オイスターモデルのご多分に洩れず、デイトジャストⅡもクローズドバックだが、それでもムーブメントはしっかりと装飾されている。ローターとローターブリッジ上面にはサンブラッシュ模様、ブリッジの上にはペルラージュ模様が施され、エッジは面取りとポリッシュで丁寧に仕上げられている。歯車にはサンブラッシュ模様、スティール製のパーツには線彫り模様を見いだすことができ、ネジ頭のポリッシュ仕上げも完璧である。さらに、ネジや石のための穴にまで面取りとポリッシュ仕上げが施されている。赤いアルマイト処理が施されたリバーサーと一部スケルトナイズされたローターは、ロレックスならではの特徴である。ローターは一般的なボールベアリングではなく、ルビーの軸受けで支持されており、ゴールドカラーのエングレービングは、このムーブメントが5つの姿勢とさまざまな温度環境で微調整されていることを示す。
ここまで来ると、歩度測定機でのテスト結果に対する期待がいよいよ高まってくるだろう。ロレックスが表示した通り、クロノメーター規格の規定に基づいて5つの姿勢で微調整していることは、歩度測定機の上でも確認することができた。だが、第6の姿勢、つまり〝3時右〟の姿勢では、他の姿勢における数値との差がかなり顕著だった。着用時に時計がこの状態になることは稀だが、クロノスドイツ版編集部のテストでは〝3時右〟の姿勢もテスト対象となるため、最大姿勢差は6秒という結果になってしまった。平均日差はプラス1秒/日と、非常に優秀である。着用時にもデイトジャストⅡはプラス2・5秒/日という精度で時を刻み、ほぼ完璧な結果を見せてくれた。
価格はどうだろうか。ロレックスのデイトジャストⅡのステンレススティールモデルは65万1000円と、競合他社の同スペックのモデルと同じ水準である。36㎜のデイトジャストならデイトジャストⅡよりも安価で手に入れられるが、その代わり、自社製のパラフレックス ショック・アブソーバはあきらめなければならない。デイトジャストⅡが備える抜群のクォリティと、すべての構成部品の入念な加工を鑑みれば、適正な価格設定と言えるだろう。また、装着性、視認性、操作性、ムーブメントの設計、精度の観点からも、この時計は限りなく完璧に近い。十分にサイズアップされたケースによって、デイトジャストはついに体格の良い多くのヨーロッパ人時計愛好家にとって魅力的なモデルとして返り咲いた。
デイト表示と防水性を備えた初の自動巻き腕時計が発表されてからほぼ70年近くを経た現在、ロレックスはデイトジャストⅡによって、完璧な時計作りに一層の磨きをかけることに成功したのである。