秘められた装飾
ムーブメントの部品は基本的にすべて、裏面まで装飾されている。ローターも例外ではなく、裏側にもペルラージュ模様が施されている。また、テン真だけでなく、ガンギ車の軸にも両側に耐震軸受け(キフ)が装備されている点にも注目だ。
微調整は、テンワに取り付けられた6個のバランスウェイトで行われる。そのため、ヒゲゼンマイは自由に抵抗も少なく振動することができる。テンプの振動数は、1時間に1万9800振動という珍しい設定だ。
ローターの下には、自動巻き機構とガンギ車のためのブリッジが取り付けられており、ローターの伝え車には、セラミックス製のボールベアリングが装備されている。ローターの巻き上げ方向の切り換えは、2個の歯車を備えたスイッチングロッカーで行われ、回転方向に応じて、いずれかの歯車が噛み合うようになっている。
見た限りでは、このムーブメントは極めてクリーンに組み立てられており、軸受け部にも十分注油されている。ただ、日付が午前零時の1分半前には切り換わってしまうのが残念だ。ここは、もう少し厳密に調整してほしかったところである。
これは、微調整にも当てはまる。精度の調整はやや甘く、とりわけ、最大姿勢差にかなりの開きが観察された。ムーブメントの厚さを抑えた構造が理由となっている部分もあるとは言え、すべての責任をそこに転嫁することはできないだろう。このモデルには秒針が装備されていないので、ストップセコンド機能がないことはそれほど大きな問題ではない。だが、日付早送り機能が装備されていないのは、極めて遺憾である。日付を合わせるのに、時針を20時30分と零時30分の間で、何度も前後に動かさなければならないのだ。そのため、例えば日付を20日分、進めたい場合などには、かなりイライラさせられる。リュウズが六角形という変わったフォルムであるにもかかわらず、快適に操作できるだけに、日付合わせの手間は以前も批判の対象となっていた。