【80点】ゼニス / パイロット ビッグデイト スペシャル

2012.09.03

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これは、カーフストラップの代わりにステンレススティール製のミラネーゼブレスレットを装備したモデル。無骨な印象のカーフストラップモデルに比べ、すっきりしたイメージだ。

各種表面装飾でローターを象徴的に演出

さて、時計を裏返してみよう。裏蓋にはムーブメントと同じサイズのサファイアクリスタルが嵌められ、4カ所でビス留めされている。今回、協力を得たロイトリンゲンの時計宝飾店デッペリヒからは、この4個のビスもパッキンのOリングも、十分な防水性を発揮できるとお墨付きが与えられた。ビスで留め付ける箇所は、ラグにぴったり添うようにフライスされていて、これによって確実にケースと一体化させることができるのだ。

トランスパレントバックを通して見られるエル・プリメロの輪列は、メカファンを魅了するものだ。このモデルではキャリバー4010の名も持つエル・プリメロは、コラムホイールを採用した水平クラッチ式クロノグラフである。緩急調整は、確実に作動させられる偏心ネジ付きの長い緩急針で行う。ムーブメント全体に、さまざまな表面装飾がたっぷりと施されているのも見所だ。コート・ド・ジュネーブやペルラージュ、溝を黒く着色して際立たせたエングレービング、青いネジは、レバー、緩急針、香箱のヘアラインと相まって、目にも愉しい。その中でも、ローターは数種類の装飾の組み合わせになっている。自動巻きのクロノグラフという、このムーブメントの原点とも言える特徴を象徴するローターに自ずとスポットライトが当たるようにしているところにも、ゼニスの力の入れようが伝わって来る。惜しむらくは、全パーツのエッジを面取りし、鏡面に磨き上げる加工にしていないところか。

しかし、外観よりも目を引かれたのは精度であった。歩度測定機にかけたところ、日差は平均してわずか3・2秒の進みを見せた。最大姿勢差も4秒と極めて少ない。その安定性は着用テストでも期待を裏切らず、日差+3・5秒という結果となった。クロノグラフ作動時も平常時とほぼ同じようなデータが出ている。また、振り角落ちもわずかな範囲に留まった。これは設計からして必ずしも当たり前というわけではなく、各パーツが十分に機能を果たせるだけの高水準の加工が施されていることにほかならない。