勢の平均日差はプラス1秒と出て、これも最高と言える域に達した。