シンプルさは長所か短所か
ところで、ヴィンテージ 1945 XXLの優れた装着感について語る時、忘れてはならないのは、あっさりした作りのフォールディングバックルだ。ごつさがなくスマートには見えるが、半面、着用した際に極めて頑丈だと実感することもない。押しボタンによるワンタッチの着脱方式ではなく、押し込み式である。“GP"のロゴはバックルの表側にレーザーで表面的に入れてあるのみ。今回のテストにご協力いただいたウルムの時計宝飾店ケルナーのマイスター時計師ライナー・メラートは、このモデルのケースや文字盤、ムーブメントが非常に良い出来なだけに、バックルがそれに見合う作りになっていないと言う。
整いはいいものの、地味な感じがするのはストラップも同じだ。サイドは断ち切りラッカー塗りの仕様で、表革と裏革がぴったり平たく縫い合わせてある。ミシン縫いのためか針穴がぷつぷつとはっきりしていて、アリゲーターの優美な斑には不釣り合いな気もしないでもない。
ここで視線をストラップからリュウズに移してみよう。堂々たるケースの体躯に比べて華奢にさえ感じるリュウズは、爪で簡単に引き出せる。針合わせにも問題はなく、ストップセコンド機能が備わっているので、時報に正確に合わせることが可能だ。もっとも、針についてはひとつだけ惜しいことがある。分針は毎時間、ごくわずかな間しかインデックスの外側のトラックに届かない。詳しく言うと、11分から19分までと41分から49分までは鉄道時計のように何時何分とはっきり分かるが、それ以外の時は、分針の先端が目盛りから離れたところにあるので、慎重に時刻を読み取る必要がある。
つまり、時刻を知りたい時だけでなく、針合わせの時点で感じるのは、ヴィンテージ 1945 XXLは実直な計測機という堅物の存在とは違うということだ。それは文字盤や針、インデックスが同色でまとめられ、コントラストが弱いことからも理解できる。
しかし、この過去の歴史にインスパイアされたクラシックでエレガントなたたずまいにひとたび惹かれてしまうと、視認性などさして騒ぐほどのことではない(ように思える)。単に視認性を上げようとするならば、文字盤の構成を変えれば済む。例えば、コントラストを意識した色遣いにしたり、夜光塗料を針に載せたりすれば簡単だ。だが、それではこのモデルの大胆な取り合わせながらも調和の取れた印象が損なわれてしまうだろう。2次元と3次元を行き来しつつ、優雅に時と向き合うことを愉しむ。これこそ、ヴィンテージ 1945 XXLの自己主張であり、醍醐味なのだ。それは人生において、質の良いものを日常の中で味わうという充足感にほかならない。
技術仕様
ジラール・ペルゴ/ヴィンテージ 1945 XXL
製造者: | ジラール・ペルゴ |
Ref.: | 25880-11-121-BB6A |
機能: | 時、分、秒(スモールセコンド、ストップセコンド仕様) |
ムーブメント: | 自社製キャリバーGP3300、自動巻き、2万8800振動/時、32石、耐震軸受け(キフ使用)、グリュシデュール製テンワ、パワーリザーブ約48時間、直径26.2mm、厚さ3.2mm |
ケース: | SS製、曲面サファイアクリスタル風防(内側のみ無反射コーティング)、トランスパレントバック(サファイアクリスタル使用、裏蓋は4カ所をビス留め)、3気圧防水 |
ストラップとバックル: | アリゲーターストラップ、SS製フォールディングバックル |
サイズ: | 縦36mm×横35mm、厚さ10.8mm、重量77g |
バリエーション: | |
価格: | 94万5000円 |
*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。
精度安定試験 (T24の日差 秒/日、振り角)
文字盤上 | +6 | |
文字盤下 | +8 | |
3時上 | -2 | |
3時下 | +3 | |
3時左 | -1 | |
3時右 | +3 | |
最大姿勢差: | 10 | |
平均日差: | +2.8 | |
平均振り角: | ||
水平姿勢 | 285° | |
垂直姿勢 | 257° |
評価
ストラップとバックル(最大10pt.) | 7pt. |
操作性(5pt.) | 4pt. |
ケース(10pt.) | 9pt. |
デザイン(15pt.) | 15pt. |
視認性(5pt.) | 3pt. |
装着性(10pt.) | 9pt. |
ムーブメント(20pt.) | 15pt. |
精度安定性(10pt.) | 7pt. |
コストパフォーマンス(15pt.) | 11pt. |
合計 | 80pt. |