【86点】ブライトリング/トランスオーシャン・クロノグラフ・ユニタイム

2013.04.03

C.O.S.C.認定クロノメーターのマニュファクチュールキャリバー05。ムーブメントを取り巻く幅広のスペーサーの文字盤側には24都市の名称を記載したタイムゾーンリングと24時間表示リングが控える。

シリーズ初代は50年代に登場

ブライトリングのトランスオーシャン・ラインは、初代モデルの発売が1958年。同社の50年代と60年代の気品あるデザイン要素が今日によみがえったモデルが展開されている。その当時にもユニタイムという名の自動巻きがあった。これは日付表示付きワールドタイマーだったが、パイロットや船長などの長距離移動の頻度が高いユーザーを想定していた。今回取り上げるトランスオーシャン・クロノグラフ・ユニタイムも、往年のモデルと同じく文字盤に世界地図が描かれている。積算計もそれにならって、3時、6時、9時の3箇所のスタイル。3時位置の30分積算計に入れられた長い目盛りも、当時のモデルから引き継がれた。3分ごとに課金される通話の時には、この目盛りが役に立っていたのだ。さらに、キノコ型のプッシュボタンやドーム型風防、文字盤上の昔のロゴも、同じく歴史的モデルを彷彿とさせる。

また、明るい茶色のカーフストラップも、麗しきヴィンテージデザインを引き立てている。しかし、ケースサイズは堂々直径46mm。唯一、これが現在のモデルだと判断できる要素だ。もちろん、全体のどこを見ても、仕上げ加工のクォリティが群を抜いているのは言うまでもない。針に始まり、アプライドインデックスや慎重に鏡面研磨されたケース、1点の傷もなく仕上がった裁ち切りのストラップや完全にフライスされた尾錠に至るまで、すべての箇所にハイレベルな仕事がなされている。惜しむらくは、ロゴマークがレリーフで入った美しい尾錠の裏面だけは、明らかに他の箇所との釣り合いが感じられないことだ。

しかし、この尾錠も我々編集部としてはふたつ折りのフォールディングバックルよりやはり断然ヴィンテージデザインらしいと感じている。メタル部品が小さいため、フォールディングバックルのように手首の骨に当たる不快感は皆無。ソフトな肌触りの裏打ちカーフが当てられているストラップも、着用感のよさを担っている。もっとも、このモデルは手首が細い場合には最高の着け心地とは言えず、次第に位置が滑り動いて、落ち着きを感じられないだろう。

オールマイティーではないと思わせる点には視認性も挙げられる。ステンレススティールの針は、銀色の文字盤の上では十分に浮き上がって見えず、24時間リングの数字や都市名も力技でスペースに詰め込んだように、かなり小さく印刷されているため判読するにはやや厳しい。それに対して、日付表示は容易に読み取ることができる。そして、周囲が暗くなって来ると、時・分針とアワーインデックス、さらに12時位置には2点ドットで置かれた夜光塗料がほどよくガイドしてくれるのはうれしいところだ。