要改良点はあれど個性が凌駕
さて、腕時計を評価するならば、やはり時計本体だけではなく、全体像と各ディテールを見てこそだ。このモデルで目立つのは、パイロットウォッチ華やかなりし往時の雰囲気が醸し出されるストラップである。白いステッチが入った焦げ茶のカーフストラップは、あたかも長年使い込まれたような風合いだ。手縫いでステッチが入れてあり、汗ばむ肌に接する裏面はラバー仕上げになっているので、ストラップの持ちはカーフのみのものとは明らかに違うだろう。表面は非常になめらか。厚みはあるが、頑丈なバネ棒でケースにしっかりと取り付けられている。
だが、裁ち切られた縁の側面は、ラッカーの塗りが浅いのが気になるところだ。テストモデルでは、テスト開始の数日後にはラッカーが剥がれ落ち出した。これに関しては、かなり以前のゼニスにも見受けられたため、同社の弱点であるように思われる。
一方、満点とは言えないものの手間の掛かったストラップの仕上がりに比べて、尾錠のバックルが平易なのは否めない。この部分については工程を簡略化したのは目に明らかだ。ツク棒についても大差はない。本来、パイロットウォッチには反射が御法度というセオリーから言えば、ここはやはりサテン仕上げかサンドブラスト仕上げなどの、全面つや消しが似合うのだが。
このように、細かな点では完璧とまでは言えないものの、着け心地は上々である。ストラップはがっしりしていても、しなやかな肌当たりで、尾錠もフラットに抑えられ、収まりがいい。
総括すると、パイロット ビッグデイト スペシャルはお薦めの一品である。細かい弱点やら、ぜひとも改善してほしいところはややあれど、わくわくさせるディテールが満載なのを目の当たりにするとたまらない。加えて、このコストパフォーマンス。マニュファクチュールムーブメント搭載のクロノグラフで、大型日付表示のある他ブランドのモデルの価格と比べると、気分まで軽やかに上昇しそうだ。
技術仕様
ゼニス/パイロット ビッグデイト スペシャル
製造者: | ゼニス |
Ref.: | 03.2410.4010/21.C722 |
機能: | 時、分、日付表示 |
ムーブメント: | キャリバー エル・プリメロ4010、自動巻き、3万6000振動/時、31石、耐震軸受け(キフ使用)、調整用偏心ネジ付き緩急針、グリュシデュール製テンワ、パワーリザーブ約50時間、直径30mm、厚さ7.65mm |
ケース: | SS製、ボックス型サファイアクリスタル風防(両面無反射コーティング)、ねじ込み式トランスパレントバック(サファイアクリスタル使用、裏蓋は4カ所をビス留め)、5気圧防水 |
ストラップとバックル: | カーフストラップ(手縫い)、SS製尾錠 |
サイズ: | 直径42mm、厚さ13.8mm、重量91g |
価格: | 61万9500円 |
*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。
精度安定試験 (T24の日差 秒/日、振り角)
平常時 | / クロノグラフ作動時 | |
文字盤上 | +5 | +5 |
文字盤下 | +2 | +2 |
3時上 | +2 | +1 |
3時下 | +4 | +6 |
3時左 | +5 | +3 |
3時右 | +1 | +3 |
最大姿勢差: | 4 | 5 |
平均日差: | +3.2 | +2.3 |
平均振り角: | ||
水平姿勢 | 283° | 269° |
垂直姿勢 | 264° | 245° |
評価
ストラップとバックル(最大10pt.) | 7pt. |
操作性(5pt.) | 4pt. |
ケース(10pt.) | 8pt. |
デザイン(15pt.) | 11pt. |
視認性(5pt.) | 3pt. |
装着性(10pt.) | 9pt. |
ムーブメント(20pt.) | 16pt. |
精度安定性(10pt.) | 9pt. |
コストパフォーマンス(15pt.) | 13pt. |
合計 | 80pt. |